解放

かひけつ

文字の大きさ
上 下
85 / 97
第3章 ~よう

閑話~あのヒ、あのトキ、あのバショで~②

しおりを挟む
《それは人々の生活に多大なる安心感や発明を施し、発明の起源である『灯』とはかけ離れていて、真逆のイメージ。破壊の権化。終末世界を彷彿させるほど残忍で、禍々しい熱や光で地球を侵食されるような威圧感を放っていた。

 <動かなきゃ>

と反射的に思った。でも、場違いさを拭い切れずに、何もできなかった。いや、しなくてよかった。手を貸さなくてもリン達の無事は保証されていた。自分がここで恩着せがましく力を貸すのは、無粋だと頭で理解できるから動けずに見守ることに徹していた。

 <これでよかったのか…??!>

私がずっと苦しめられてきた戒めの言葉であり、何度も感じてきた胃の味を思い出してしまう……。

 <…まずい…>

振り返りたくないという思いとは裏腹に、次々と場面が展開される。グルバンが爆発を抑えていた時だ…。

 <あの時…手を貸すべきだったのだろうか><それは違う。手を貸しても意味がないとさっき言ったじゃないか>

お次は、グルバンの目を覚まさせこの世とお別れした時だ。

 <ここ…か><……否定できないな。アピスの存在がないとはいえ、無責任に放り出し過ぎたし、警戒力も欠如していた。アレはちゃんとやらかしていた……>

龍成に関わる事象が次々に想起され始める……。

 <…………>

 「いや、違う」

ここを否定するのは絶対に間違っている。龍成本人に応援してもらったんだ。不必要な心配に惑わされるのは無用だ。当たり前だ。熱くなるのが分かる。

 <前を向けと言われたんだ。失敗は絶対的な死ではないんだ。『あの時』じゃない。『これから』なんだ。そして、これは龍成のおかげだけど、決意は龍成のものじゃない!>

こう鼓舞するのは、龍成たちに相談しようか散々迷ったという経緯があった。

 <これは、私の勝手。意志なんだ!!>

仕方のない結末で終わらせない。私は私のできることをやろう…。

 <…涼しい>

風が吹く。朝日が昇る。爽やかなこの風景は、私を歓迎してるように思えた。燃えるような闘志を、この場所が受け入れてくれるようで、決意はより強くなった気がした》
しおりを挟む

処理中です...