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第3章 ~よう
■⑱
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《それから私たちはいっぱい…お話をした。過去のこと、今のこと。そして、今からこれからの話をするのだとお互いが感づいていた。涙の跡はまだ消えないけど、それを上書きするようにめいっぱい笑わせてもらった。
<だから、もぅ……>
「…リン…私ね」
「そんな言い方しないでよ…」
「もう満足だよ」
私は今、心の底から笑っている。これ以上にない幸せな時間を送った。
「後悔なんてないよ」
「もっと…欲張っていいんだよ…!」
「そんなことない。私は欲張りで運が良かったの。最後に笑えたから、過程なんていいやってさ」
「…………」
私は未来を暗く考えていなかった。だって、大してこれまでと変わらないのだから。
「…だから。そんなに泣かないでよ」
「……泣いてない」
リンは確かに泣いていなかった。でも、泣きそうな顔をしているように見えた。あの、リンが顔を俯かせて暗いトーンや口調が荒くなったりしてる気がするからだろうか。
<じゃあ、もう>
「お別れだね…」
〔すまない。邪魔する〕
「…なに?」
泣きたいのを誤魔化すように気持ち語気の強いリンの声色にシンはたじろぐ。
〔ほんと、ごめん!でも、急を要するんだ〕
「…怒ってない」
〔…とりあえず、現状を話す。アピスの伏兵が現れた。時間稼ぎだけならまだよかった。アピスが自爆した。時間をずらしてるが、5分もせずに…くる〕
「ヤバそうね…」
大まかな状況は分かった。
「…ここに残るのは…?」
ダメなの?と顔で訴えてくる。シンから、こちらに任せるという視線を送られる。答えは決まっていた。
「ダメに決まってるでしょ?」
<ここはかっこよく別れたかった……ちょっと違うか>
リンを信じてることを、リンが誰よりも知ってるから言う必要もない。当のリンが微動だにしないのは気がかりだけど……。
〔…ケイトたちが防護膜とかをちゃんとしてくれてるから安心していぃ…〕
私がその辺りのことを聞くことを先読みしてシンが教えてくれる。
「…ごめん…」
リンが…申し訳なさそうに謝る。こんなこと初めてで、どう返していいか瞬間的に困る。
「そんなことないよ。リンのおかげで私は救われたんだよ」
「……」
本当に思っているから、言葉がすらすらと紡がれていく。
「心も救われたし、お別れもちゃんとできた。リンは、私の救世主なんだから……。そんな顔しないでよ」
「…分かった。でも、ごめん」
リンは覚悟を決めた眼をしていた。のはずなのに、本当に少しだけ瞳孔が揺らめいていた。気が付けば抱き締めていた。
「じゃあ」
〔少しだけ待ってくれ。ケイトから伝言があるんだ。これは提案だ。無視してもいい……〕
シンが続けた提案に、私は賛同の気持ちでいっぱいだった》
<だから、もぅ……>
「…リン…私ね」
「そんな言い方しないでよ…」
「もう満足だよ」
私は今、心の底から笑っている。これ以上にない幸せな時間を送った。
「後悔なんてないよ」
「もっと…欲張っていいんだよ…!」
「そんなことない。私は欲張りで運が良かったの。最後に笑えたから、過程なんていいやってさ」
「…………」
私は未来を暗く考えていなかった。だって、大してこれまでと変わらないのだから。
「…だから。そんなに泣かないでよ」
「……泣いてない」
リンは確かに泣いていなかった。でも、泣きそうな顔をしているように見えた。あの、リンが顔を俯かせて暗いトーンや口調が荒くなったりしてる気がするからだろうか。
<じゃあ、もう>
「お別れだね…」
〔すまない。邪魔する〕
「…なに?」
泣きたいのを誤魔化すように気持ち語気の強いリンの声色にシンはたじろぐ。
〔ほんと、ごめん!でも、急を要するんだ〕
「…怒ってない」
〔…とりあえず、現状を話す。アピスの伏兵が現れた。時間稼ぎだけならまだよかった。アピスが自爆した。時間をずらしてるが、5分もせずに…くる〕
「ヤバそうね…」
大まかな状況は分かった。
「…ここに残るのは…?」
ダメなの?と顔で訴えてくる。シンから、こちらに任せるという視線を送られる。答えは決まっていた。
「ダメに決まってるでしょ?」
<ここはかっこよく別れたかった……ちょっと違うか>
リンを信じてることを、リンが誰よりも知ってるから言う必要もない。当のリンが微動だにしないのは気がかりだけど……。
〔…ケイトたちが防護膜とかをちゃんとしてくれてるから安心していぃ…〕
私がその辺りのことを聞くことを先読みしてシンが教えてくれる。
「…ごめん…」
リンが…申し訳なさそうに謝る。こんなこと初めてで、どう返していいか瞬間的に困る。
「そんなことないよ。リンのおかげで私は救われたんだよ」
「……」
本当に思っているから、言葉がすらすらと紡がれていく。
「心も救われたし、お別れもちゃんとできた。リンは、私の救世主なんだから……。そんな顔しないでよ」
「…分かった。でも、ごめん」
リンは覚悟を決めた眼をしていた。のはずなのに、本当に少しだけ瞳孔が揺らめいていた。気が付けば抱き締めていた。
「じゃあ」
〔少しだけ待ってくれ。ケイトから伝言があるんだ。これは提案だ。無視してもいい……〕
シンが続けた提案に、私は賛同の気持ちでいっぱいだった》
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