解放

かひけつ

文字の大きさ
上 下
75 / 136
第3章 ~よう

■⑪

しおりを挟む
《sideメハ
Ⅱ▽が言いたいのはきっとこうだ。それらの作品は論理的な面白さを忘れ、社会の倫理観にガチガチに規制されてしまっていると。

 <余計な思惑は、作品を腐らせるだけだと…Ⅱ▽はきっとそう言いたいんだ…>

 「そう」

そこで察してしまった私は、声が出なかった…。

 <だって……喋る必要なんてなくて、心が読めるんだよね…?>

それを肯定するかのようにⅡ▽は頭を縦に振る。

 「と、とりあえず。『啓蒙』はあのままにしておくね…」

 「ぅん」

Ⅱ▽は片手でタブレットの電源を落とし、元の場所に戻す。

 「それで…さ、Ⅱ▽はいつから心が読めてたの…?」

 「生まれた時…から…?」

悲壮感を纏ってるようにも、何も考えてないようにも見えて少々不気味さを覚えてしまうものだった。

 <どの年齢であっても、人の心が読めてしまったら、気が狂っても仕方ない…ってあ、やば>

心が読まれているということに対してシュミレーションしたことがなく、つい思ってしまう。

 「平気だよ…」

 「あーーその、どっちがかな?」

私が地雷を踏んだと思ったことに対してなのか。心が読めても平気だったということなのかが明確ではなかったから。

 「…どっち、も」

 「は、はは。そ、そっか…」

未だにテンポがつかめず、たどたどしくなってしまう。勘繰ってしまうのは、これまでに汚い人間をあまり近くに置かないようにはしていたはずであっても、そういう人間の心を読んでいてもおかしくないという点だ。

 「そういう、もの、でしょ…。みんな」

 「え…?」

 「清も、濁も、あるよ。そういう、ものでしょ」

活動時間が制限されていて対人の経験が少ないのが原因かもしれない。

 <関係ない>

世の中を知ったかで語りたがる年頃かもしれない。

 <そうじゃ…なぃ…!>

電脳世界での合理的な無茶といい、現実世界での有り余る余裕は、子供じゃできるわけがない。

 「……」

 <目が見えないのはずなのに、臆せず無駄なく歩けるのも、言ってしまえば悟った坊さんのすること。心まではっきり読めてしまう…。リンに、私がすべきことって……>

 「遊ぼ」

Ⅱ▽の手にはトランプが握られていた。

 「……あのね。分かってると思うけど、Ⅱ▽はスゴイ能力を持っていてね。折角の才能なんだし、もっとさ」

 「いい。わたしが、いなくても、世界は、回る」

何も言えなくなってしまう。まさか、精神年齢が自分を上回る子の面倒を見るとは夢にも思ってなかった。

 〈ケイト様的にはリンのために私を作ったわけで、想定はしてたんかもだけど、私の役割も大してないのかもしれないです…〉

トランプの綺麗に混ぜたⅡ▽はそれを四つに分ける。私に三役やってくれと暗に言っていた。渋々、それに従うのだが、忘れもしない。その瞬間にⅡ▽は言った。

 「わたしは、わたし。……アイム…ヒアー…」

と、そこで画面は落ちる》
しおりを挟む
~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~                                                    敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu                                                   世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒)                                                    得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

愛し子

水姫
ファンタジー
アリスティア王国のアレル公爵家にはリリアという公爵令嬢がいた。 彼女は神様の愛し子であった。 彼女が12歳を迎えたとき物語が動き出す。 初めて書きます。お手柔らかにお願いします。 アドバイスや、感想を貰えると嬉しいです。 沢山の方に読んで頂けて嬉しく思います。 感謝の気持ちを込めまして番外編を検討しています。 皆様のリクエストお待ちしております。

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

引きこもりアラフォーはポツンと一軒家でイモつくりをはじめます

ジャン・幸田
キャラ文芸
 アラフォー世代で引きこもりの村瀬は住まいを奪われホームレスになるところを救われた! それは山奥のポツンと一軒家で生活するという依頼だった。条件はヘンテコなイモの栽培!  そのイモ自体はなんの変哲もないものだったが、なぜか村瀬の一軒家には物の怪たちが集まるようになった! 一体全体なんなんだ?

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

処理中です...