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第3章 ~よう
■④
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《sideメハ
真っ黒の背景にふてぶてしく傲慢さが滲み出る字面が並ぶ。
[これはそう、無名だった俺が世界に名を轟かせた隙のない半生についてまとめたものであると同時に、俺が仕組んだ最高の伏線回収の時間だ]
画面はアピスを中央に捉えたものに切り替わる。
「あーあー。聞こえてるな。秀才である俺がバカなお前らでも分かるよう簡潔に教えてやる」
[① 俺は『雷』のNo.1の才能を持っていることに気付いた。
② 施設や神子の存在を知り独自の研究に手を付ける。
③ 施設内での暴動を俺のおかげで鎮圧に成功する。
④ 信用を得た俺は独自の研究を発表することで、地位を築き上げる。
⑤ カーセ家に養子として迎えられるように手を打つ。
⑥ そして、今に至る]
「①はまんまだ。俺がガキの頃、施設が近くにできた。神子の存在も間近で見たさ。なら、完封する方法を探すのが当たり前だろ?」
至極当然。空気を吸うようにそう言う。
「②も流れは分かるだろう。知るには検証しなきゃならねぇ。だがなんで、施設の部外者だったころから内部情報が知れたか。簡単だ。侵入もしたし、盗聴やデータ改変もした。『雷』って便利でよぉー。いやぁー楽しかったなぁ。案外、バカばっかで身構えた俺があほらしくなっていったさ。」
ケラケラと笑う。施設の図面がアピスの背後に現れ、紐づけされる情報は日付、情報収集や改変に始まり、職員や子供の顔と個人情報がどんどん並ぶ。
「で、③は俺の実験の集大成。『妖精』がいることを疑ってこう考えた。拷問したほうが、絞り出せるんじゃないか、人質を取ればこう動くのかってな。びっくりするぐらい上手くいったんだぜ。暴動で簡単に施設の人間は無力化、そこを俺がトドメを刺した。たったこれだけで施設のトップに躍り出たわけだ。そこらの貴族を黙らせる実績の出来上がりってわけ」
若気の至りのように言うが、やっていることが、とんでもない。
<…こんなヤツにリンが狙われれる…>
身震いする。それもそのはず。私は施設の生い立ちを知っていた。だから、如何に施設がスゴイかを知っていた。
[国内の最高技術が集結して施設は作られた。始めこそ魔術や呪いなど世論は荒れに荒れた。だが、これまでの商業・教育施設では不可能だったことが可能になり、問題視されなかった子供の喧嘩が、只事ではなくなった。危険因子をまとめて施設に送られるようになった。国が放っておくこともできず、金銭面や技術面で手厚い供給を行い、ある程度の癒着こそあれど、異能を囲い育てる完全な機関が出来上がる。ただ一度の暴動があったこと以外、非の打ち所がないとまで評価されていた]
『カプセル』の兼ね合いで子供への愛着心も薄れ、兵器のように扱われる実情を知らない外からだと、こうだ。
たった一度の暴動。それが、自作自演。笑えない。
最近になって、最後の神子による施設半壊があって信頼が揺らいでいるが、アピスの実績は、信用は世界に買われている。
「④、ただ喧嘩が強いとか、力が優れているだけなんて、たかがしれている。俺は研究を対価に社会的地位を手に入れた。ま、実質脅して地位を奪いとったw。地位がなければできないことがあったからなぁ」
感慨深げに上を見上げるが、同情するものなどいなかった。僅かな間で、話を続ける。
「⑤、カーセ家は一番天辺に近いと思ったから近寄った」
画面の正面を見ながら、指で上を指す。てっぺんなど緩い言い方に違和感を覚えかねないが、そこで気づくだろう。もうアピスにとって、そこは遠すぎるわけではない。この時点で数歩手前まで来ている》
真っ黒の背景にふてぶてしく傲慢さが滲み出る字面が並ぶ。
[これはそう、無名だった俺が世界に名を轟かせた隙のない半生についてまとめたものであると同時に、俺が仕組んだ最高の伏線回収の時間だ]
画面はアピスを中央に捉えたものに切り替わる。
「あーあー。聞こえてるな。秀才である俺がバカなお前らでも分かるよう簡潔に教えてやる」
[① 俺は『雷』のNo.1の才能を持っていることに気付いた。
② 施設や神子の存在を知り独自の研究に手を付ける。
③ 施設内での暴動を俺のおかげで鎮圧に成功する。
④ 信用を得た俺は独自の研究を発表することで、地位を築き上げる。
⑤ カーセ家に養子として迎えられるように手を打つ。
⑥ そして、今に至る]
「①はまんまだ。俺がガキの頃、施設が近くにできた。神子の存在も間近で見たさ。なら、完封する方法を探すのが当たり前だろ?」
至極当然。空気を吸うようにそう言う。
「②も流れは分かるだろう。知るには検証しなきゃならねぇ。だがなんで、施設の部外者だったころから内部情報が知れたか。簡単だ。侵入もしたし、盗聴やデータ改変もした。『雷』って便利でよぉー。いやぁー楽しかったなぁ。案外、バカばっかで身構えた俺があほらしくなっていったさ。」
ケラケラと笑う。施設の図面がアピスの背後に現れ、紐づけされる情報は日付、情報収集や改変に始まり、職員や子供の顔と個人情報がどんどん並ぶ。
「で、③は俺の実験の集大成。『妖精』がいることを疑ってこう考えた。拷問したほうが、絞り出せるんじゃないか、人質を取ればこう動くのかってな。びっくりするぐらい上手くいったんだぜ。暴動で簡単に施設の人間は無力化、そこを俺がトドメを刺した。たったこれだけで施設のトップに躍り出たわけだ。そこらの貴族を黙らせる実績の出来上がりってわけ」
若気の至りのように言うが、やっていることが、とんでもない。
<…こんなヤツにリンが狙われれる…>
身震いする。それもそのはず。私は施設の生い立ちを知っていた。だから、如何に施設がスゴイかを知っていた。
[国内の最高技術が集結して施設は作られた。始めこそ魔術や呪いなど世論は荒れに荒れた。だが、これまでの商業・教育施設では不可能だったことが可能になり、問題視されなかった子供の喧嘩が、只事ではなくなった。危険因子をまとめて施設に送られるようになった。国が放っておくこともできず、金銭面や技術面で手厚い供給を行い、ある程度の癒着こそあれど、異能を囲い育てる完全な機関が出来上がる。ただ一度の暴動があったこと以外、非の打ち所がないとまで評価されていた]
『カプセル』の兼ね合いで子供への愛着心も薄れ、兵器のように扱われる実情を知らない外からだと、こうだ。
たった一度の暴動。それが、自作自演。笑えない。
最近になって、最後の神子による施設半壊があって信頼が揺らいでいるが、アピスの実績は、信用は世界に買われている。
「④、ただ喧嘩が強いとか、力が優れているだけなんて、たかがしれている。俺は研究を対価に社会的地位を手に入れた。ま、実質脅して地位を奪いとったw。地位がなければできないことがあったからなぁ」
感慨深げに上を見上げるが、同情するものなどいなかった。僅かな間で、話を続ける。
「⑤、カーセ家は一番天辺に近いと思ったから近寄った」
画面の正面を見ながら、指で上を指す。てっぺんなど緩い言い方に違和感を覚えかねないが、そこで気づくだろう。もうアピスにとって、そこは遠すぎるわけではない。この時点で数歩手前まで来ている》
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月見酒です。
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