解放

かひけつ

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第3章 ~よう

塵モ④

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リンはたまたま先行となり、流れるようにカードを選択する。デッキは紙だったくせに、宙に浮いたホログラムパネルでゲームを進行する。

 「塵も…子ドラ」

 「はい[神罰]。さよーなら」

魔法カードは1ターンに一度だけ。だが、相手ターンでも放てる魔法もある。アピスは一枚手札を捨てる。[塵も積もれば]も[子ドラゴン]も戦力が0になる。

 「[仮死延命]、子ドラ」

リンの宣言により、[子ドラゴン]は戦力を1だけ残し、戦力にはなれないまま場に残る。ホログラムのドラゴンは居なくなった塵も積もれば仲間に首を振り、力なくうなだれ退場する。

 「ターンエン、ド」

アピスは山札からカードを引く。そして、熟考することもなく、流れるように宣言する。

 「魔法[記憶喪失]。対象、[子ドラゴン]」

 「……」

アピスはニヤニヤしてターンを終える。それはさておき、この光景に見覚えがあった。

 <これは…>

 「伏せで二体」

追憶の旅に出る前に、リンのは行動する。試合を集中して見守る。

 「[サーモグラフィ]」

リンが伏せで出した[老騎士]と[巫女]はひっくり返る。登場したため、[巫女]は効果を発動する。[お祓い]が手札に加わる。

 「チリツモを置いて、ターンエンド」

ヤツの口角は上がったままだった。

 <大人しい>

率直な感想だった。ガンガン自分のペースに呑み込むタイプだとばかり思っていたのもあるが、異質だ。

 「伏せ一枚。[巫女]、じぃや進軍。和解」

[巫女]は和解願いというアクションはゲームの方向性を変える可能性すらある。しかも無下にはできないという。そう聞いた。

 <やっぱり、おかしい。こんなよく理解できてないオレでもヤバイってわかるカードが出てきて何も対策しないはずがない。あいつは全てのカードに目を通したはずだ……>

 「俺のターン。[またとなきこの日に]!」

 「……!!」

 <何を考えているんだ?それは戦うカードとは言い難い。そのはずだ。十億分の一でしか意味がない。それをこんな顔で使うやつがいるか?>

アピスは笑顔を崩さない。目は笑っていないが、口角が上がり続けている。明らかな余裕。まるで計算通りとでも言いたげな雰囲気を感じ取る。

 <何をする気だ?>

 抽選結果:2ターン追加

 〔は?〕

 「………」

十億分の一。非現実的な数字に感じるだろう。だが、目の前で見た。それが予定調和と言わんばかりに宣言する。

 「ターンエンド。でも残念。また俺のターン」

アピスは山札からカードを引く。
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