解放

かひけつ

文字の大きさ
上 下
56 / 136
第3章 ~よう

塵モ②

しおりを挟む
☆sideシン
オレらは扉の前にいた。ここまでの道のりは大したことない。もはや、流れ作業になってさっきまで階段を上っていたことすら記憶にないのだ。ここからが鬼門……。もう終わりにしてやる。



ヤツは余裕の表情でオレらを待ち受ける。

 「初めまして。いや、そんなこと言う必要もないよな??」

言葉から溢れ出る悪意が、分かり切った挑発の裏に潜む残忍さが、ただただ不愉快で吐き気がしてくる。

 「お前はメハとかいうAIのためにきたんだろ?」

 「……」

 「ここは一つ、公平で平和的なゲームで決着をつけようではないか」

 「…やる」

淡々と、それでいて意志の片鱗を見せてそう言う。アピスは意外そうに一瞬硬直する。くるりと方向転換をし、指を鳴らす。

パチン

リンとアピスの間に大きな台が現れる。リンが腰かけるとアピスは満面の笑みで話しかける。

 「プレゼントは楽しんでもらえたかな?」

 「別に…」

リンは台の上のカードを触りながら、興味なさそうに応える。

 [the best]

2人の思い出の結晶。再現こうできるのもメハの記憶を覗いたからに過ぎない。

 「…そうそう、安心してよ。それ、リンちゃんがよく使っていたデッキだから。まー欲しいのあったらデッキの調整はしていいよ」

 「…そう」

リンは大した反応も見せずデッキを台に置く。台はその重みを検知してか一度デッキを台の中に収納し、同じ場所に同じ枚数のカードが現れる。

 「安心してくれ。それは公平かつ平等、つまり不正イカサマはないと神に誓って断言しよう」

何が真実で何が間違ってるかなんてオレなんかが断言することはできなかった。リンは静かに肯定する。

 「…そう」

 「お、信じてくれた?話が分かる~~」

 「ところで、自称カミはどうした?どうせいるんだろ?他の保護者どもは、さておいて」

 《ここで文句も対話も必要はない》

 <これで最後だ。最小限の犠牲と声高々と言えるかは分からない……。が、ここで終止符を打つんだ>

リンのために、リンを殺すなんて、正気とは思えない。

ッ……

乾ききった心は笑う真似事しかできやしない。
しおりを挟む
~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~                                                    敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu                                                   世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒)                                                    得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

処理中です...