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第3章 ~よう
クモを掴む④
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☆sideシン
龍成や龍児は、ルコも綿密な計画の上で最善の手を打っていた。いずれも結果から見たら失敗しているように見えるが、未練を感じていなかった。彼らの最期は最善だったと言わざるを得ないように、感じる。アイナやソウは一見考えてないようで意外と物事の本質を見抜く力があって、彼らもそれこそ物語の主人公並みの決断や行動ができていた。
<彼らに比べてオレはどうだ?なんてザマだ。結果が分かってからじゃないと最善かわからない上に、そのために、ありふれた幸せのために、何億もの犠牲を見て見ぬフリをしている……>
「はははははは!すぅー、お前がどの時の誰に対して自責の念を感じてるかなんて知らねーが、今さら後悔でもしてるってのか?なんだ?屍の山に、同情の一つでもしたってのか?今さら?優しい優しい俺は、伏線は、フラグはちゃーんと分かりやすく貼ってあっただろ?そんな心が欠片でもあるなら俺に挑むのは無駄だ。無意味だ。ただの餌だろ」
やつは見透かす。オレの弱さを、苛立ちを加速させる。
「わたしの心は。死んでない」
リンは強すぎることも、弱すぎることもない声量で、芯のある声で言い放つ。
「わたしの仲間も、友達も、死んでない」
「…はーあ。頭と心は違うってことを…、現実を、教えてやるよ」
パチン!!
流れるようにアピスは指を鳴らす。
「このゲームでは、自分の城の耐久値がなくなれば、負けを意味する」
<ま、さか>
嫌な予感がする。そして、どこか予想していたことが現実になる。
「おい!放せ!!」
「どこなんだ一体!」
「アピスさんの声がする!助けてください!!」
様々な声が飛び交う。目隠しをされている男たちが身動きをとれない状態で現れた。硬そうな鎖は鈍く、冷たい印象を与える。いや、それ以上に下等な種族だと本能に刻んでいるようにも思えてしまう。その様子を僅かに口角を上げていた男がいた。その笑みは、一瞬で消え、冷たい空気を纏う。
「外野は黙ってろ」
「ぁが………っ!」
猿ぐつわのように簡素なようで、でも自分から外すことが絶対にできないように口を塞いでいる。
「まー。分かっているだろうが、耐久値が減らされるとその分だけこいつらが犠牲になる。俺でも、お前でも」
「………」
そこで、リンは顔を歪める。当然と言えた。まだ誰の命とも訣別していないからである。
「おいおい、そんな顔するなよ。しょうがないなーー。じゃあ、なしだ。俺の耐久値を減らすことで彼らを殺すのは」
<……>
「それだったら、速攻で決着さえ着けば最小限の死者で済む。な?悪くない提案だろ??」
願ってもない申し出だった。が、あいつがただ優しいだけな訳がない。魂が疑っていた。
「……」
リンもそれを足蹴にできずに小さく頷く。
「よろしい」
パチン……バシュン!!ビチャベチャ…ドン。
アピスが指を鳴らすと同時にアピス側にいた男たちの首が飛ぶ。この光景が、先程までアピスとやり取りしたこととどう繋がるのか理解できなくてオレは呆然としてしまった。
龍成や龍児は、ルコも綿密な計画の上で最善の手を打っていた。いずれも結果から見たら失敗しているように見えるが、未練を感じていなかった。彼らの最期は最善だったと言わざるを得ないように、感じる。アイナやソウは一見考えてないようで意外と物事の本質を見抜く力があって、彼らもそれこそ物語の主人公並みの決断や行動ができていた。
<彼らに比べてオレはどうだ?なんてザマだ。結果が分かってからじゃないと最善かわからない上に、そのために、ありふれた幸せのために、何億もの犠牲を見て見ぬフリをしている……>
「はははははは!すぅー、お前がどの時の誰に対して自責の念を感じてるかなんて知らねーが、今さら後悔でもしてるってのか?なんだ?屍の山に、同情の一つでもしたってのか?今さら?優しい優しい俺は、伏線は、フラグはちゃーんと分かりやすく貼ってあっただろ?そんな心が欠片でもあるなら俺に挑むのは無駄だ。無意味だ。ただの餌だろ」
やつは見透かす。オレの弱さを、苛立ちを加速させる。
「わたしの心は。死んでない」
リンは強すぎることも、弱すぎることもない声量で、芯のある声で言い放つ。
「わたしの仲間も、友達も、死んでない」
「…はーあ。頭と心は違うってことを…、現実を、教えてやるよ」
パチン!!
流れるようにアピスは指を鳴らす。
「このゲームでは、自分の城の耐久値がなくなれば、負けを意味する」
<ま、さか>
嫌な予感がする。そして、どこか予想していたことが現実になる。
「おい!放せ!!」
「どこなんだ一体!」
「アピスさんの声がする!助けてください!!」
様々な声が飛び交う。目隠しをされている男たちが身動きをとれない状態で現れた。硬そうな鎖は鈍く、冷たい印象を与える。いや、それ以上に下等な種族だと本能に刻んでいるようにも思えてしまう。その様子を僅かに口角を上げていた男がいた。その笑みは、一瞬で消え、冷たい空気を纏う。
「外野は黙ってろ」
「ぁが………っ!」
猿ぐつわのように簡素なようで、でも自分から外すことが絶対にできないように口を塞いでいる。
「まー。分かっているだろうが、耐久値が減らされるとその分だけこいつらが犠牲になる。俺でも、お前でも」
「………」
そこで、リンは顔を歪める。当然と言えた。まだ誰の命とも訣別していないからである。
「おいおい、そんな顔するなよ。しょうがないなーー。じゃあ、なしだ。俺の耐久値を減らすことで彼らを殺すのは」
<……>
「それだったら、速攻で決着さえ着けば最小限の死者で済む。な?悪くない提案だろ??」
願ってもない申し出だった。が、あいつがただ優しいだけな訳がない。魂が疑っていた。
「……」
リンもそれを足蹴にできずに小さく頷く。
「よろしい」
パチン……バシュン!!ビチャベチャ…ドン。
アピスが指を鳴らすと同時にアピス側にいた男たちの首が飛ぶ。この光景が、先程までアピスとやり取りしたこととどう繋がるのか理解できなくてオレは呆然としてしまった。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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