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第3章 ~よう
クモを掴む③
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☆sideシン
後ろを振り返ることなく進んで、進んで進み続けた。
<もう…ラストであってくれ…>
闇の部屋や音による攻撃も仕掛けられることもあった。寒暖差を利用したクソみたい環境も攻略もした。子供に対して放射線をぶちまけるとかいう頭がおかしい攻撃もされた。100を超える獣からの強襲も可愛く思えてしまう程……色んな仕掛けがあった。
最後は階段だった。
ボロボロに壊れたオレらの精神に、まだ下があることを教えてくれる。階段を上る度に両サイドの人間が斬首される。異能を使っても簡単に壊すことはできないし、足掻けば足掻くほど人質が弄ばれる。
「助けてくれ」
とせがまれた。
「殺してくれ」
と叫ばれた。
「俺たちを気にするな…」
恨み事が山のように続く中でも、そんな人がでてくる始末だ。
「……」
<……………>
約束を頼む子供がいた。小さな子供に負担を掛けまいと口を噤む大人がいた。
助けることはできないという現実以外何も残らなかった。
まともな精神でいられるはずがなかった。リンの口数はそもそも少ない方だったが、さらに減った。オレは……。
――sideアピス
俺は、階段の少女の様子を見て大いに余裕を持って待っていた。見るからに精神をすり減らし、絶望していく様は心苦しいものだった。
「そろそろいってこい」
「ま、そうだな」
不動のチャンピオンと死にかけの挑戦者。そのくらい、負ける要素がないと言えた。隠し切れない笑みに気付いてか、声をかけられる。
「あまり油断するなよ?」
「大丈夫だっていっただろ?億が一にも、負けやしない」
「はぁ…」
俺も警戒心が強い方だが、コイツは俺以上だ。だから一緒に来たのだろう。背を向けたまま手をひらひらと振って別れる。馴れ合う必要なんてないしな――
☆sideシン
リンは静かにソイツを睨みつける。
「初めまして。いや、そんなこと言う必要もないよな??」
言葉から滲み出る悪意が、見え透いた挑発の裏に潜む残忍さが、得体の知れない不気味さが吐き気がしてくる。
「お前はメハとかいうAIのためにきたんだろ?」
「……」
「ここは一つ、公平で平和的なゲームで決着をつけようではないか」
「分かった。やる」
淡々と、それでいて意志の片鱗を見せてそう言う。アピスは意外そうに一瞬硬直する。くるりと方向転換をし、指を鳴らす。
パチン
リンとアピスの間に大きな台が現れる。リンが腰かけるとアピスは満面の笑みで話しかける。
「プレゼントは楽しんでもらえたかな?」
「別に…」
リンは台の上のカードを確認しながら、素っ気なく応える。
[the best]…メハとリンのこれまでの思い出が詰まった娯楽
市販ではない。存在を知っているのも、再現できるのも、メハの記憶を覗いたに違いない。
「そっか。そうそう、安心してよ。それリンちゃんがよく使っていたデッキだから。まー欲しいのあったらデッキの調整はしていいよ」
「…そう」
リンは眉毛ををピクリと動かすが、大した反応も見せずデッキをそのまま台に置く。台はその重みを検知してか一度デッキを台の中に収納し、同じ場所に同じ枚数のカードが現れる。
「安心してくれ。それは公平かつ平等、つまり不正はないと神に誓って断言しよう」
羽のように軽い……。不信感が微塵も消えることがなかった。だが、リンは静かに肯定する。
「本当みたい…ね」
「お、信じてくれた?話が分かる~~」
リンは伝えずしとオレが話しかけることを避けていることを察している。
「ところで、自称カミはどうした?どうせいるんだろ?他の保護者どもは、さておいて」
ずっとへらへらと溢れ出る殺意は視界に入れないことで軽減する。ここで文句や茶々を入れる必要はない。現状を教えてやる必要はない。ただ…ふと考えてしまう。
<私利私欲のために罪もない人も巻き込んで完全支配しようとするヤツと仲間を何度も見切りをつけて見捨てる神は、どちらが悪魔だろうか>
ゆっくりと視界を取り戻すと、大きな机の前に小さな背中があった。手にしたカードをじっくりと眺めて思案している。これが、最善だったのだろうか?そう思わずにいられない。
後ろを振り返ることなく進んで、進んで進み続けた。
<もう…ラストであってくれ…>
闇の部屋や音による攻撃も仕掛けられることもあった。寒暖差を利用したクソみたい環境も攻略もした。子供に対して放射線をぶちまけるとかいう頭がおかしい攻撃もされた。100を超える獣からの強襲も可愛く思えてしまう程……色んな仕掛けがあった。
最後は階段だった。
ボロボロに壊れたオレらの精神に、まだ下があることを教えてくれる。階段を上る度に両サイドの人間が斬首される。異能を使っても簡単に壊すことはできないし、足掻けば足掻くほど人質が弄ばれる。
「助けてくれ」
とせがまれた。
「殺してくれ」
と叫ばれた。
「俺たちを気にするな…」
恨み事が山のように続く中でも、そんな人がでてくる始末だ。
「……」
<……………>
約束を頼む子供がいた。小さな子供に負担を掛けまいと口を噤む大人がいた。
助けることはできないという現実以外何も残らなかった。
まともな精神でいられるはずがなかった。リンの口数はそもそも少ない方だったが、さらに減った。オレは……。
――sideアピス
俺は、階段の少女の様子を見て大いに余裕を持って待っていた。見るからに精神をすり減らし、絶望していく様は心苦しいものだった。
「そろそろいってこい」
「ま、そうだな」
不動のチャンピオンと死にかけの挑戦者。そのくらい、負ける要素がないと言えた。隠し切れない笑みに気付いてか、声をかけられる。
「あまり油断するなよ?」
「大丈夫だっていっただろ?億が一にも、負けやしない」
「はぁ…」
俺も警戒心が強い方だが、コイツは俺以上だ。だから一緒に来たのだろう。背を向けたまま手をひらひらと振って別れる。馴れ合う必要なんてないしな――
☆sideシン
リンは静かにソイツを睨みつける。
「初めまして。いや、そんなこと言う必要もないよな??」
言葉から滲み出る悪意が、見え透いた挑発の裏に潜む残忍さが、得体の知れない不気味さが吐き気がしてくる。
「お前はメハとかいうAIのためにきたんだろ?」
「……」
「ここは一つ、公平で平和的なゲームで決着をつけようではないか」
「分かった。やる」
淡々と、それでいて意志の片鱗を見せてそう言う。アピスは意外そうに一瞬硬直する。くるりと方向転換をし、指を鳴らす。
パチン
リンとアピスの間に大きな台が現れる。リンが腰かけるとアピスは満面の笑みで話しかける。
「プレゼントは楽しんでもらえたかな?」
「別に…」
リンは台の上のカードを確認しながら、素っ気なく応える。
[the best]…メハとリンのこれまでの思い出が詰まった娯楽
市販ではない。存在を知っているのも、再現できるのも、メハの記憶を覗いたに違いない。
「そっか。そうそう、安心してよ。それリンちゃんがよく使っていたデッキだから。まー欲しいのあったらデッキの調整はしていいよ」
「…そう」
リンは眉毛ををピクリと動かすが、大した反応も見せずデッキをそのまま台に置く。台はその重みを検知してか一度デッキを台の中に収納し、同じ場所に同じ枚数のカードが現れる。
「安心してくれ。それは公平かつ平等、つまり不正はないと神に誓って断言しよう」
羽のように軽い……。不信感が微塵も消えることがなかった。だが、リンは静かに肯定する。
「本当みたい…ね」
「お、信じてくれた?話が分かる~~」
リンは伝えずしとオレが話しかけることを避けていることを察している。
「ところで、自称カミはどうした?どうせいるんだろ?他の保護者どもは、さておいて」
ずっとへらへらと溢れ出る殺意は視界に入れないことで軽減する。ここで文句や茶々を入れる必要はない。現状を教えてやる必要はない。ただ…ふと考えてしまう。
<私利私欲のために罪もない人も巻き込んで完全支配しようとするヤツと仲間を何度も見切りをつけて見捨てる神は、どちらが悪魔だろうか>
ゆっくりと視界を取り戻すと、大きな机の前に小さな背中があった。手にしたカードをじっくりと眺めて思案している。これが、最善だったのだろうか?そう思わずにいられない。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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