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第3章 ~よう
始め⑤
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だから、オレは止めた。そして、冷静に諭す。
〔リン一回休憩しよう。万全な体勢でいくのが最善だ。そうだろ?〕
「頭が痛くても…歩ける。警戒できる。早く行かなきゃ」
〔………分かった。でも、栄養は取ってもらうし、霊の先行させてもらう〕
「…うん」
オレ達はゆっくりと進んだ。霊の先行のおかげで、休みながら進められる。暗闇やブラックボックスなところを探れるわけではないが、ないよりは圧倒的にマシ。心理的負担として死なない先導者がいるのは心強い。
程なくして、階段に繋がる部屋を見つける。リンと共に中を覗くと警戒せざるを得ない光景が広がっていた。厚くて防音、耐熱、撥水など性能てんこ盛りだが、無機質な壁。なぜか檻を連想してまうまでにどこか悪趣味な匂いがする。最悪、それは良いとしても......。
親子がいるのだ。
さっきと似たように、ただうずくまっている。いや、抱きしめあっている。「さっきと同じでホログラムだよ」なんて言える心なんてない。オレはなんて言えばいいのか分からなかった。
<リンが、オレが、何かをしたら...アピスの罠で殺されてしまうかもしれない。選択を間違えれば、リンの純粋な心は壊れてしまう……オレが、オレが!!>
「これこれ、二人共。考えすぎじゃ」
ケイトが急に現れオレらを諭す。
〔そうは言っても……〕
事実は、変わらない。
「無駄口は要らんじゃろ。まずは、足掻きが必要じゃ」
その瞬間悟る。
〔リン、行こう〕
「…うん」
ケイトに背を向ける。リンはオレを信用して無条件について来てくれる。彼女らの期待に応えなるんだ。
リンと一緒に片っ端から二階のフロアを調べる。上の階への隠しルートなるものは見つからなかったが、アピスのいやらしい罠を次々と発見した。毒の入った水槽や人質を使った入室禁止トラップ、爆弾がそこら中にあって下手な侵入経路は建物の倒壊の恐れがある。あの部屋を覗いて3階へ上がるのが難しそうだ。
「中には二人の人質とタブレット端末。人質とはガラス張りで仕切りはされてるけどそれほど厚くない」
オレらの代わりに中の様子を詳しく見てくれていたルコが様子を教えてくれる。
〔タブレットには何が……?〕
何が表示されているのか。そして、タブレット内のデータを調べられるハズだと踏んでそう聞いた。
「ごめん。調べられなかった」
ルコが申し訳なさそうにそう言う。神だったが故の全能感や万事順調といった感覚とは本当に無縁だと感じてしまう。
〔…理由を聞いていいか?〕
感情を表に出さないために機械的に問う。
「私たちはあそこ以上の部屋に入ろうとすれば意識が薄れていくそんな気がするの…」
ルコの意味ありげな間でルコとオレ、リンは同じ考えを共有する。
<アピスは除霊の手段を持っているかもしれない>
手痛い戦線離脱。例が先駆けとして行ってくれるからより安全に進める部分も多々あった。それと同時に至る可能性は、霊との会話でさえも盗聴されるかもしれない。
「っ!!」
ルコの霊体が後退りする。
〔ルコ!大丈夫か!〕
「や、ばいね。さっき言ってたアレの範囲が広がっていってるみたい」
万全な準備の上でのお別れではなく、強制離脱で条件付きの復帰不可。オレは顔が有れば酷い顔をしていたと思う。
「いいよ」
リンは軽くそう言う。
「不可避だし…」
それは諦めや失望などではなく、リンなりの気遣いだとここにいる誰もが察した。
「リン、味方がいるからね。それだけ忘れないでね。......じゃあ...またね」
「ん」
ほとんどの霊が、小走りで簡素な言葉や身振り手振りで別れを告げる。ケイトはゆっくりと後ろも振り向かずに皆が後退する方向に歩む。
〔おい、ケイト!何も言わなくていいのかよ?〕
オレが声をかけて初めて歩みを止めず振り返る。穏やかで控えめな笑顔だった。
「信じておるからの。リンに心配などないわ。強いて言うならお主の方が心配されることをしておるじゃろうに」
〔......〕
オレは声を出せずに立ち止まった。しばしの間で、場は完全に静寂になる。
「……シンもキツいの?」
リンはオレを心配する。
〔大丈夫。大丈夫だよ。進もう〕
「......」
リンはそれ以上言及することなくドアを開ける。瞬間、走馬灯を思わせる映像が、濁流の如く流れ込む。
〔リン一回休憩しよう。万全な体勢でいくのが最善だ。そうだろ?〕
「頭が痛くても…歩ける。警戒できる。早く行かなきゃ」
〔………分かった。でも、栄養は取ってもらうし、霊の先行させてもらう〕
「…うん」
オレ達はゆっくりと進んだ。霊の先行のおかげで、休みながら進められる。暗闇やブラックボックスなところを探れるわけではないが、ないよりは圧倒的にマシ。心理的負担として死なない先導者がいるのは心強い。
程なくして、階段に繋がる部屋を見つける。リンと共に中を覗くと警戒せざるを得ない光景が広がっていた。厚くて防音、耐熱、撥水など性能てんこ盛りだが、無機質な壁。なぜか檻を連想してまうまでにどこか悪趣味な匂いがする。最悪、それは良いとしても......。
親子がいるのだ。
さっきと似たように、ただうずくまっている。いや、抱きしめあっている。「さっきと同じでホログラムだよ」なんて言える心なんてない。オレはなんて言えばいいのか分からなかった。
<リンが、オレが、何かをしたら...アピスの罠で殺されてしまうかもしれない。選択を間違えれば、リンの純粋な心は壊れてしまう……オレが、オレが!!>
「これこれ、二人共。考えすぎじゃ」
ケイトが急に現れオレらを諭す。
〔そうは言っても……〕
事実は、変わらない。
「無駄口は要らんじゃろ。まずは、足掻きが必要じゃ」
その瞬間悟る。
〔リン、行こう〕
「…うん」
ケイトに背を向ける。リンはオレを信用して無条件について来てくれる。彼女らの期待に応えなるんだ。
リンと一緒に片っ端から二階のフロアを調べる。上の階への隠しルートなるものは見つからなかったが、アピスのいやらしい罠を次々と発見した。毒の入った水槽や人質を使った入室禁止トラップ、爆弾がそこら中にあって下手な侵入経路は建物の倒壊の恐れがある。あの部屋を覗いて3階へ上がるのが難しそうだ。
「中には二人の人質とタブレット端末。人質とはガラス張りで仕切りはされてるけどそれほど厚くない」
オレらの代わりに中の様子を詳しく見てくれていたルコが様子を教えてくれる。
〔タブレットには何が……?〕
何が表示されているのか。そして、タブレット内のデータを調べられるハズだと踏んでそう聞いた。
「ごめん。調べられなかった」
ルコが申し訳なさそうにそう言う。神だったが故の全能感や万事順調といった感覚とは本当に無縁だと感じてしまう。
〔…理由を聞いていいか?〕
感情を表に出さないために機械的に問う。
「私たちはあそこ以上の部屋に入ろうとすれば意識が薄れていくそんな気がするの…」
ルコの意味ありげな間でルコとオレ、リンは同じ考えを共有する。
<アピスは除霊の手段を持っているかもしれない>
手痛い戦線離脱。例が先駆けとして行ってくれるからより安全に進める部分も多々あった。それと同時に至る可能性は、霊との会話でさえも盗聴されるかもしれない。
「っ!!」
ルコの霊体が後退りする。
〔ルコ!大丈夫か!〕
「や、ばいね。さっき言ってたアレの範囲が広がっていってるみたい」
万全な準備の上でのお別れではなく、強制離脱で条件付きの復帰不可。オレは顔が有れば酷い顔をしていたと思う。
「いいよ」
リンは軽くそう言う。
「不可避だし…」
それは諦めや失望などではなく、リンなりの気遣いだとここにいる誰もが察した。
「リン、味方がいるからね。それだけ忘れないでね。......じゃあ...またね」
「ん」
ほとんどの霊が、小走りで簡素な言葉や身振り手振りで別れを告げる。ケイトはゆっくりと後ろも振り向かずに皆が後退する方向に歩む。
〔おい、ケイト!何も言わなくていいのかよ?〕
オレが声をかけて初めて歩みを止めず振り返る。穏やかで控えめな笑顔だった。
「信じておるからの。リンに心配などないわ。強いて言うならお主の方が心配されることをしておるじゃろうに」
〔......〕
オレは声を出せずに立ち止まった。しばしの間で、場は完全に静寂になる。
「……シンもキツいの?」
リンはオレを心配する。
〔大丈夫。大丈夫だよ。進もう〕
「......」
リンはそれ以上言及することなくドアを開ける。瞬間、走馬灯を思わせる映像が、濁流の如く流れ込む。
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