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第3章 ~よう
始め②
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《☆sideシン
オレ達が作戦会議をほぼ片付けて軽く雑談をしていると、ケイトがリンを呼び出した。
「リン。あなたに知っておいて欲しいことがあるの」
「なに?」
「ちょっと二人っきりになりましょう」
「わかった」
オレらはリン達が二人なるのを横目に見ながらあくまで自然さを保つように努めた。
〔………〕
オレは何も言う必要はない。オレは家族ではないから。聞かないべきだ。分かっていたことだ。これまでの不可解な点やケイトがわざわざ言うことなども含めれば、たぶんそうだ。
ギリィ…
<だからこそ、アピスが憎い。人の幸せを散々奪って、人の心などありはしないのか?!>
「大丈夫?」
ルコに声をかけられる。
〔あぁ悪い。考え事してた〕
「……私も、あの時は…生き急いでてあなたの心配なんてできなかったけど、まーその愚痴くらいなら聞けるよ」
対人関係に自信がないルコがそういうのが、彼女なりに頑張ってくれていることを察してありがたくはあった。と同時に、手伝えるか分からない。無茶しなきゃいけない時もあるし下手に口を出せない。という心の声が見え隠れしている。
〔フッ…〕
「ちょ!誤魔化さないでよ!!」
オレが半笑いしたことが気に食わなかったらしくえらく興奮気味に主張する。
〔大丈夫。メハは助けるし、アピスはいつか潰す。これに支障はない〕
「……わかった」
渋々引きながらも、煮え切らないと目と口が言っている。龍成の表情が豊かになったと心底喜んでいたが、ルコもわだかまりが無くなったお陰かよく笑うようになったと実感する。リンのお陰かもしれないが、とりあえず良かった。アピスのせいで自身の死を冒涜され、もっと荒んだ気持ちになってもおかしくないのだから。
「それに関しては深入りしないからさ!そのムカつく顔やめて」
〔わかったわかった〕
「っ~~」
「ルコ姉?」
「り、リン」
「ケンカ?」
リンと共にケイトが戻ってくる。視線を合わせると、ゆっくりと頷かれる。
「えっと、その…そんな感じかな」
〔をい〕
リンが僅かに笑う。オレらが本気でケンカしてるわけではないと察してか、ほんの少し余裕ができたからだろうか。オレは後者であることを祈るばかりだった》
☆sideシン
オレとリンは、どちらからも話しかけることなく進んでいく。数回、変装で二階に到着し、階段の閉鎖を片手間で終わらせる。
ガララ…ズンッ!!
さらに適当なコンセントに『雷』を使う。
バチシューー!
それだけでショートを起こす。
電気回路に流れているのがアピスのものだったとしても、回路を強化するのは難しい。さすがに回路ごと壊せば電気は使えないはずだ。
<まぁ、多少は対策してるだろうな>
二階に繋がる通路及びエレベーターを使用不可にできた。これで一階の警備員が来れない。
〔こっからが本番だぞ〕
リンは変装を解いて、動きやすい服装に変える。二階に警備員はいない。オレは眼の前のそれを睨みつける。
[ようこそ侵入者! 楽しんでくれ給え]
次の部屋のドアに嫌味ったらしいフォントでそんなことが書かれている。アピスが用意した悪趣味な代物だ。霊達が先行してくれたが、光がないと眼が使えないように、擬似的に肉体を再現している霊体もまた光を必要とする。
即ち、完全な闇において霊は盲目
この階はブラックボックスな部分がそこそこある。オレには、事前に知る術がないわけではないが、今、使うことはない。
「行こ」
軽い準備運動も済ませ、リンは悠然とドアを開ける。暗かった部屋に明かりが点く。
[クイズだ]
タブレットとドア。それくらいしかこの場にはない。
〔鍵がかかってるみたいだな。暗証番号式の…〕
壊してしまおうかなと思案し始めた頃には、その鍵から音がした。
カチャリ
「終わった」
[全問クリア]
と表示されたタブレットをオレに見せる。
「行こ」
オレは反応することもできずに、進むリンの背中を見守る。
「私の何倍も頭良いね…」
驚嘆したのはオレだけでなく、ルコもかなり驚いていた。少し誇らしげにケイトがリンについていく。
オレ達が作戦会議をほぼ片付けて軽く雑談をしていると、ケイトがリンを呼び出した。
「リン。あなたに知っておいて欲しいことがあるの」
「なに?」
「ちょっと二人っきりになりましょう」
「わかった」
オレらはリン達が二人なるのを横目に見ながらあくまで自然さを保つように努めた。
〔………〕
オレは何も言う必要はない。オレは家族ではないから。聞かないべきだ。分かっていたことだ。これまでの不可解な点やケイトがわざわざ言うことなども含めれば、たぶんそうだ。
ギリィ…
<だからこそ、アピスが憎い。人の幸せを散々奪って、人の心などありはしないのか?!>
「大丈夫?」
ルコに声をかけられる。
〔あぁ悪い。考え事してた〕
「……私も、あの時は…生き急いでてあなたの心配なんてできなかったけど、まーその愚痴くらいなら聞けるよ」
対人関係に自信がないルコがそういうのが、彼女なりに頑張ってくれていることを察してありがたくはあった。と同時に、手伝えるか分からない。無茶しなきゃいけない時もあるし下手に口を出せない。という心の声が見え隠れしている。
〔フッ…〕
「ちょ!誤魔化さないでよ!!」
オレが半笑いしたことが気に食わなかったらしくえらく興奮気味に主張する。
〔大丈夫。メハは助けるし、アピスはいつか潰す。これに支障はない〕
「……わかった」
渋々引きながらも、煮え切らないと目と口が言っている。龍成の表情が豊かになったと心底喜んでいたが、ルコもわだかまりが無くなったお陰かよく笑うようになったと実感する。リンのお陰かもしれないが、とりあえず良かった。アピスのせいで自身の死を冒涜され、もっと荒んだ気持ちになってもおかしくないのだから。
「それに関しては深入りしないからさ!そのムカつく顔やめて」
〔わかったわかった〕
「っ~~」
「ルコ姉?」
「り、リン」
「ケンカ?」
リンと共にケイトが戻ってくる。視線を合わせると、ゆっくりと頷かれる。
「えっと、その…そんな感じかな」
〔をい〕
リンが僅かに笑う。オレらが本気でケンカしてるわけではないと察してか、ほんの少し余裕ができたからだろうか。オレは後者であることを祈るばかりだった》
☆sideシン
オレとリンは、どちらからも話しかけることなく進んでいく。数回、変装で二階に到着し、階段の閉鎖を片手間で終わらせる。
ガララ…ズンッ!!
さらに適当なコンセントに『雷』を使う。
バチシューー!
それだけでショートを起こす。
電気回路に流れているのがアピスのものだったとしても、回路を強化するのは難しい。さすがに回路ごと壊せば電気は使えないはずだ。
<まぁ、多少は対策してるだろうな>
二階に繋がる通路及びエレベーターを使用不可にできた。これで一階の警備員が来れない。
〔こっからが本番だぞ〕
リンは変装を解いて、動きやすい服装に変える。二階に警備員はいない。オレは眼の前のそれを睨みつける。
[ようこそ侵入者! 楽しんでくれ給え]
次の部屋のドアに嫌味ったらしいフォントでそんなことが書かれている。アピスが用意した悪趣味な代物だ。霊達が先行してくれたが、光がないと眼が使えないように、擬似的に肉体を再現している霊体もまた光を必要とする。
即ち、完全な闇において霊は盲目
この階はブラックボックスな部分がそこそこある。オレには、事前に知る術がないわけではないが、今、使うことはない。
「行こ」
軽い準備運動も済ませ、リンは悠然とドアを開ける。暗かった部屋に明かりが点く。
[クイズだ]
タブレットとドア。それくらいしかこの場にはない。
〔鍵がかかってるみたいだな。暗証番号式の…〕
壊してしまおうかなと思案し始めた頃には、その鍵から音がした。
カチャリ
「終わった」
[全問クリア]
と表示されたタブレットをオレに見せる。
「行こ」
オレは反応することもできずに、進むリンの背中を見守る。
「私の何倍も頭良いね…」
驚嘆したのはオレだけでなく、ルコもかなり驚いていた。少し誇らしげにケイトがリンについていく。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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