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第3章 ~よう
別れ③
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――sideグルバン
わしはこれまで暗殺の命令を下したことがあった。アイナを殺したのも、わしがケイトの顔で生きているのを許さないという、全て自己中心的判断をしてしまった。アイナは数ある犠牲者の一人にすぎない。
<わしは自分が綺麗な人間だなんぞ1ミリも思ってない…。が、こいつには地獄まで付き合ってもらおう>
妖精へ指示を送る。この覚悟を伝播させるがために声を大にして、妖精たちの心に訴えかける。
<【水】よ!圧縮し、アピスの胸を穿て>
「……」
アピスは何も言わない。妖精が動くことはなかった。わし自身の声も部屋に響かないことが分かった。
<く…そ>
「やっぱり、使いこなせちゃいないんだろ?さあ、打ち止めだ。あんたの役割は終わった。妨害も入らなければ、手負いのガキなんざ造作もない」
<頼む。力を貸してくれ!ここで何もできなかったら地獄にも行けない>
わしの熱い復讐心とは裏腹に全て終わったような空虚感だけが部屋にあった。アピスは窓からスナイパーライフルのようなもので狙いを定めていた。
<終わる…っ!>
「【融解】」
大好きな声だったからこそ、反射的に振り向く。
「悪いけど、ケイトじゃないわ」
ルコだ。彼女が手伝ってくれるのが、非常に嬉しかったんだろう。わしは口角を挙げる。
「邪魔しないでくれよ。老害と無能が」
やつは使い物にならないスナイパーライフルだったものを放り投げて煽る。わしは無視して、ルコに話を持ち掛ける。
「共闘願おう」
「【土】【雷】【風】【水】なら使えるでしょ?」
事務的な対応だった。それはあくまで利害が一致しているが故の一時的停戦のように見えた。
「あ…あぁ」
<嫌われても仕方ないか。全てわしの不始末>
「私の背中。任せるから」
「あ…あぁ」
涙が滲む。
<あぁ、霊でも涙が出るんだなぁ……>
他人事のようにそう思った。
「く、ははははは!背中?お前らに背中なんて関係ないだろ?攻撃当たらないからいいよな?いや、代償がないなんて…そうないよな?つまり、お前らはここで何もできなければ無念に散るそんな存在なんだろ?」
「これでも?」
ルコは意外なことに可視化した。【光】でも使ったのだろう。
「だから何?見えるようになったって霊は霊。所詮、人間様より関渉できない哀れなそんざぃ」
パン!
「ずっと……。あんたの顔、殴りたかったのよ」
アピスの下へずかずかと歩み寄って容赦なく顔面を殴る。清々しい笑みはたっぷりの恨みを威圧として纏っていた。
「【風】か…子供の腕力の方があるだr!」
ギュインギュインギュイン!!
「子供より弱い腕力なら心置きなく当たってくれるんじゃなかったの?」
ルコは小さな竜巻のような攻撃をあらゆる角度から打ち込む。霊のせいで多少精度がおちるのか、ルコが劣勢に思える。アピスが元から強いのだろうか。
「ここ!」
キュインキュイン……。
ルコの擬似的な拳はアピスの掌に収まる。
「残念。忘れたのか?俺は【風】も使えるんだぞ」
「…知ってる」
ルコはアピスの顔面をあえて狙った。それはこの時のための印象を植え付けるためだ。
はらりはらり……。
アピスの纏う服が切れる。誰も得しないアピスの裸が露わになる。この瞬間こそ、わしらの計画じゃった。
「まずぃ」
アピスは慌てて横に転がろうとするが、計算済みだ。わしはアピスの背後から、焔の槍で一突きする。槍は形を変えてアピスの身体に纏わりつく。
<計算通り>
わしだけでなくルコもそう思ったのだろう。だが、アピスは……――
わしはこれまで暗殺の命令を下したことがあった。アイナを殺したのも、わしがケイトの顔で生きているのを許さないという、全て自己中心的判断をしてしまった。アイナは数ある犠牲者の一人にすぎない。
<わしは自分が綺麗な人間だなんぞ1ミリも思ってない…。が、こいつには地獄まで付き合ってもらおう>
妖精へ指示を送る。この覚悟を伝播させるがために声を大にして、妖精たちの心に訴えかける。
<【水】よ!圧縮し、アピスの胸を穿て>
「……」
アピスは何も言わない。妖精が動くことはなかった。わし自身の声も部屋に響かないことが分かった。
<く…そ>
「やっぱり、使いこなせちゃいないんだろ?さあ、打ち止めだ。あんたの役割は終わった。妨害も入らなければ、手負いのガキなんざ造作もない」
<頼む。力を貸してくれ!ここで何もできなかったら地獄にも行けない>
わしの熱い復讐心とは裏腹に全て終わったような空虚感だけが部屋にあった。アピスは窓からスナイパーライフルのようなもので狙いを定めていた。
<終わる…っ!>
「【融解】」
大好きな声だったからこそ、反射的に振り向く。
「悪いけど、ケイトじゃないわ」
ルコだ。彼女が手伝ってくれるのが、非常に嬉しかったんだろう。わしは口角を挙げる。
「邪魔しないでくれよ。老害と無能が」
やつは使い物にならないスナイパーライフルだったものを放り投げて煽る。わしは無視して、ルコに話を持ち掛ける。
「共闘願おう」
「【土】【雷】【風】【水】なら使えるでしょ?」
事務的な対応だった。それはあくまで利害が一致しているが故の一時的停戦のように見えた。
「あ…あぁ」
<嫌われても仕方ないか。全てわしの不始末>
「私の背中。任せるから」
「あ…あぁ」
涙が滲む。
<あぁ、霊でも涙が出るんだなぁ……>
他人事のようにそう思った。
「く、ははははは!背中?お前らに背中なんて関係ないだろ?攻撃当たらないからいいよな?いや、代償がないなんて…そうないよな?つまり、お前らはここで何もできなければ無念に散るそんな存在なんだろ?」
「これでも?」
ルコは意外なことに可視化した。【光】でも使ったのだろう。
「だから何?見えるようになったって霊は霊。所詮、人間様より関渉できない哀れなそんざぃ」
パン!
「ずっと……。あんたの顔、殴りたかったのよ」
アピスの下へずかずかと歩み寄って容赦なく顔面を殴る。清々しい笑みはたっぷりの恨みを威圧として纏っていた。
「【風】か…子供の腕力の方があるだr!」
ギュインギュインギュイン!!
「子供より弱い腕力なら心置きなく当たってくれるんじゃなかったの?」
ルコは小さな竜巻のような攻撃をあらゆる角度から打ち込む。霊のせいで多少精度がおちるのか、ルコが劣勢に思える。アピスが元から強いのだろうか。
「ここ!」
キュインキュイン……。
ルコの擬似的な拳はアピスの掌に収まる。
「残念。忘れたのか?俺は【風】も使えるんだぞ」
「…知ってる」
ルコはアピスの顔面をあえて狙った。それはこの時のための印象を植え付けるためだ。
はらりはらり……。
アピスの纏う服が切れる。誰も得しないアピスの裸が露わになる。この瞬間こそ、わしらの計画じゃった。
「まずぃ」
アピスは慌てて横に転がろうとするが、計算済みだ。わしはアピスの背後から、焔の槍で一突きする。槍は形を変えてアピスの身体に纏わりつく。
<計算通り>
わしだけでなくルコもそう思ったのだろう。だが、アピスは……――
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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