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第3章 ~よう
確かめ③
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――sideメハ
私が作った、ほぼ意味がないカード。勝つカードとは言えない。ただのカードゲームだと飽きてしまいかねないからこそ、加えたカード。
代り映えのある毎日を送らせたい。
そんな想いから作られた結果、その日によって出る効果が違う。そのレベルで細分化されているのだ。フィールドから電脳世界までの色を変化させる。色の変化だけで1億はある。風景と香りを混ぜて5億。音楽を使ったものが3億の確率で。他にも罰ゲーム系4000万、執事さんにちょっとしたイタズラをする600万と、兎に角戦う気がないのだ。そんな中、唯一、魔法カードの効果らしい効果がある。約10億分の1の確率で追加2ターン得ることができる。
<一回しか出たことないけどね>
初めて、[the best]をリンとやった時に、よりにもよってソレが出て「しまった」と心の底から思った。
《フーッ》
僅かに口角を上げて、ほんの少し鼻息を荒くした。ただそれだけだった。聞き逃してしまってもおかしくないような微妙な変化で、当の本人もケロッとしてるから、困ったものだった。あの時、私は初めて涙を流した。認めて貰えた気がしたからだろう。それからなんだかんだで今日まで[the best]を気に入ってくれたから本当に良かった。
……その目が出た。
抽選結果:2ターン追加
「出ちゃった……」
わいわい楽しめたら良かっただけの私にとって予想外だった。確率としてはあっても感覚的にないに等しかったから、油断していたという感覚に近い。
「続けて」
リンはまるで想定してたかのように動じない。AIと人間のリアクションが逆に思えてしまうが、仕方ない。これがリンの個性だ。次のターンになり、カードを引く。眉がぴくっと動いてしまう。引いたのは魔法カード[スパイの鎖]一筋縄ではいかないカードである。
「…[戦車]、進軍」
手札を見る。三枚だ。[スパイの鎖]と[記憶喪失]、[科学兵器]全て魔法カード。魔法は発動で1ターンに一回だけ。相手のターン中にも発動できるが、リンにその様子はない。
<先に仕込もう…>
「…魔法[敵に塩を送る]で[塵も積もれば]を敵の前衛に」
発動した魔法カードは[スパイの鎖]。プレイヤーの宣言とカードが一致しないことがある。これはわざと、だ。表向きは相手に兵をあげているが、スパイを送り込みたいからこその嘘である。常に相手がどこでどんな嘘をついているか見極めなければならない。
「次のターン行くね…」
だが、まだ終わらない。カードを引き、攻撃を仕掛ける。そのことだけを考えていた。このデッキの肝となる[怨霊]が来てしまったのだ。
「……」
普通なら喜んでいた。いや、タイミングは最高だ。良すぎる。
「…[戦車]で[巫女]破壊」
[戦車]の現在の位置は自陣の前衛。だが、届いてしまう。相手の後衛まで。
「[戦場での慈愛]」
[巫女]が墓地に送られると複数の効果から一つを選び発動する。魔法の無効化、味方デバフ無効、国王暗殺の伏兵。
pig効果があるから、罪悪感が少なくていい。
頬が緩む。リンは勝負事でブースカ拗ねることなんてない。分かっていても、除去は辛い。折角の好きで強いカードだと尚更。どことなく漂う嫌な空気の中にお気に入りの蕾を見つけたようなものだ――
私が作った、ほぼ意味がないカード。勝つカードとは言えない。ただのカードゲームだと飽きてしまいかねないからこそ、加えたカード。
代り映えのある毎日を送らせたい。
そんな想いから作られた結果、その日によって出る効果が違う。そのレベルで細分化されているのだ。フィールドから電脳世界までの色を変化させる。色の変化だけで1億はある。風景と香りを混ぜて5億。音楽を使ったものが3億の確率で。他にも罰ゲーム系4000万、執事さんにちょっとしたイタズラをする600万と、兎に角戦う気がないのだ。そんな中、唯一、魔法カードの効果らしい効果がある。約10億分の1の確率で追加2ターン得ることができる。
<一回しか出たことないけどね>
初めて、[the best]をリンとやった時に、よりにもよってソレが出て「しまった」と心の底から思った。
《フーッ》
僅かに口角を上げて、ほんの少し鼻息を荒くした。ただそれだけだった。聞き逃してしまってもおかしくないような微妙な変化で、当の本人もケロッとしてるから、困ったものだった。あの時、私は初めて涙を流した。認めて貰えた気がしたからだろう。それからなんだかんだで今日まで[the best]を気に入ってくれたから本当に良かった。
……その目が出た。
抽選結果:2ターン追加
「出ちゃった……」
わいわい楽しめたら良かっただけの私にとって予想外だった。確率としてはあっても感覚的にないに等しかったから、油断していたという感覚に近い。
「続けて」
リンはまるで想定してたかのように動じない。AIと人間のリアクションが逆に思えてしまうが、仕方ない。これがリンの個性だ。次のターンになり、カードを引く。眉がぴくっと動いてしまう。引いたのは魔法カード[スパイの鎖]一筋縄ではいかないカードである。
「…[戦車]、進軍」
手札を見る。三枚だ。[スパイの鎖]と[記憶喪失]、[科学兵器]全て魔法カード。魔法は発動で1ターンに一回だけ。相手のターン中にも発動できるが、リンにその様子はない。
<先に仕込もう…>
「…魔法[敵に塩を送る]で[塵も積もれば]を敵の前衛に」
発動した魔法カードは[スパイの鎖]。プレイヤーの宣言とカードが一致しないことがある。これはわざと、だ。表向きは相手に兵をあげているが、スパイを送り込みたいからこその嘘である。常に相手がどこでどんな嘘をついているか見極めなければならない。
「次のターン行くね…」
だが、まだ終わらない。カードを引き、攻撃を仕掛ける。そのことだけを考えていた。このデッキの肝となる[怨霊]が来てしまったのだ。
「……」
普通なら喜んでいた。いや、タイミングは最高だ。良すぎる。
「…[戦車]で[巫女]破壊」
[戦車]の現在の位置は自陣の前衛。だが、届いてしまう。相手の後衛まで。
「[戦場での慈愛]」
[巫女]が墓地に送られると複数の効果から一つを選び発動する。魔法の無効化、味方デバフ無効、国王暗殺の伏兵。
pig効果があるから、罪悪感が少なくていい。
頬が緩む。リンは勝負事でブースカ拗ねることなんてない。分かっていても、除去は辛い。折角の好きで強いカードだと尚更。どことなく漂う嫌な空気の中にお気に入りの蕾を見つけたようなものだ――
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