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第3章 ~よう
起動し②
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☆sideシン
アピスはグルバンの記憶を所持していた。オレたちがここにくるのも分かっていただろう。しかし、泣きじゃくるグルバン以外に目に見えた異常はない。考えるのをやめるな…。
<オレがヤツだったらどうする……?リンを殺す?いや、メリットが思いつかないし、何と言っても、それ以上にその場を活用しそう。リンを虐めてオレらと交渉?何を求めている?国王宣言などを見るにやはり、権力と異能の独占か?そう仮定すると、どうやって交渉する?……>
長考で分かったことは、特にない。嫌な予感が未だに拭えない…。
〔グルバン。オレはまだ嫌な予感が拭えない…。リンの世界にログインしてくる〕
「………あぁ、そっちは頼む。だが、わしはもしもこの部屋に不審者が来ても」
〔それには考えがある〕
――sideメハ
私は思いつめていた。
<これでいいのかな?いや、これしかない。リンを守らなきゃ>
「メハ…大丈夫?」
「…なんでもないよ。さぁこっちだよ」
リンに心配された。余裕を持たなきゃ。ここなら安全だから、大事なのは、あいつが来てから、そして、リンにアレさえこなければ……。
「着いたよ」
実際ここは私の世界だから、私たちは動かなくても目の前に誕生させることもできるのだが、リンはこっちの方が好きだから。
「わーー!」
棒読みに聞こえるその声は、歓喜と興奮を滲ませているのを知っていた。リンは比較的何も感じはしないが、心が揺さぶられないわけではない。誕生日限定でリンの好きなものを集結させ、私なりにアレンジしたテーマパークを作っていた。これならリンも気に入ってくれると確信して……。
「メハ。一緒いこ」
生きたいのは山々だったが、さっそく来客だ…。
「あぁ…っと、ごめんねリン。ちょっと先に遊ぶ順番決めてて」
「…わかった」
悲し気なリンに背を向ける。
「すぐ戻るから」
「うん」
今思えば、あの時の私はいっぱいいっぱいだったんだと思う。リンの含みのありそうな「うん」の裏を考えることすらできなかった。
私は侵入してきたあいつを睨む。
「帰って」
〔ったく、開口一番がそれかよ〕
「あんたが神だかなんだかしらないけど、要は怪物じゃない。自分のことしか見えなくて、傲慢で、最強の生物。それが人の姿して、なんて言おうが心配して当然でしょ!!」
〔危害を加える気がないのはわかるだろ?〕
「わからないじゃない。龍ならちょっとくしゃみをしただけで、呼吸をするだけで、リンが死ぬかもしれないでしょ?」
〔リンが見える霊は友達でもいいのに、神はだめなのか?〕
「霊はリンに関渉できない!」
〔悪霊やポルターガイストみたくおとなしくない奴が来たらどうする気だ?〕
「リンが本質を見破るから害をなす前に逃げればいいでしょ!」
〔リンはオレを危険視したか?〕
「……」
一番痛いところを突かれた。リンを信じていればいるほど、こいつは限りなく白になる。
「…リンが見えてる世界と私が見てる世界は違う。あの子はあんたと組んで死ぬ未来を見越していたとしても首を縦に振る!そうでしょ!?」
〔…何か、あったのか?〕
私はそれが「オレを疑う証拠があるのか?」とも「君は何かされたのか?」にも聞こえた。
「私はっ!」
寒気がした。何かが起こった。神は両目を見開く。リンのなんとなく全体を見つつ核心をつく知覚とは違って、すべてを覗き見る圧倒的強者と相対したようなものだった。私がどう抵抗しても知ってることも知らないことも抜き取られる感覚……。
〔なんだ〕
その一言で空気が弛緩する。さっきまでは私に敵意を滲ませていたが、無邪気に笑うのだ。強者が弱者の装備を見て、これじゃオレを倒せないと確信したような表情に近い。
〔知っただけか〕
私への見下しを頭がやっと理解する。
「どういう意味よ」
〔気を悪くしたなら謝る。なんかされたんじゃないかって疑っちまってな。動機が分かったから安心した〕
こうやって、私の抵抗できない範疇で物事が進んでいくんだから…溜まったもんじゃない。
アピスはグルバンの記憶を所持していた。オレたちがここにくるのも分かっていただろう。しかし、泣きじゃくるグルバン以外に目に見えた異常はない。考えるのをやめるな…。
<オレがヤツだったらどうする……?リンを殺す?いや、メリットが思いつかないし、何と言っても、それ以上にその場を活用しそう。リンを虐めてオレらと交渉?何を求めている?国王宣言などを見るにやはり、権力と異能の独占か?そう仮定すると、どうやって交渉する?……>
長考で分かったことは、特にない。嫌な予感が未だに拭えない…。
〔グルバン。オレはまだ嫌な予感が拭えない…。リンの世界にログインしてくる〕
「………あぁ、そっちは頼む。だが、わしはもしもこの部屋に不審者が来ても」
〔それには考えがある〕
――sideメハ
私は思いつめていた。
<これでいいのかな?いや、これしかない。リンを守らなきゃ>
「メハ…大丈夫?」
「…なんでもないよ。さぁこっちだよ」
リンに心配された。余裕を持たなきゃ。ここなら安全だから、大事なのは、あいつが来てから、そして、リンにアレさえこなければ……。
「着いたよ」
実際ここは私の世界だから、私たちは動かなくても目の前に誕生させることもできるのだが、リンはこっちの方が好きだから。
「わーー!」
棒読みに聞こえるその声は、歓喜と興奮を滲ませているのを知っていた。リンは比較的何も感じはしないが、心が揺さぶられないわけではない。誕生日限定でリンの好きなものを集結させ、私なりにアレンジしたテーマパークを作っていた。これならリンも気に入ってくれると確信して……。
「メハ。一緒いこ」
生きたいのは山々だったが、さっそく来客だ…。
「あぁ…っと、ごめんねリン。ちょっと先に遊ぶ順番決めてて」
「…わかった」
悲し気なリンに背を向ける。
「すぐ戻るから」
「うん」
今思えば、あの時の私はいっぱいいっぱいだったんだと思う。リンの含みのありそうな「うん」の裏を考えることすらできなかった。
私は侵入してきたあいつを睨む。
「帰って」
〔ったく、開口一番がそれかよ〕
「あんたが神だかなんだかしらないけど、要は怪物じゃない。自分のことしか見えなくて、傲慢で、最強の生物。それが人の姿して、なんて言おうが心配して当然でしょ!!」
〔危害を加える気がないのはわかるだろ?〕
「わからないじゃない。龍ならちょっとくしゃみをしただけで、呼吸をするだけで、リンが死ぬかもしれないでしょ?」
〔リンが見える霊は友達でもいいのに、神はだめなのか?〕
「霊はリンに関渉できない!」
〔悪霊やポルターガイストみたくおとなしくない奴が来たらどうする気だ?〕
「リンが本質を見破るから害をなす前に逃げればいいでしょ!」
〔リンはオレを危険視したか?〕
「……」
一番痛いところを突かれた。リンを信じていればいるほど、こいつは限りなく白になる。
「…リンが見えてる世界と私が見てる世界は違う。あの子はあんたと組んで死ぬ未来を見越していたとしても首を縦に振る!そうでしょ!?」
〔…何か、あったのか?〕
私はそれが「オレを疑う証拠があるのか?」とも「君は何かされたのか?」にも聞こえた。
「私はっ!」
寒気がした。何かが起こった。神は両目を見開く。リンのなんとなく全体を見つつ核心をつく知覚とは違って、すべてを覗き見る圧倒的強者と相対したようなものだった。私がどう抵抗しても知ってることも知らないことも抜き取られる感覚……。
〔なんだ〕
その一言で空気が弛緩する。さっきまでは私に敵意を滲ませていたが、無邪気に笑うのだ。強者が弱者の装備を見て、これじゃオレを倒せないと確信したような表情に近い。
〔知っただけか〕
私への見下しを頭がやっと理解する。
「どういう意味よ」
〔気を悪くしたなら謝る。なんかされたんじゃないかって疑っちまってな。動機が分かったから安心した〕
こうやって、私の抵抗できない範疇で物事が進んでいくんだから…溜まったもんじゃない。
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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