22 / 136
第3章 ~よう
ご機嫌②
しおりを挟む
☆sideシン
リンから見せられた景色を思い返す。龍児やソウのように視える人間の視界だった。だが、その2人の精度、性能ともに上位互換と言える。
異能なしで、ここまで至っている。
視覚情報より死角がなく、質量や密度など、この世の真理が見えているかに錯覚しそうなレベルの芸当である。『流眼』は流れを見ていたが、リンは妖精どころか死者の魂すら…捉えている。リンの周りにはAI以外にも妖精や子どもの霊が抱きついていた。みんなから愛されているのだろうと察せられる。
〔……〕
「……」
「え?なに?どうしたの?」
現在に思考が追いついて確信する。
<心も、記憶も視えるのか…>
それは超能力と俗に言われるレベルの範疇を超えている。世の中に出回る超能力者は言ってしまえば、一般人に怪我生えた程度で少し充実した生活が送れる。魔女狩りのようなレアなケースもあるが、世渡りをきちんとすれば一般人の上位互換とも言えてしまう。
その範疇に収まっていないのである。
言わば、やろうと思えば個人の域を超えて、市場を、国を、世界を手中に収める可能性があるのだ。なにより、リンの理性が充実していた。霊や妖精に好かれているのが最たる例だ。だからこそ、惜しい。
<これほどの才能があればアピスすら凌駕できる可能性が……>
「神様…なんでしょ」
それはあまりにも平坦で、淡々としてるが故に現実味を伴っていなかった。こちらの考えを全て見通しているかのような聡い表情は底知れなさよりも、オレは納得した。この能力があるからこの人格があり、この人格だからこの能力を得たことを。
「リン…?なにを言って」
〔あぁ、そうだよ〕
「わたしが…やればいいの?」
「リン?」
オレもAI同様に驚きが隠せなかった。が、その真意を察して言葉を返す。
〔本当にやりたいのかい?〕
「すべきでしょ?」
その言葉は声色よりずっと重い意味が滲み出ていた。しなきゃいけないからするのだと。しかし、一切嫌味はなく、そうなることを知っていたかのような覚悟すらあったのだ。運命を受け入れる。達観にも近い感性は子供らしくない。だからこそ、オレは決心する。
「リンやめt」
〔やらせない〕
「…どうして?」
〔今のリンは、条件を満たしていない……〕
「ん?分かんない」
〔もっと成長したら、考えるかもな。まぁ、強制はしないし、されてもいけない〕
この子は現状を把握して、その上で誰かが神子となって立ち上がらなければならないこともわかっていた。しなければならないからするなんて、大人がすべきなのに、だ……。合理性や効率で考えるなら、この子と共にアピスを倒すべきではある。それは状況がよく見えてるが故に責任を感じているのかもしれない。でも、過去を知っているが故にオレらの業で苦しめてはいけないんだ。オレがそこまで関わらなければアピスに害されることもないはずなんだ。
「そっか…」
少しだけ表情を曇らせるだけで、さほど驚いている様子がない。受け入れてしまうのだ。リンの人生がその感性を作ってしまったのだろう。
コンコンコン
扉がノックされた。
リンから見せられた景色を思い返す。龍児やソウのように視える人間の視界だった。だが、その2人の精度、性能ともに上位互換と言える。
異能なしで、ここまで至っている。
視覚情報より死角がなく、質量や密度など、この世の真理が見えているかに錯覚しそうなレベルの芸当である。『流眼』は流れを見ていたが、リンは妖精どころか死者の魂すら…捉えている。リンの周りにはAI以外にも妖精や子どもの霊が抱きついていた。みんなから愛されているのだろうと察せられる。
〔……〕
「……」
「え?なに?どうしたの?」
現在に思考が追いついて確信する。
<心も、記憶も視えるのか…>
それは超能力と俗に言われるレベルの範疇を超えている。世の中に出回る超能力者は言ってしまえば、一般人に怪我生えた程度で少し充実した生活が送れる。魔女狩りのようなレアなケースもあるが、世渡りをきちんとすれば一般人の上位互換とも言えてしまう。
その範疇に収まっていないのである。
言わば、やろうと思えば個人の域を超えて、市場を、国を、世界を手中に収める可能性があるのだ。なにより、リンの理性が充実していた。霊や妖精に好かれているのが最たる例だ。だからこそ、惜しい。
<これほどの才能があればアピスすら凌駕できる可能性が……>
「神様…なんでしょ」
それはあまりにも平坦で、淡々としてるが故に現実味を伴っていなかった。こちらの考えを全て見通しているかのような聡い表情は底知れなさよりも、オレは納得した。この能力があるからこの人格があり、この人格だからこの能力を得たことを。
「リン…?なにを言って」
〔あぁ、そうだよ〕
「わたしが…やればいいの?」
「リン?」
オレもAI同様に驚きが隠せなかった。が、その真意を察して言葉を返す。
〔本当にやりたいのかい?〕
「すべきでしょ?」
その言葉は声色よりずっと重い意味が滲み出ていた。しなきゃいけないからするのだと。しかし、一切嫌味はなく、そうなることを知っていたかのような覚悟すらあったのだ。運命を受け入れる。達観にも近い感性は子供らしくない。だからこそ、オレは決心する。
「リンやめt」
〔やらせない〕
「…どうして?」
〔今のリンは、条件を満たしていない……〕
「ん?分かんない」
〔もっと成長したら、考えるかもな。まぁ、強制はしないし、されてもいけない〕
この子は現状を把握して、その上で誰かが神子となって立ち上がらなければならないこともわかっていた。しなければならないからするなんて、大人がすべきなのに、だ……。合理性や効率で考えるなら、この子と共にアピスを倒すべきではある。それは状況がよく見えてるが故に責任を感じているのかもしれない。でも、過去を知っているが故にオレらの業で苦しめてはいけないんだ。オレがそこまで関わらなければアピスに害されることもないはずなんだ。
「そっか…」
少しだけ表情を曇らせるだけで、さほど驚いている様子がない。受け入れてしまうのだ。リンの人生がその感性を作ってしまったのだろう。
コンコンコン
扉がノックされた。
0
~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる
戌葉
ファンタジー
子育てが終わりこれからは自分の時間を楽しもうと思っていたある日、目の前で地面へと吸い込まれていく女子高生を助けようとして、自分も吸い込まれてしまった。
え?異世界?この子が聖女?
ちょっと、聖女ちゃんは普通の女の子なのよ?四六時中監視してたら聖女ちゃんの気が休まらないでしょう。部屋から出なさい!この国、いまいち信用できないわね。
でも、せっかく異世界に来たなら、新しいことに挑戦したい。まずは冒険者ね!
聖女召喚に巻き込まれたおばちゃんが、聖女ちゃんの世話を焼いたり、冒険者になってみたりする話。
理不尽に振り回される騎士様の話も。
「悪役令嬢と私の婚約破棄」と同じ世界です。

愛し子
水姫
ファンタジー
アリスティア王国のアレル公爵家にはリリアという公爵令嬢がいた。
彼女は神様の愛し子であった。
彼女が12歳を迎えたとき物語が動き出す。
初めて書きます。お手柔らかにお願いします。
アドバイスや、感想を貰えると嬉しいです。
沢山の方に読んで頂けて嬉しく思います。
感謝の気持ちを込めまして番外編を検討しています。
皆様のリクエストお待ちしております。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる