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第3章 ~よう
心がか
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☆sideシン
『エンターテイナー』が開いた扉の先には、階段が広がっていた。
〔これは…〕
見覚えがあった。
<電波塔…>
メハを探してアピスとカード対決をする前に駆け上がった階段に酷似していた。
「そう。何を隠そう精神攻撃のために作られた階段だ」
「あ??」
ルピカが顔を顰めて『エンターテイナー』にガンを飛ばす。
「落ち着けって!見りゃわかるだろ??シン用だ」
言われずとも分かり切っていた。だが、これは電波塔で失敗していれば、恐怖の象徴になり得る。作ったやつは天才だ。天才的に性格が悪い。ふと『エンターテイナー』に目がいく、なぜか驚いていた。その視線の先は…
「誰も、恨んでなんかない」
リンだった。…真っ直ぐとそう言って………
飛ぶ
20段ほど飛ばして、音を立てずに着地し振り向く。
「早く行こ」
〔…あぁ〕
ルピカを異能で持ち上げながら、3回ほどリンが跳んで次の扉が現れる。ずっと暗い階段だったからこそ、その巨大で無機質な扉に気圧されるような造り。円柱の側面としか言いようのない形状だが、鍵の厳重さにかける費用と技術から、個人の規模じゃないことを暗に言っている。
「開けたぞ~」
「開けるよ?」
「どーぞどーぞ」
「わ、私が!」
『エンターテイナー』が解錠し、ルピカがリンの代わりに扉を開ける。
ズズズ………
重苦しいハズだが、リンがこっそり異能で補助をしているので、楽に開けられている。
ザザァ…ピィーーォォオオ……
「も、森……?!」
そこは……辺り一面、緑。外かと疑うほどの明るさに、太陽のようなモノまである。忍び寄る影も、せせら笑うような音も、隙がないかと伺っていた。唸り声や敵意が渦巻き、巨大なジャングルは、彼らのものだ。
「ようこそ。ジャングルエリアへ!」
『エンターテイナー』は自身の異能で浮かび上がって、両手を広げる。それはもう、芝居のかかった臭い語りと動きで意志表示してくる。
「そう!ここは大自然の、始まりを模したjungle!野生が満ち、弱肉強食の中で牙を剥く食人植物に、鉄をも貪食する猛獣、エトセトラ……。空を見渡せば猛禽類が織りなす、イカロスへの無慈悲な殺意が跋扈する。湿度が少しでもあれば蟲や爬虫類がいかなる隙をも見逃さない。忘れちゃいけない、暗闇はあいつらのテリトリーだぁ!!常に警戒し」
「長いよ…」
「これだけ言わせて!オホン…小さな生物もが油断ならないこの世界で、さぁどう突破せしめる」
「…お前…言いたいだけだろ」
「あぁ!!そのために生きてるまである」
満足気に息を整える『エンターテイナー』にはやはり悪意がなかった。リンは気にせず足を進める。
「素足晒しちまうと危険だz」
「大丈夫。…ルピカ」
「はい、なんでしょ…??」
リンがルピカに抱き着く。オレは理解する。匂いを付けているのだろう。動物であれば、匂いは仲間を意味したり、縄張りだったりする。ルピカもおそらく分かっているが、突然の抱擁にテンパっている。
「よし」
「……一言…先に下さい…」
「ごめん」
ルピカは凄く何とも言えないように目をつぶっている。潔いごめんがリンらしい。そして、リンは改めて歩み出す。今度はさっきより明確に肌身で感じる。相互不干渉の呼びかけ。圧倒的強者からの各個体へ向けたメッセージは的確に伝わる。
「な…」
草木は道を造り、棘のある植物は角を丸くした。プライドのないものは逃げ出し、あるものはひれ伏す。リンの質を前に、ジャングルの支配階級が変わる。
ヒュヒュン!パシッ!
それは植物的な形状にも関わらず、明らかに知性と悪意を携えた攻撃。捕縛であった。リンは両足首、ルピカは手首と足首全部だ。
「…ぃてて…」
ルピカは情けなく声を出す。本人は我慢したようだが、痛み覚えやすいような植物なのだろう。
「…ばいばい」
シュルルルン…
ルピカの手足に絡みついた植物が、離れる。異能だ。
「…ありがとうございます!」
「へーーどうやったんだ?」
「栄養上げたの」
「悪い?」
「ううん。満腹になったら、離してくれる」
シュルン…
「ね?」
「なるほどね。別のが来たよ」
百獣の王とも謳われるライオンが悠々と現れる。
『エンターテイナー』が開いた扉の先には、階段が広がっていた。
〔これは…〕
見覚えがあった。
<電波塔…>
メハを探してアピスとカード対決をする前に駆け上がった階段に酷似していた。
「そう。何を隠そう精神攻撃のために作られた階段だ」
「あ??」
ルピカが顔を顰めて『エンターテイナー』にガンを飛ばす。
「落ち着けって!見りゃわかるだろ??シン用だ」
言われずとも分かり切っていた。だが、これは電波塔で失敗していれば、恐怖の象徴になり得る。作ったやつは天才だ。天才的に性格が悪い。ふと『エンターテイナー』に目がいく、なぜか驚いていた。その視線の先は…
「誰も、恨んでなんかない」
リンだった。…真っ直ぐとそう言って………
飛ぶ
20段ほど飛ばして、音を立てずに着地し振り向く。
「早く行こ」
〔…あぁ〕
ルピカを異能で持ち上げながら、3回ほどリンが跳んで次の扉が現れる。ずっと暗い階段だったからこそ、その巨大で無機質な扉に気圧されるような造り。円柱の側面としか言いようのない形状だが、鍵の厳重さにかける費用と技術から、個人の規模じゃないことを暗に言っている。
「開けたぞ~」
「開けるよ?」
「どーぞどーぞ」
「わ、私が!」
『エンターテイナー』が解錠し、ルピカがリンの代わりに扉を開ける。
ズズズ………
重苦しいハズだが、リンがこっそり異能で補助をしているので、楽に開けられている。
ザザァ…ピィーーォォオオ……
「も、森……?!」
そこは……辺り一面、緑。外かと疑うほどの明るさに、太陽のようなモノまである。忍び寄る影も、せせら笑うような音も、隙がないかと伺っていた。唸り声や敵意が渦巻き、巨大なジャングルは、彼らのものだ。
「ようこそ。ジャングルエリアへ!」
『エンターテイナー』は自身の異能で浮かび上がって、両手を広げる。それはもう、芝居のかかった臭い語りと動きで意志表示してくる。
「そう!ここは大自然の、始まりを模したjungle!野生が満ち、弱肉強食の中で牙を剥く食人植物に、鉄をも貪食する猛獣、エトセトラ……。空を見渡せば猛禽類が織りなす、イカロスへの無慈悲な殺意が跋扈する。湿度が少しでもあれば蟲や爬虫類がいかなる隙をも見逃さない。忘れちゃいけない、暗闇はあいつらのテリトリーだぁ!!常に警戒し」
「長いよ…」
「これだけ言わせて!オホン…小さな生物もが油断ならないこの世界で、さぁどう突破せしめる」
「…お前…言いたいだけだろ」
「あぁ!!そのために生きてるまである」
満足気に息を整える『エンターテイナー』にはやはり悪意がなかった。リンは気にせず足を進める。
「素足晒しちまうと危険だz」
「大丈夫。…ルピカ」
「はい、なんでしょ…??」
リンがルピカに抱き着く。オレは理解する。匂いを付けているのだろう。動物であれば、匂いは仲間を意味したり、縄張りだったりする。ルピカもおそらく分かっているが、突然の抱擁にテンパっている。
「よし」
「……一言…先に下さい…」
「ごめん」
ルピカは凄く何とも言えないように目をつぶっている。潔いごめんがリンらしい。そして、リンは改めて歩み出す。今度はさっきより明確に肌身で感じる。相互不干渉の呼びかけ。圧倒的強者からの各個体へ向けたメッセージは的確に伝わる。
「な…」
草木は道を造り、棘のある植物は角を丸くした。プライドのないものは逃げ出し、あるものはひれ伏す。リンの質を前に、ジャングルの支配階級が変わる。
ヒュヒュン!パシッ!
それは植物的な形状にも関わらず、明らかに知性と悪意を携えた攻撃。捕縛であった。リンは両足首、ルピカは手首と足首全部だ。
「…ぃてて…」
ルピカは情けなく声を出す。本人は我慢したようだが、痛み覚えやすいような植物なのだろう。
「…ばいばい」
シュルルルン…
ルピカの手足に絡みついた植物が、離れる。異能だ。
「…ありがとうございます!」
「へーーどうやったんだ?」
「栄養上げたの」
「悪い?」
「ううん。満腹になったら、離してくれる」
シュルン…
「ね?」
「なるほどね。別のが来たよ」
百獣の王とも謳われるライオンが悠々と現れる。
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