解放

かひけつ

文字の大きさ
上 下
105 / 136
第3章 ~よう

心がか

しおりを挟む
☆sideシン
『エンターテイナー』が開いた扉の先には、階段が広がっていた。

 〔これは…〕

見覚えがあった。

 <電波塔…>

メハを探してアピスとカード対決をする前に駆け上がった階段に酷似していた。

 「そう。何を隠そう精神攻撃のために作られた階段だ」

 「あ??」

ルピカが顔を顰めて『エンターテイナー』にガンを飛ばす。

 「落ち着けって!見りゃわかるだろ??シン用だ」

言われずとも分かり切っていた。だが、これは電波塔で失敗していれば、恐怖の象徴になり得る。作ったやつは天才だ。天才的に性格が悪い。ふと『エンターテイナー』に目がいく、。その視線の先は…

 「誰も、恨んでなんかない」

リンだった。…真っ直ぐとそう言って………

 飛ぶ

20段ほど飛ばして、音を立てずに着地し振り向く。

 「早く行こ」

 〔…あぁ〕

ルピカを異能で持ち上げながら、3回ほどリンが跳んで次の扉が現れる。ずっと暗い階段だったからこそ、その巨大で無機質な扉に気圧されるような造り。円柱の側面としか言いようのない形状だが、鍵の厳重さにかける費用と技術から、個人の規模じゃないことを暗に言っている。

 「開けたぞ~」

 「開けるよ?」

 「どーぞどーぞ」

 「わ、私が!」

『エンターテイナー』が解錠し、ルピカがリンの代わりに扉を開ける。

ズズズ………

重苦しいハズだが、リンがこっそり異能で補助をしているので、楽に開けられている。

ザザァ…ピィーーォォオオ……

 「も、森……?!」

そこは……辺り一面、緑。外かと疑うほどの明るさに、太陽のようなモノまである。忍び寄る影も、せせら笑うような音も、隙がないかと伺っていた。唸り声や敵意が渦巻き、巨大なジャングルは、彼らのものだ。

 「ようこそ。ジャングルエリアへ!」

『エンターテイナー』は自身の異能で浮かび上がって、両手を広げる。それはもう、芝居のかかった臭い語りと動きで意志表示してくる。

 「そう!ここは大自然の、始まりを模したjungle!野生が満ち、弱肉強食の中で牙を剥く食人植物に、鉄をも貪食する猛獣、エトセトラ……。空を見渡せば猛禽類空中の覇者が織りなす、イカロスへの無慈悲な殺意が跋扈ばっこする。湿度が少しでもあれば蟲や爬虫類森の掃除屋がいかなる隙をも見逃さない。忘れちゃいけない、暗闇はあいつらのテリトリーだぁ!!常に警戒し」

 「長いよ…」

 「これだけ言わせて!オホン…小さな生物もが油断ならないこの世界で、さぁどう突破せしめる」

 「…お前…言いたいだけだろ」

 「あぁ!!そのために生きてるまである」

満足気に息を整える『エンターテイナー』にはやはり悪意がなかった。リンは気にせず足を進める。

 「素足晒しちまうと危険だz」

 「大丈夫。…ルピカ」

 「はい、なんでしょ…??」

リンがルピカに抱き着く。オレは理解する。匂いを付けているのだろう。動物であれば、匂いは仲間を意味したり、縄張りだったりする。ルピカもおそらく分かっているが、突然の抱擁にテンパっている。

 「よし」

 「……一言…先に下さい…」

 「ごめん」

ルピカは凄く何とも言えないように目をつぶっている。潔いごめんがリンらしい。そして、リンは改めて歩み出す。今度はさっきより明確に肌身で感じる。相互不干渉の呼びかけ殺気。圧倒的強者からの各個体へ向けたメッセージは的確に伝わる。

 「な…」

草木は道を造り、棘のある植物は角を丸くした。プライドのないものは逃げ出し、あるものはひれ伏す。リンのを前に、ジャングルの支配階級が変わる。

ヒュヒュン!パシッ!

それは植物的な形状にも関わらず、明らかに知性と悪意を携えた攻撃。捕縛であった。リンは両足首、ルピカは手首と足首全部だ。

 「…ぃてて…」

ルピカは情けなく声を出す。本人は我慢したようだが、痛み覚えやすいような植物なのだろう。

 「…ばいばい」

シュルルルン…

ルピカの手足に絡みついた植物が、離れる。異能だ。

 「…ありがとうございます!」

 「へーーどうやったんだ?」

 「栄養上げたの」

 「悪い?」

 「ううん。満腹になったら、離してくれる」

シュルン…

 「ね?」

 「なるほどね。別のが来たよ」

百獣の王とも謳われるライオンが悠々と現れる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...