97 / 136
第3章 ~よう
ナイ
しおりを挟む
――sideニント(?)
私はただの警察というわけではなかった。実を言うとグルバン様から大事なリン様をお守りするように言いつけられた執事みたいなものだった。命よりも優先すべき仕事であったにも拘らず、危険な目に合わせてしまった。再会しても、気高さは変わらずそこにあった。メハを想って涙すら流していた。リン様には申し訳ないが、神々しさと人間らしい温かみの極致に思えた。
事態は急変した。
アピスの大量発生。リンの仲間と接触するも、アピスの配信は世界を震撼させたと言っても過言ではないほどの力があった。リン様の目覚めで、沈静化に成功したかと思うと、どうやら爆弾を散布され、その対応に苦しんでいた。
<こうして警察に潜入したり、手を尽くしたつもりでも…>
目の前のリン様を手助けする術は持ち合わせていなかった。口を出すべきではないと直感した。騒ぎ立てるモブなんかリン様の雑音になるだけで、メリットになり得ないからだ。だから…唇をわななかせることしか…、と思っていた。
「ここは任せてくれ!!」
「グルバン…さま」
一瞬だった。聞き間違えることはない。グルバン様のお声だった。抵抗する暇もなく、入れ替わるように別の空間に飛ばされる。輪っかのようなナニカを潜った頃には、静かな山頂だった。空気の薄さこそ気にならなかったが、環境の一変、唐突の静けさ、非日常的風景に頭の処理は置いて行かれる。現実味がじわじわ増していく。
<…言えなかった……>
目まぐるしい変化で薄れてしまったが、グルバン様への弔いや謝罪が一切できていないことを忘れたわけじゃない。仕方なくもあったが、このまま言えずにお別れだとしたら…と思い巡らせる。リン様に言伝を頼むだけでも、違うのかもと…
「ねぇ、お父さんなら…そこに」
「…え…?」
「…ゴホン」
聞き覚えのある咳払いだ。ハッキリとは見えないが雰囲気を、息遣いを感じ取る。即座に土下座の体勢に入る。
「申し訳ございませんでした!!」
もはや下手な言い訳など不要。主人との約束を果たせなかったのだ…。首を切られても仕方がない。最大限の謝罪で幾分かの気晴らしにでもなれば…と思っていた。
「君はいつもよく、やってくれたよ」
怒りを通り越してか感情をあまり感じられない声色だ。
「……」
「これまで、ありがとう」
褒められた……??
「ナ、なぜお褒めになるのです!!」
理解不能。怒られることは想定していたが、全くの予想外。感情が高ぶるあまり、つい頭を上げてしまう。グルバン様からの温かみのある言葉が続く。
「ルピカ。わしの代わりに、リンを任せっきりになっていたな…。誠心誠意、下心なく尽くしてくれたことは知っておる…。」
「グルバン様…」
「じゃが、自身の過失によりリンを危険な目に合わせたことは、有罪に値する」
「はいぃ…!!」
再び土下座の姿勢に戻る…。が、涙腺が緩くなってしまう。褒められることを褒められ、𠮟るべきところにはきちんと釘を刺してくれた。
「グルバン様と…リン様に……お仕え出来て本当に良かったです」
「その罪悪感とかはやる気にしたらいいから」
「そうじゃな」
「は…はい…?!」
非常に喜ばしい。それは本当だ。少し、脳裏によぎるのは《これまで、ありがとう》と言われたことだ。ネガティブ思考に突入する前に、覚えのある存在感。ケイト様だ。
「…お疲れ」
〔…っ!早かったな…〕
ケイト様の帰還。アピスを撃退したと察せられるが…、どのようになったかは本人の口からしか分かり得ない――
私はただの警察というわけではなかった。実を言うとグルバン様から大事なリン様をお守りするように言いつけられた執事みたいなものだった。命よりも優先すべき仕事であったにも拘らず、危険な目に合わせてしまった。再会しても、気高さは変わらずそこにあった。メハを想って涙すら流していた。リン様には申し訳ないが、神々しさと人間らしい温かみの極致に思えた。
事態は急変した。
アピスの大量発生。リンの仲間と接触するも、アピスの配信は世界を震撼させたと言っても過言ではないほどの力があった。リン様の目覚めで、沈静化に成功したかと思うと、どうやら爆弾を散布され、その対応に苦しんでいた。
<こうして警察に潜入したり、手を尽くしたつもりでも…>
目の前のリン様を手助けする術は持ち合わせていなかった。口を出すべきではないと直感した。騒ぎ立てるモブなんかリン様の雑音になるだけで、メリットになり得ないからだ。だから…唇をわななかせることしか…、と思っていた。
「ここは任せてくれ!!」
「グルバン…さま」
一瞬だった。聞き間違えることはない。グルバン様のお声だった。抵抗する暇もなく、入れ替わるように別の空間に飛ばされる。輪っかのようなナニカを潜った頃には、静かな山頂だった。空気の薄さこそ気にならなかったが、環境の一変、唐突の静けさ、非日常的風景に頭の処理は置いて行かれる。現実味がじわじわ増していく。
<…言えなかった……>
目まぐるしい変化で薄れてしまったが、グルバン様への弔いや謝罪が一切できていないことを忘れたわけじゃない。仕方なくもあったが、このまま言えずにお別れだとしたら…と思い巡らせる。リン様に言伝を頼むだけでも、違うのかもと…
「ねぇ、お父さんなら…そこに」
「…え…?」
「…ゴホン」
聞き覚えのある咳払いだ。ハッキリとは見えないが雰囲気を、息遣いを感じ取る。即座に土下座の体勢に入る。
「申し訳ございませんでした!!」
もはや下手な言い訳など不要。主人との約束を果たせなかったのだ…。首を切られても仕方がない。最大限の謝罪で幾分かの気晴らしにでもなれば…と思っていた。
「君はいつもよく、やってくれたよ」
怒りを通り越してか感情をあまり感じられない声色だ。
「……」
「これまで、ありがとう」
褒められた……??
「ナ、なぜお褒めになるのです!!」
理解不能。怒られることは想定していたが、全くの予想外。感情が高ぶるあまり、つい頭を上げてしまう。グルバン様からの温かみのある言葉が続く。
「ルピカ。わしの代わりに、リンを任せっきりになっていたな…。誠心誠意、下心なく尽くしてくれたことは知っておる…。」
「グルバン様…」
「じゃが、自身の過失によりリンを危険な目に合わせたことは、有罪に値する」
「はいぃ…!!」
再び土下座の姿勢に戻る…。が、涙腺が緩くなってしまう。褒められることを褒められ、𠮟るべきところにはきちんと釘を刺してくれた。
「グルバン様と…リン様に……お仕え出来て本当に良かったです」
「その罪悪感とかはやる気にしたらいいから」
「そうじゃな」
「は…はい…?!」
非常に喜ばしい。それは本当だ。少し、脳裏によぎるのは《これまで、ありがとう》と言われたことだ。ネガティブ思考に突入する前に、覚えのある存在感。ケイト様だ。
「…お疲れ」
〔…っ!早かったな…〕
ケイト様の帰還。アピスを撃退したと察せられるが…、どのようになったかは本人の口からしか分かり得ない――
0
~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる