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第3章 ~よう
器
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☆sideシン
オレはケイトと目配せしながら切り出すタイミングを見計らう。
〔…えっとな……〕
「……」
気まずい沈黙が訪れる。ここでうじうじしていては話が進まない。覚悟を決める。
〔…メハとはたぶんもう会えない〕
「…そっか」
リンの顔はオレから逸れていく。その反応を冷たすぎるものではなく、「寿命はあるものだし仕方ないね」みたいな年寄りじみたニュアンスだった…。
〔……〕
「そっかぁ………」
リンが肩を震わせる。
<ぁ……、ああぁ……>
「なみだ…だ……」
声も震えているが、口は比較的冷静に状況を判断する。いつも儚げだったリンの存在感は、より一層儚く、危うく、希薄になる。
〔………………〕
「………」
優しい言葉や行動をとりたくなるが、ケイトに制される。グルバンも同時に制される。オレなんかより、霊達の方がしたいに決まっている。
「独りの時間が、必要じゃ」
〔…〕
「………」
フラフラと離れていく背中から不安を感じずにはいられないが、少女の肩には圧し潰されんばかりの重圧がかかっているというのだ……。
「ここは一つ」
「あのさ…」
グルバンの声にルコが被せてしまう……。
――sideルコ
私は臆病者だ。切り出そうと思った。
<タイミング最悪だ>
お得意の『予測』でグルバンの発言は容易に予測できたはずなのに、ありえないミス。
<気持ちが逸ってる>
話し始めがいかに被って最悪であっても、その後の対応でカバーできた。が、チキったのである。
《み、みんな話すなら、リンを見守ろうか?》
<これだから龍成とこじれちゃったのかな……>
ついネガティブになりそうになるが、今はリンの護衛があるのだ。落ち込んでいられない。私より、辛い心境にいるのは、リンである。リンは公園のブランコで揺られている。顔色は浮かない。周りには人はほぼおらず、少々目立っていたが、大した違和感じゃない。
<ケイトも…あぁ言ってたし、見守りでいいよね…>
遠くてリンの目元が見えない。集中したら、涙らしきものがあるかとかも確認できそうだけど、そうするのも気が引ける。かと言って声掛けもできないし、と悶々としていると公園に異分子が混入する。
「うぇ~~い。禁断の企画、公園でナンパしてみたww」
「フゥ~~」
馬鹿そうな2人組の声が虚しく響く。
「って、誰もいねぇーじゃんw!!」
「いや、あそこいるぜ!」
困った。どのように撃退しようか、大変悩ましい。どっからどう見ても、一般人で下手に怪我などさせられない。
「嬢ちゃん一人かな?」
「友達か、お母さんはw?」
「俺らと飯でもいかねw?」
「……」
穏便に済ませる方法が『幻影』を出すくらいしか思いつかなかったので、実行しようとするが、その前に割り込まれる。
「おい!何してる!」
「げ、ポリ公」
「いやだなぁ~悪いことなんてしてないですって」
「嫌がってそうだが?」
「親切に迷子かとか、人助けしても嫌がられることあるって、なーー」
「撮影しているだろう。なんだ?配信か?」
「ホームビデオだってば!」
「信用できんな。プライバシーの侵害は罪が問われるんだぞ?」
「あーもーーはいはい。消しました。ほら、これでいいんだろ?」
警察官に画面を見せつける。
「……いいだろう」
「うぃーっす」
彼らはそそくさと場を去る。霊体となった私には、会話が聞こえてしまう。
「…ダルーー」
「なーー。わざわざ消してやったわ」
「ま、アーカイブは残ってるけどw」
「なww」
「……あれ?」
「どした?」
「つかねー…」
「マジ??」
その会話を耳にする。違和感はある。ただの優しい人かアピスの刺客か。少なくとも、この警察官は変だと、経験が言っていた――
オレはケイトと目配せしながら切り出すタイミングを見計らう。
〔…えっとな……〕
「……」
気まずい沈黙が訪れる。ここでうじうじしていては話が進まない。覚悟を決める。
〔…メハとはたぶんもう会えない〕
「…そっか」
リンの顔はオレから逸れていく。その反応を冷たすぎるものではなく、「寿命はあるものだし仕方ないね」みたいな年寄りじみたニュアンスだった…。
〔……〕
「そっかぁ………」
リンが肩を震わせる。
<ぁ……、ああぁ……>
「なみだ…だ……」
声も震えているが、口は比較的冷静に状況を判断する。いつも儚げだったリンの存在感は、より一層儚く、危うく、希薄になる。
〔………………〕
「………」
優しい言葉や行動をとりたくなるが、ケイトに制される。グルバンも同時に制される。オレなんかより、霊達の方がしたいに決まっている。
「独りの時間が、必要じゃ」
〔…〕
「………」
フラフラと離れていく背中から不安を感じずにはいられないが、少女の肩には圧し潰されんばかりの重圧がかかっているというのだ……。
「ここは一つ」
「あのさ…」
グルバンの声にルコが被せてしまう……。
――sideルコ
私は臆病者だ。切り出そうと思った。
<タイミング最悪だ>
お得意の『予測』でグルバンの発言は容易に予測できたはずなのに、ありえないミス。
<気持ちが逸ってる>
話し始めがいかに被って最悪であっても、その後の対応でカバーできた。が、チキったのである。
《み、みんな話すなら、リンを見守ろうか?》
<これだから龍成とこじれちゃったのかな……>
ついネガティブになりそうになるが、今はリンの護衛があるのだ。落ち込んでいられない。私より、辛い心境にいるのは、リンである。リンは公園のブランコで揺られている。顔色は浮かない。周りには人はほぼおらず、少々目立っていたが、大した違和感じゃない。
<ケイトも…あぁ言ってたし、見守りでいいよね…>
遠くてリンの目元が見えない。集中したら、涙らしきものがあるかとかも確認できそうだけど、そうするのも気が引ける。かと言って声掛けもできないし、と悶々としていると公園に異分子が混入する。
「うぇ~~い。禁断の企画、公園でナンパしてみたww」
「フゥ~~」
馬鹿そうな2人組の声が虚しく響く。
「って、誰もいねぇーじゃんw!!」
「いや、あそこいるぜ!」
困った。どのように撃退しようか、大変悩ましい。どっからどう見ても、一般人で下手に怪我などさせられない。
「嬢ちゃん一人かな?」
「友達か、お母さんはw?」
「俺らと飯でもいかねw?」
「……」
穏便に済ませる方法が『幻影』を出すくらいしか思いつかなかったので、実行しようとするが、その前に割り込まれる。
「おい!何してる!」
「げ、ポリ公」
「いやだなぁ~悪いことなんてしてないですって」
「嫌がってそうだが?」
「親切に迷子かとか、人助けしても嫌がられることあるって、なーー」
「撮影しているだろう。なんだ?配信か?」
「ホームビデオだってば!」
「信用できんな。プライバシーの侵害は罪が問われるんだぞ?」
「あーもーーはいはい。消しました。ほら、これでいいんだろ?」
警察官に画面を見せつける。
「……いいだろう」
「うぃーっす」
彼らはそそくさと場を去る。霊体となった私には、会話が聞こえてしまう。
「…ダルーー」
「なーー。わざわざ消してやったわ」
「ま、アーカイブは残ってるけどw」
「なww」
「……あれ?」
「どした?」
「つかねー…」
「マジ??」
その会話を耳にする。違和感はある。ただの優しい人かアピスの刺客か。少なくとも、この警察官は変だと、経験が言っていた――
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~このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係なく、すべて空想です~ 敬語や言葉選びはよく考えてはいるつもりだが、拙い文は長い目で見てやって欲しい。更新は調整中だが、頑張って完結予定。 X始めました!!! →https://x.com/kahiketu 世界観は独特で人を選ぶかもだけど、結構ジャンルは荒ぶると思う。ただ、単純にホラーとミステリーは得意じゃないから触れないかも。好きなのは、ファンタジー、異能、神、科学、記憶、(デス)ゲームなど。幽霊や呪いも使いはする(ホラーにはならないはず)。 辻褄を合わせたがるので、凝り性。設定チュウ(毒) 得意でないのは、恋愛やミステリー(=謎解き)、あとハーレムとか、R18系は基本無理。
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