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幕間(まくあい)
■をめぐらせるモノとゴウカで滅ぼす者
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龍児は殺されなかった。アピスは見逃したのだ。もう放っても死ぬからである……。
最期の数秒……。龍児は静かになった屋上で独り仰向けで宙を見上げていた。原型を留めぬ肉片に成り果てても、眼は辛うじて開く。異能を行使しなかった左手にあるソレの傷の有無を確認する。
「良かった……。無事だ……」
龍成も死ぬ気で守ったロケットペンダントである。形あるものは壊れるし、生き物は死ぬ。アピスを倒せても、自滅覚悟の攻めだし、神子の持ち物などなおさら誰かの手に渡るだろう。当たり前のことが分かっていても、コレを命よりも優先して守りたくなった。龍児はどこか龍成の心境を分かった気がした。そして、悪くない気分のまま静かに瞼を閉じた。
こんな光景を見たくはなかった……。そう思わなくもないが、当人がこうしたがっていたのだ。だから、ここで言うべき言葉は謝罪や同情でもない。
「……お疲れ様」
オレはそう言って、龍児の魂に触れる。出もしない涙が零れる感じがした。
〈こんなに小さな子どもにナニ背負わせているんだよ……オレ………〉
ピアス野郎をぶちのめした件は良かったと思っている。子どもも同僚も道具のように扱うあいつがこれまで出した死者の不憫さに比べれば、あの程度で済んだのだ。優しい制裁な方だろう。
〈それを龍児に背負わせてしまった感は否めない〉
オレはそんなことを考えながら、無い眼を閉じる。龍児の魂を運ぶために……。
そう、もう龍児には幸か不幸か、帰るべき場所ができたのだ。
「もう休んでいいんだぞ…………」
龍児の人生を労うように優しく言葉を漏らす。その声は届くことがないことを達観しても尚、言わずにはいられなかった。
送り出した龍児の魂はさながら親鳥を追いかける小鳥のようで、背伸びしていない、しがらみのない、ありのままの心の声に従って、生前以上に生き生きとしているように思えるこの光景から、安堵と共に酷い罪悪感に駆られる。
〈これが当たり前だったのに……。オレ達のせいで…………。
彼らの末路は辛いし、嫌だし、見たくない。
それでも、見なければならないし、逃げるわけにはいかない。
増え続けた罪悪感はいつまでも付き纏うのだろう。
……後悔はしない。そう信じて進むしk、いや、突き進むんだ!必ず……〉
しばらく、龍成一家の合流を見送った後に、感傷に浸っていた。そして、突然、思いだしたのだ。
《『神子』の異能は不思議だよな。この世に1つ存在し続けている。さらに異能は強力になり続けている。これは成長を示すのでは?……と『神子』の異能は引き継がれているのではないだろうか?》
ピアス野郎が言った仮説は正しくない。
ただ人間と共に時を過ごすだけで、意思が芽生えるだろうか?究極的に言えばそうなる可能性はありはする。
オレは違う。
異能が意思を持つのではない。オレが言わば『神子』に憑いたのだ。
《『業火』って知ってる?
[業火…①地獄の炎。罪人を焼き苦しませているとされる。②悪行が身を滅ぼすのをたとえていう言葉]
そう、さすが『辞書』よね。
パチパチ……ガシャァアアン……ジュゥウ!
辺りは火の海。火が施設を、罪人を、野望を飲み込み焦がしてくれるのだ。
『業火』……。そうたとえるのが正しいでしょ?
私達をこんな目に遭わせたあいつらに断罪し、同じく罪人である自らの身を滅ぼすのだから……。
ドサァ……。
そのまま意識が遠くなる。私の朧げな視界いっぱいに『劫火』が揺らめいていた。
[劫火…こうか とも言う。世界が終わる最後に現れ……]
その引用の意味までは私には入ってこなかった……》
最期の数秒……。龍児は静かになった屋上で独り仰向けで宙を見上げていた。原型を留めぬ肉片に成り果てても、眼は辛うじて開く。異能を行使しなかった左手にあるソレの傷の有無を確認する。
「良かった……。無事だ……」
龍成も死ぬ気で守ったロケットペンダントである。形あるものは壊れるし、生き物は死ぬ。アピスを倒せても、自滅覚悟の攻めだし、神子の持ち物などなおさら誰かの手に渡るだろう。当たり前のことが分かっていても、コレを命よりも優先して守りたくなった。龍児はどこか龍成の心境を分かった気がした。そして、悪くない気分のまま静かに瞼を閉じた。
こんな光景を見たくはなかった……。そう思わなくもないが、当人がこうしたがっていたのだ。だから、ここで言うべき言葉は謝罪や同情でもない。
「……お疲れ様」
オレはそう言って、龍児の魂に触れる。出もしない涙が零れる感じがした。
〈こんなに小さな子どもにナニ背負わせているんだよ……オレ………〉
ピアス野郎をぶちのめした件は良かったと思っている。子どもも同僚も道具のように扱うあいつがこれまで出した死者の不憫さに比べれば、あの程度で済んだのだ。優しい制裁な方だろう。
〈それを龍児に背負わせてしまった感は否めない〉
オレはそんなことを考えながら、無い眼を閉じる。龍児の魂を運ぶために……。
そう、もう龍児には幸か不幸か、帰るべき場所ができたのだ。
「もう休んでいいんだぞ…………」
龍児の人生を労うように優しく言葉を漏らす。その声は届くことがないことを達観しても尚、言わずにはいられなかった。
送り出した龍児の魂はさながら親鳥を追いかける小鳥のようで、背伸びしていない、しがらみのない、ありのままの心の声に従って、生前以上に生き生きとしているように思えるこの光景から、安堵と共に酷い罪悪感に駆られる。
〈これが当たり前だったのに……。オレ達のせいで…………。
彼らの末路は辛いし、嫌だし、見たくない。
それでも、見なければならないし、逃げるわけにはいかない。
増え続けた罪悪感はいつまでも付き纏うのだろう。
……後悔はしない。そう信じて進むしk、いや、突き進むんだ!必ず……〉
しばらく、龍成一家の合流を見送った後に、感傷に浸っていた。そして、突然、思いだしたのだ。
《『神子』の異能は不思議だよな。この世に1つ存在し続けている。さらに異能は強力になり続けている。これは成長を示すのでは?……と『神子』の異能は引き継がれているのではないだろうか?》
ピアス野郎が言った仮説は正しくない。
ただ人間と共に時を過ごすだけで、意思が芽生えるだろうか?究極的に言えばそうなる可能性はありはする。
オレは違う。
異能が意思を持つのではない。オレが言わば『神子』に憑いたのだ。
《『業火』って知ってる?
[業火…①地獄の炎。罪人を焼き苦しませているとされる。②悪行が身を滅ぼすのをたとえていう言葉]
そう、さすが『辞書』よね。
パチパチ……ガシャァアアン……ジュゥウ!
辺りは火の海。火が施設を、罪人を、野望を飲み込み焦がしてくれるのだ。
『業火』……。そうたとえるのが正しいでしょ?
私達をこんな目に遭わせたあいつらに断罪し、同じく罪人である自らの身を滅ぼすのだから……。
ドサァ……。
そのまま意識が遠くなる。私の朧げな視界いっぱいに『劫火』が揺らめいていた。
[劫火…こうか とも言う。世界が終わる最後に現れ……]
その引用の意味までは私には入ってこなかった……》
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