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第一章
君が求めるもの
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ランが殴られてから、二週間がたった。
頬の傷はとっくに治っている。
サウスは大騒ぎしたので、グリーダ家には出禁になった。
まるで自分の事のように暴れるサウスを宥めるのに、骨がおれた。
下手に突っぱねたら、間違いなく監禁されるだろう。
あれから毎日、アサジはダグラズ家に訪問し、執務中のランに謝罪し、勉強中のアリスに花や贈り物を持っていくのが日課になっていた。
頬の傷が治ったと同時に、ランへの謝罪は止めて貰ったが、アリスへの行脚は止まらなかった。
イツは一年位、謝罪させるつもりだったらしく、ランは私の心臓が持たないから止めてほしいと嘆願した。
昼過ぎ、ランは、市場横の自分の家に帰っていた。
「ラン殿」
警ら中と思われるアサジが、近寄ってきた。
びしりと真っ白い軍服を着ている。
奥には、数人の部下と思われる人達がこちらを見ていた。
通行人が、何事かと見る中で、アサジは慌てて脇道によって身体を隠した。
「アサジ隊長、先に行ってますよ」
その声に、アサジが手をあげて答えた。
ランは、気遣いが出来る人だなと感心した。
「アサジ侯爵?どうされました」
前に見たときよりも、顔色が悪い。
アリスは今、ダグラズ家の別邸で過ごしている。数日、会えていない。そのせいかもしれない。
「傷は・・・・・・」
「ああ、もう大丈夫ですよ。今日はアリス嬢に会われましたか?」
「いや、まだ、帰って来ていないのだ。今日は、貴方に用事が」
ランが首をかしげた。
「なんでしょう?もう十分、治療費も見舞いも頂きましたよ」
声を潜め、恥ずかしそうにアサジが言った。
「私に・・・・料理を教えて欲しい」
当主が平民に料理を習うなんて、聞いたことがない。
「料理?屋敷の料理人に教えて貰った方がいいですよ。私のは、素人料理だ」
「駄目なんだ。料理人では。アリスが貴方の作ったパンケーキを美味しそうに食べていた。私は、アリスの笑い顔がみたいんだ」
「・・・・・・」
「頼む。貴方を殴ったりして酷いことをしたが、アリスの笑顔が見たいんだ」
暫く考えていたが、ランが顔を上げた。
「わかりました。簡単なお菓子を教えます」
「ありがとう、ラン先生」
「先生は止めてください。ランと呼び捨てにしてください。アサジ隊長さん」
侯爵よりも、しっくりくる気がした。
「では、私の事も、アサジと」
「それは、無理ですっ」
アサジが笑った。
ランがその笑顔を見ながら、サウスの作られた綺麗な笑みとは違うなとぼんやり思った。
爽やかな好青年そのものだった。
「では、今まで通りに。ラン、よろしくお願いします」
「はい」
その様子をじとりと見ている人間がいた。
サウスだ。
ランは、気付いていない。
アサジが去ったあと、ランは家に入ろうと扉前に立った。
「ラン」
声が聞こえたと思った瞬間、そのまま、部屋に押し込まれた。
「え?サウスっ!?」
押し倒され、ランがサウスの下になった。
「ランの浮気者!浮気だ!アサジに目移りしたんだ!」
ああ、さっきの様子を見られていたのか。
ランは陰鬱な気分になった。
サウスは怒りで眼の色が違う。
耳元で怒鳴られ、ランはいらいらした。
「・・・・うるさい!静かにしてください!」
何で、サウスの顔色を伺って、生活しなければいけないのだろう。
うんざりしてきた。
「ラ、ン?」
「うるさい男は嫌いです。しばらく、貴方に会いたくない」
「・・・・・・っ!?」
ショックでサウスの動きが止まった。
ぽろぽろとサウスが泣き出した。
「ご、めんなさい。き、嫌いにならないで」
「帰ってください。うるさい男は嫌いです」
泣くサウスはよく知っているので、ランは突き放した。
「・・・・」
サウスがランを抱き上げ、寝室のベッドに投げ入れた。
サウスがぐいっと顔を近付ける。
「何をす・・・・」
「もしかして、ランは、殴られるのが、好きなの・・・・・?」
サウスはオドオドした顔をして、ランを見ている。
「え、・・・・・・?」
ランが何を言っているのか分からず、見上げると、肯定と受け取ったサウスはぶつぶつと言い出した。
「アサジに殴られていたのに、すぐ尻尾を振るなんて。殴られるの、好き、なの?」
「ちょっと、まって」
「私、ランが望むなら、嫌だけど殴るよ?」
「違う」
ああ、しまった。サウスは、人と違って少しおかしいのだ。
ランはサウスが変態だと、忘れていた自分を悔いた。
「ちゃんと、痕が残らないように、痛いだけで殴ってあげる。アサジより、私の方が綺麗に殴るから。骨とか、折って欲しいなら、すぐくっ付く折り方をする」
まるで愛を囁くように、うっとりとサウスはランを見つめる。
目が本気だった。
「違う違うっ!そんなんじゃありません!私は、身体を痛め付ける癖は、ありません!」
「・・・・・・じゃあ、アサジとは、本気なんだ」
すっとサウスの目が細くなった。
「アサジ隊長さんは関係ないですって」
サウスが、ランの胸元を握り、シャツを破いた。
「何するんですか!」
「他の男に取られる位なら、ランを壊す」
にやあとサウスが笑った。
泣きそうな半笑いだった。
「ひ、サウス、話し合いましょう、ね?」
「壊したら、誰にも取られないから」
「サウス、私が壊れたら、サウスとも話せなくなるよ」
「・・・・・・でも、私のランになる」
うっとりとサウスがランの首に手を廻した。
「サウス、そんな事したら、サウスといろんな事が楽しめなくなるよ?」
「いろんな事?」
「私の事、好きでしょう?」
「うん、好き」
「私が泣いたら嫌ですよね?」
「うん、嫌だ」
「私は、優しいサウスは好きですよ?」
本当?
サウスの顔が明るくなった。
「じゃあ、じゃあ、私の事、好きって言ってくれる?」
「サウス、好きですよ」
「うん、私も」
ごろごろと喉を鳴らすように、サウスはランに抱きついた。
サウスの頭を抱きしめながら、ランが息を吐いた。
「サウス、私は逃げないから、怖いことは言わないでください」
「だって、ランが私を、見ないから」
「貴方としかこんなことしないのに。私は自信満々のサウスが好きですよ?」
嬉しそうに、子供のようにサウスが笑った。
ランはサウスのこの顔が好きだった。
「本当?嬉しい」
「・・・・私が浮気なんてするわけないでしょう。そんなに魅力もないし、私を好きだと言ってくれるのは、よほどの物好きかサウス位ですよ」
「ランが浮気したら、頭から全部、食べてしまうからね。血一滴も残さないんだ」
ゾッとした。
ランが殴られたその日、アサジはダグラズ家の一室で、アリスに関する承諾書とランに対する接触承諾書の説明を受けていた。
イツが前で、ソファに座り、ゆったりと紅茶を飲んでいる。
幼い姿に、妙に威圧感があり、アサジは気を抜くと喉仏を食い千切られるなといつも思っていた。
だいたい、姿形が明らかに〝神天の子〟なのに、ダグラズ家の嫡男として生活しているのは異例なのだ。ダグラズ家の当主であるオリオン公爵の権力が強いとはいえ。
「ダグラズ家は、こういった誓約書を作るのが得意なのだな」
アサジが何枚もサインして、ぐったりしながら言う。
イツがにっこり笑い、書類の束をまとめている。
「書類は証拠になりますからね。特に神天や蜜人は、戸籍を消され、不当な扱いをされている子が多い」
「偽装も出来るだろう」
「ええ、勿論です。でも、ダグラズ家が作る書類は、偽装でも本物になるんですよ」
「・・・・・・」
にっこりとイツが冷たい目をしながら、笑った。
アリスに関する出自の書類は、ダグラズ家の作成していたが、それを偽物とする証拠も何もでなかった。
「・・・・・アリスが承認してくれたら、本当に婚姻を認めてくれるのだな?」
「いいですよ、アリスの思いを尊重します」
そして、少し考えて、イツが思い出したようにアサジを見た。
「あ、ああ、いい忘れてました。アリスは一族の教育を、一通り受けてきました」
「教育?アリスは今、受けてる」
「一族の風習や理念みたいなものですね。私はこちらで過ごしているから、あまり干渉されないですが」
「まさか、他部族とは、結婚しないとか?」
「いいえ、もっと悪いかもしれません。一族は母系で、多夫なんです」
「多夫?」
「女日照りだから、男がいつも溢れるせいなんですけどね。女性はその時々に、旦那を選ぶ事もざらだ。だから、男は目立つ外見になったと思っています。アリスは、夫が増えることに抵抗はないでしょう。むしろ、多く夫を持つ事を義務と思ってる」
アリスは、恋愛と婚姻に対して、フラットなんです。
イツが言うと、アサジが青ざめた。
「アリスは、気に入ったら誰でも夫にするというのか?」
「そうではなくて、アリスはロジム国の男性貴族の考えと似ていると思いますよ。貴方がたも、妾作って第二、第三夫人を作るでしょう?」
「私は、アリス一人だ!ちょっと、待て。アリスは、ラン殿を気に入っている。・・・・・・私が第二夫になるのか?私は、貴族だぞ?」
ランがおかしそうに笑った。
「アリスが貴族の恩恵を受けたいとでも?簡単ですよ。・・・・貴方が、アリスのタイプの男ではないからです。そういったら、サゾルの男達の大半がそうでしょうけど」
「私はタイプじゃない」
愕然とする。
「アリスは、中性的な男性が好みのようです。若い大人の男を見たことかなかったせいでしょう。年老いた執事と女中しかいない狭い箱庭で、アリスは生きていたから」
思い当たって、アサジが項垂れる。
「私は一番ではない・・・・」
「そうは言っていませんが、アリスはアリスなりに、貴方との婚姻について考えているのでしょう。一族の女性はとても情が深い」
イツがにこりと笑う。
「・・・・・ランに危害を加える真似をするなら、許しませんよ」
「・・・・・・」
アサジは青ざめたまま、黙りこんだ。
頬の傷はとっくに治っている。
サウスは大騒ぎしたので、グリーダ家には出禁になった。
まるで自分の事のように暴れるサウスを宥めるのに、骨がおれた。
下手に突っぱねたら、間違いなく監禁されるだろう。
あれから毎日、アサジはダグラズ家に訪問し、執務中のランに謝罪し、勉強中のアリスに花や贈り物を持っていくのが日課になっていた。
頬の傷が治ったと同時に、ランへの謝罪は止めて貰ったが、アリスへの行脚は止まらなかった。
イツは一年位、謝罪させるつもりだったらしく、ランは私の心臓が持たないから止めてほしいと嘆願した。
昼過ぎ、ランは、市場横の自分の家に帰っていた。
「ラン殿」
警ら中と思われるアサジが、近寄ってきた。
びしりと真っ白い軍服を着ている。
奥には、数人の部下と思われる人達がこちらを見ていた。
通行人が、何事かと見る中で、アサジは慌てて脇道によって身体を隠した。
「アサジ隊長、先に行ってますよ」
その声に、アサジが手をあげて答えた。
ランは、気遣いが出来る人だなと感心した。
「アサジ侯爵?どうされました」
前に見たときよりも、顔色が悪い。
アリスは今、ダグラズ家の別邸で過ごしている。数日、会えていない。そのせいかもしれない。
「傷は・・・・・・」
「ああ、もう大丈夫ですよ。今日はアリス嬢に会われましたか?」
「いや、まだ、帰って来ていないのだ。今日は、貴方に用事が」
ランが首をかしげた。
「なんでしょう?もう十分、治療費も見舞いも頂きましたよ」
声を潜め、恥ずかしそうにアサジが言った。
「私に・・・・料理を教えて欲しい」
当主が平民に料理を習うなんて、聞いたことがない。
「料理?屋敷の料理人に教えて貰った方がいいですよ。私のは、素人料理だ」
「駄目なんだ。料理人では。アリスが貴方の作ったパンケーキを美味しそうに食べていた。私は、アリスの笑い顔がみたいんだ」
「・・・・・・」
「頼む。貴方を殴ったりして酷いことをしたが、アリスの笑顔が見たいんだ」
暫く考えていたが、ランが顔を上げた。
「わかりました。簡単なお菓子を教えます」
「ありがとう、ラン先生」
「先生は止めてください。ランと呼び捨てにしてください。アサジ隊長さん」
侯爵よりも、しっくりくる気がした。
「では、私の事も、アサジと」
「それは、無理ですっ」
アサジが笑った。
ランがその笑顔を見ながら、サウスの作られた綺麗な笑みとは違うなとぼんやり思った。
爽やかな好青年そのものだった。
「では、今まで通りに。ラン、よろしくお願いします」
「はい」
その様子をじとりと見ている人間がいた。
サウスだ。
ランは、気付いていない。
アサジが去ったあと、ランは家に入ろうと扉前に立った。
「ラン」
声が聞こえたと思った瞬間、そのまま、部屋に押し込まれた。
「え?サウスっ!?」
押し倒され、ランがサウスの下になった。
「ランの浮気者!浮気だ!アサジに目移りしたんだ!」
ああ、さっきの様子を見られていたのか。
ランは陰鬱な気分になった。
サウスは怒りで眼の色が違う。
耳元で怒鳴られ、ランはいらいらした。
「・・・・うるさい!静かにしてください!」
何で、サウスの顔色を伺って、生活しなければいけないのだろう。
うんざりしてきた。
「ラ、ン?」
「うるさい男は嫌いです。しばらく、貴方に会いたくない」
「・・・・・・っ!?」
ショックでサウスの動きが止まった。
ぽろぽろとサウスが泣き出した。
「ご、めんなさい。き、嫌いにならないで」
「帰ってください。うるさい男は嫌いです」
泣くサウスはよく知っているので、ランは突き放した。
「・・・・」
サウスがランを抱き上げ、寝室のベッドに投げ入れた。
サウスがぐいっと顔を近付ける。
「何をす・・・・」
「もしかして、ランは、殴られるのが、好きなの・・・・・?」
サウスはオドオドした顔をして、ランを見ている。
「え、・・・・・・?」
ランが何を言っているのか分からず、見上げると、肯定と受け取ったサウスはぶつぶつと言い出した。
「アサジに殴られていたのに、すぐ尻尾を振るなんて。殴られるの、好き、なの?」
「ちょっと、まって」
「私、ランが望むなら、嫌だけど殴るよ?」
「違う」
ああ、しまった。サウスは、人と違って少しおかしいのだ。
ランはサウスが変態だと、忘れていた自分を悔いた。
「ちゃんと、痕が残らないように、痛いだけで殴ってあげる。アサジより、私の方が綺麗に殴るから。骨とか、折って欲しいなら、すぐくっ付く折り方をする」
まるで愛を囁くように、うっとりとサウスはランを見つめる。
目が本気だった。
「違う違うっ!そんなんじゃありません!私は、身体を痛め付ける癖は、ありません!」
「・・・・・・じゃあ、アサジとは、本気なんだ」
すっとサウスの目が細くなった。
「アサジ隊長さんは関係ないですって」
サウスが、ランの胸元を握り、シャツを破いた。
「何するんですか!」
「他の男に取られる位なら、ランを壊す」
にやあとサウスが笑った。
泣きそうな半笑いだった。
「ひ、サウス、話し合いましょう、ね?」
「壊したら、誰にも取られないから」
「サウス、私が壊れたら、サウスとも話せなくなるよ」
「・・・・・・でも、私のランになる」
うっとりとサウスがランの首に手を廻した。
「サウス、そんな事したら、サウスといろんな事が楽しめなくなるよ?」
「いろんな事?」
「私の事、好きでしょう?」
「うん、好き」
「私が泣いたら嫌ですよね?」
「うん、嫌だ」
「私は、優しいサウスは好きですよ?」
本当?
サウスの顔が明るくなった。
「じゃあ、じゃあ、私の事、好きって言ってくれる?」
「サウス、好きですよ」
「うん、私も」
ごろごろと喉を鳴らすように、サウスはランに抱きついた。
サウスの頭を抱きしめながら、ランが息を吐いた。
「サウス、私は逃げないから、怖いことは言わないでください」
「だって、ランが私を、見ないから」
「貴方としかこんなことしないのに。私は自信満々のサウスが好きですよ?」
嬉しそうに、子供のようにサウスが笑った。
ランはサウスのこの顔が好きだった。
「本当?嬉しい」
「・・・・私が浮気なんてするわけないでしょう。そんなに魅力もないし、私を好きだと言ってくれるのは、よほどの物好きかサウス位ですよ」
「ランが浮気したら、頭から全部、食べてしまうからね。血一滴も残さないんだ」
ゾッとした。
ランが殴られたその日、アサジはダグラズ家の一室で、アリスに関する承諾書とランに対する接触承諾書の説明を受けていた。
イツが前で、ソファに座り、ゆったりと紅茶を飲んでいる。
幼い姿に、妙に威圧感があり、アサジは気を抜くと喉仏を食い千切られるなといつも思っていた。
だいたい、姿形が明らかに〝神天の子〟なのに、ダグラズ家の嫡男として生活しているのは異例なのだ。ダグラズ家の当主であるオリオン公爵の権力が強いとはいえ。
「ダグラズ家は、こういった誓約書を作るのが得意なのだな」
アサジが何枚もサインして、ぐったりしながら言う。
イツがにっこり笑い、書類の束をまとめている。
「書類は証拠になりますからね。特に神天や蜜人は、戸籍を消され、不当な扱いをされている子が多い」
「偽装も出来るだろう」
「ええ、勿論です。でも、ダグラズ家が作る書類は、偽装でも本物になるんですよ」
「・・・・・・」
にっこりとイツが冷たい目をしながら、笑った。
アリスに関する出自の書類は、ダグラズ家の作成していたが、それを偽物とする証拠も何もでなかった。
「・・・・・アリスが承認してくれたら、本当に婚姻を認めてくれるのだな?」
「いいですよ、アリスの思いを尊重します」
そして、少し考えて、イツが思い出したようにアサジを見た。
「あ、ああ、いい忘れてました。アリスは一族の教育を、一通り受けてきました」
「教育?アリスは今、受けてる」
「一族の風習や理念みたいなものですね。私はこちらで過ごしているから、あまり干渉されないですが」
「まさか、他部族とは、結婚しないとか?」
「いいえ、もっと悪いかもしれません。一族は母系で、多夫なんです」
「多夫?」
「女日照りだから、男がいつも溢れるせいなんですけどね。女性はその時々に、旦那を選ぶ事もざらだ。だから、男は目立つ外見になったと思っています。アリスは、夫が増えることに抵抗はないでしょう。むしろ、多く夫を持つ事を義務と思ってる」
アリスは、恋愛と婚姻に対して、フラットなんです。
イツが言うと、アサジが青ざめた。
「アリスは、気に入ったら誰でも夫にするというのか?」
「そうではなくて、アリスはロジム国の男性貴族の考えと似ていると思いますよ。貴方がたも、妾作って第二、第三夫人を作るでしょう?」
「私は、アリス一人だ!ちょっと、待て。アリスは、ラン殿を気に入っている。・・・・・・私が第二夫になるのか?私は、貴族だぞ?」
ランがおかしそうに笑った。
「アリスが貴族の恩恵を受けたいとでも?簡単ですよ。・・・・貴方が、アリスのタイプの男ではないからです。そういったら、サゾルの男達の大半がそうでしょうけど」
「私はタイプじゃない」
愕然とする。
「アリスは、中性的な男性が好みのようです。若い大人の男を見たことかなかったせいでしょう。年老いた執事と女中しかいない狭い箱庭で、アリスは生きていたから」
思い当たって、アサジが項垂れる。
「私は一番ではない・・・・」
「そうは言っていませんが、アリスはアリスなりに、貴方との婚姻について考えているのでしょう。一族の女性はとても情が深い」
イツがにこりと笑う。
「・・・・・ランに危害を加える真似をするなら、許しませんよ」
「・・・・・・」
アサジは青ざめたまま、黙りこんだ。
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