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59 忘れたほうが楽だったのに

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あかりは、ゼルダにあるシューバ用の執務室で、「雁さん大活躍集」としか言いようのない写真の束を見つけた。日本であかりをガードしていた時のものだ。

「ねぇ、シューバ。ひょっとして、雁さんのファンなの?」
「・・・なぜ、そういう突拍子もない質問が出てくる?」

あかりは、写真の束を扇形にずらしてひらいた。
「だって、こんな決定的な瞬間ばっかり。集めるの大変だったでしょうに」

雁さんが敵に気づくのは早い。そしてあかりの肩を抱いて指示をする。どこに向かって走れとか、どうかくれていろとか。
周りに障害物がないのに飛び道具の心配があった時は、本当に音速レベルで抱き込まれた。そういう雁さんの活躍の決定的な瞬間ばかりが集められている。

「わざわざ、あつめたわけでは、ない」
「いや、集めなきゃ、こうなんないわよ。日本での襲撃は2年半の間に8回。で、これ多分、全部の回そろってる」

「しゅう、げき?」
「あー、言ってなかったっけ。ほら、あの頃の私は、シューバをたぶらかす悪の権化扱いされてたからさ、日本まで追っかけてくる暗殺部隊とかいたのよ。で雁さんにガードをお願い・・・」

ざわっ

でたっ。じゃなかった、怒った!
心臓縮む!

いや、いいのよ、別に。
とりあえず今の私は脱ハリガネムシ。
怖がったところでおかしな匂いを出すわけじゃなし、普通にドキッとかするくらいなら恋愛のスパイスよ。うん、そうのはず・・・なんだけど、ちょっと、ホラーに寄りすぎでは?!こうなるともう血の気が引くのはいかんともしがたい。

「そいつらは、まだ、生きているのか?」
「知らないわよ、狙撃なんて相手の顔見えないし」
「捜し出して内臓引きずり・・・」
「やめなさいっての。怖がるわよ、私がねっ!」

シューバの顔は、しゅん、とするのに、ざわざわが止まらない。

「雁が、好きか?」
「へ?そりゃ、まぁ」
小さい頃から懐いていた自慢の叔父ですから当然嫌いなはずはないけどさ。

「車でさとるにキス、を、したのは、雁に見せたかったから、か?」
なんで、親戚にそんなものを?!

「それとも、さとるを、まだ想っている?日本では、あかりとさとるがいつもベストカップル扱いでだれも歯が立たなかったと」
体育祭とか地域運動会の話?!たしかに、さとると組んで負けた試合はないけど、今、そういう話してないよね?!

「待った!そのネタとその写真、どこ仕入れ?ひょっとして、前の側近の人?」
そういえばシューバの周り中に私のこと嫌いな人間でかためられていたんだっけ。

「・・・特定の人間から聞いたわけじゃない」
「でも、私の情報をシューバに上げるのに、曲解やら脚色やらしないはずがないひと達経由よね。なんて言われたかおしえて?」

「・・・守ってきた子どもが、托卵だと知れば、2度と戻らない。労力をかけた分、憎くなるものだ」
托卵?カッコウとかが他人の巣に卵産み逃げて育てさせるアレ?
仮親はすり替えられた雛の方が自分の体よりでかくなっても可愛がるのやめられないらしいぞ。ろくに育児もしたことないオジサンどものくせに他生物にまで失礼なこと言うんじゃねーわ、どたわけどもめ。

「ええっと、どれから説明しようか」
シューバの心を蝕む仕掛けといえばラノンとレノの洗脳ばっかり警戒して、正直側近とか周りからの攪乱とかは誤差扱いしていたけど、結構えげつなかったのね。

よく、3年近くも忘れないでいてくれたなぁ。
・・・忘れたほうが、楽だったろうに。
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