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34 妄想掃除
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シューバの症状が一進一退なのに業を煮やした、ゼルダの取締役とロジュ達の混成チーム、簡単にいうとホゴラシュ政府から、シューバとクルラに対するホワイト・プログラムによる記憶の一部切除の希望が出されて、あかりとさとるは頭を抱えた。
しかも、何があったかよくわからないが、おかしくなった日の記憶を切れ、と。原因があった日の記憶がなくなれば結果もなくなるだろうと言う大雑把なオーダーだ。
「かんったんにいってくれるわね、腹の立つ!」
「畑里・・・」
「当日の記憶だけ切ったって無駄よ!余計混乱してレノにつけ込まれる!しかも仕込みが十年単位よ?本人と相談できないのに危ないとこ全部切ったら人生経験の半分消えるわよ!」
「だからってレノが十年かけて洗脳済みだと伝えるわけにはいかないだろうが。理由も伝えず、危険性も伝えず、施術も断るとなると、揉めるぞ。ナノ磁石が危険なんじゃないかとか騒ぎ始めるやつも出る」
「確かに、数時間記憶を切る位なら遊びだし、トラウマの軽減ぐらいなら益の方が多い。でも一部の記憶を完全にカットするとね、目の前で、何か事件が起こった時に、思い出す経験とか頭に浮かぶ場面が術前とは違うのよ。だから勘が鈍る。シューバの経営判断ガタガタにしたいわけ?」
経験者の言葉はさすがに重い、が、表面的にはホワイト・プログラムが有効だろうと言うことも否定できない。
「お前の時みたいに、時間を区切って戻すのもだめか」
「私は、あんたが助けに来た。できる限りの抵抗もしたし、結局のところ現実が優しかった。でもシューバの現実は優しくないの。時間で癒えるレベルじゃない傷に時間あけるのは放置って言うのよ、治りにくくなる!」
さとるが苦しそうな顔をする。
おまえのも充分に地獄だったろうが。どこに優しい現実がはいる。
確かにその傷は、膿まなかった。
だがそれだけだ。
「じゃぁ、断る理由の方ひねり出すか?治りかけてるように見せかけるとか」
「んにゃ、『私が』反対していると。意識レベルが落ちたシューバがべったりで『私に』都合が良い、っていう」
いっそシューバを抜け殻にしてこいつの寝袋にしてしまいたい。
ひどい痛みの記憶を取り戻すなり、間髪入れずにえぐられに行く友人を持った身にもなれ。
「ふざけんな、全部お前がかぶろうとするな。シューバが負うべきものはあいつに負わせろ」
「過保護ねー、クリスタの大黒柱くん。でも、恋愛はひと手間が大事なのよ。心配してくれる気持ちだけもらっとく」
そう言って笑った。
あかりの笑顔は見送られることを前提に作られているのではないかと思うことがある。
7年も前、さとるを置いてするりと大人の世界に滑り込んでいった時に感じた寂寥がぶり返す。
「・・・わかった。わかったよ。はぁ。それで時間稼ぐにしても限度があるだろ。根本対策どうする?あいつら、ほとんど寝てないし、下手すりゃ二人とも自傷でるぞ」
さとるが抵抗の無意味を悟って、気持ちを切り替える。
俺がこいつを止められる日は一生来ない。
それならば、せめて、こいつが相談できるくらいにはしっかり立っていよう。
さとるの切り替えがわかったのか、あかりが、脳内エンジンをふかしながら答える。
「シューバをでろでろに甘やかして安定させて、レノをひっかけよう。で、ホワイト・プログラムでレノの脳を触って、シューバに何やったかをレノに直接吐かしてやるわ!」
「まじで?!」
レノは、キュニの部族長の世話役だ。
全面戦争という言葉がさとるの目の前をちらついた。
しかも、何があったかよくわからないが、おかしくなった日の記憶を切れ、と。原因があった日の記憶がなくなれば結果もなくなるだろうと言う大雑把なオーダーだ。
「かんったんにいってくれるわね、腹の立つ!」
「畑里・・・」
「当日の記憶だけ切ったって無駄よ!余計混乱してレノにつけ込まれる!しかも仕込みが十年単位よ?本人と相談できないのに危ないとこ全部切ったら人生経験の半分消えるわよ!」
「だからってレノが十年かけて洗脳済みだと伝えるわけにはいかないだろうが。理由も伝えず、危険性も伝えず、施術も断るとなると、揉めるぞ。ナノ磁石が危険なんじゃないかとか騒ぎ始めるやつも出る」
「確かに、数時間記憶を切る位なら遊びだし、トラウマの軽減ぐらいなら益の方が多い。でも一部の記憶を完全にカットするとね、目の前で、何か事件が起こった時に、思い出す経験とか頭に浮かぶ場面が術前とは違うのよ。だから勘が鈍る。シューバの経営判断ガタガタにしたいわけ?」
経験者の言葉はさすがに重い、が、表面的にはホワイト・プログラムが有効だろうと言うことも否定できない。
「お前の時みたいに、時間を区切って戻すのもだめか」
「私は、あんたが助けに来た。できる限りの抵抗もしたし、結局のところ現実が優しかった。でもシューバの現実は優しくないの。時間で癒えるレベルじゃない傷に時間あけるのは放置って言うのよ、治りにくくなる!」
さとるが苦しそうな顔をする。
おまえのも充分に地獄だったろうが。どこに優しい現実がはいる。
確かにその傷は、膿まなかった。
だがそれだけだ。
「じゃぁ、断る理由の方ひねり出すか?治りかけてるように見せかけるとか」
「んにゃ、『私が』反対していると。意識レベルが落ちたシューバがべったりで『私に』都合が良い、っていう」
いっそシューバを抜け殻にしてこいつの寝袋にしてしまいたい。
ひどい痛みの記憶を取り戻すなり、間髪入れずにえぐられに行く友人を持った身にもなれ。
「ふざけんな、全部お前がかぶろうとするな。シューバが負うべきものはあいつに負わせろ」
「過保護ねー、クリスタの大黒柱くん。でも、恋愛はひと手間が大事なのよ。心配してくれる気持ちだけもらっとく」
そう言って笑った。
あかりの笑顔は見送られることを前提に作られているのではないかと思うことがある。
7年も前、さとるを置いてするりと大人の世界に滑り込んでいった時に感じた寂寥がぶり返す。
「・・・わかった。わかったよ。はぁ。それで時間稼ぐにしても限度があるだろ。根本対策どうする?あいつら、ほとんど寝てないし、下手すりゃ二人とも自傷でるぞ」
さとるが抵抗の無意味を悟って、気持ちを切り替える。
俺がこいつを止められる日は一生来ない。
それならば、せめて、こいつが相談できるくらいにはしっかり立っていよう。
さとるの切り替えがわかったのか、あかりが、脳内エンジンをふかしながら答える。
「シューバをでろでろに甘やかして安定させて、レノをひっかけよう。で、ホワイト・プログラムでレノの脳を触って、シューバに何やったかをレノに直接吐かしてやるわ!」
「まじで?!」
レノは、キュニの部族長の世話役だ。
全面戦争という言葉がさとるの目の前をちらついた。
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