ひどくされても好きでした

白い靴下の猫

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97. 王の腕輪と魔剣

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「ほう。なかなか様になるな。おまえの可愛いところに、風流なものがぶら下がって。ほら、」
「ああっ」
 紐部分とおなじく古代紫の糸房の先を、男はおもしろがって指差す。
「うう……」
 竹弥は屈辱に呻いた。
 だが優美な糸先が、竹弥自身からからまり落ちている様は、滑稽でいて、なんともいえない雅やかさがあり、たしかに男が笑いながら言うように、〝絵になっている〟のだ。
「いいな。色っぽいぞ」
 感心したように言うと、思い出したようにさらに男は告げた。
「せっかくだから、これも写真に撮っておくか」
 竹弥は悲鳴をあげていた。
「や、やめろ! た、たのむ、止めろ!」
 すでに恥ずかしい姿を写真に撮られているが、あらためてこんな生き恥さらしている姿を後に残されるのかと思うと、いっそ今ここで死にたい。
「やめろったら!」
 杉屋は聞く耳もなく、写真を撮る準備にかかっている。その後ろ姿に竹弥は毒づいた。
「畜生! やめろったら!」
 竹弥は無我夢中で首を横にふり、必死に懇願し、やぶれかぶれになって言いはなった。
「よ、よせ! 後生だから、頼むから! くそぉ、舌噛んで死んでやるからな!」
「それは困るな」
 杉屋はすこしも困っていない様子で、辺りを見回すと、室の片隅にまとめて置いていたらしい衣服に目をむけた。竹弥の着ていたものだ。
「ふうむ」
 一瞬、考えこむような顔を見せてから、背をかがめた。
 息も絶え絶えになっていた竹弥は、ふたたび近づいてきた杉屋が手にしているものを見て目を剝いた。
「舌を噛まれたら困るからな。これでもくわえていろ」
「あうっ!」
 男が口のなかに強引に突っ込んできたものが、自分の下着だとわかると、壮絶な憎悪と悔しさに竹弥は全身を火のごとく燃やした。
 だが、戒められた身体ではそれ以上抵抗もできず、男のまえにその後も生き恥を晒しつづけるしかない。
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