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95. ルカはミケを危険にさらす勢力を許さない
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入って来たのは、ルカと、タイキと、なぜかソナで。
「あ、れ、知り合いだったっけ?」
「んにゃ、迷宮回廊通ったら、魔素がこの子に赤い糸飛ばしていてさ、運命感じて近づいたら、ミケの家に入れないっていうから連れて来た」
あ・・そう言えば昨日、ソナを見つけてもらう時に迷宮回廊の魔素で赤い糸を作ってそのままだった。
それにしても、ルカの人懐っこさは凄いと思う。若干男嫌いの気があるソナが、すっかり気を許した顔をしている。
「そっか。ソナ、体大丈夫?お医者さん行けた?」
「もちろんよ!じゃなきゃ、ちょっと心配、位で駆けつけてこないわ」
「よかったぁ」
多分、安心させに来てくれたのだ。内臓が傷ついていたら、翌日は、ぐったりと動けなくなってしまうから。
「で、何がどうしてこうなった。ミケが黒い魔素だぁ?ふざけやがって。現物見たこともないやつらが。ムーガル潰すか?」
言い方がなんとなく、見たことあるっぽくて、首をひねる。
「ルカって、黒の魔素、詳しいの?」
「黒すぎて、光が全部吸収されて、自分が立体で生きている自信もなくなる。触れると光が好きな動物は、正気を失って自ら命を絶ちたがるし、あふれ出ると風も波も止まって、ある程度以上溜まると鹿威しみたいに世界が傾いて冥界に呑まれる」
「それは一大事・・っていうか、そういう命がけ、世界がけ、の話ならもうちょっと気合い入れて私を警戒してもいいと思うのよ」
くす、と、タイキが笑った。
「言いがかりが分かり安すぎて、様子を見に来てしまいましたが、落ち着いていらっしゃいますね」
落ち着いてないよー、とばかりに首を横に振る。
「私は現在、パチドに五体投地して許してもらわなきゃいけない罪人状態なの。なのに、パチドが私を人質にされて軍に捕まっちゃって。罪人が足手まといとかゴミ箱直行だから挽回したいけど余計なことして更に怒らせたくないしで、二の足踏みまくり」
「なんだ、ケンカ中か。よし、俺がムーガル脅して『ミケはてめーらに手が出せる女じゃねーぞ』攻撃してやるから、ミケはパチドをポイして俺になびこう!」
「弟相手に耽美な遊びする余裕ないから!心配は嬉しいけど、ルカとタイキとそろって此処に来てくれて大丈夫なの?『黒の魔素容疑で手配=私の周囲100mは無差別攻撃対象』で危ないかも」
まぁ、ルカが巻き添えでムーガル軍にやられるとか想像つかないけれど。
「タイキまで来たのは、俺とタイキの直通通信具に、パチドが割込めるかチェックしてきたせい。前に俺がパチドの前で通信したのを見ただけだから、タイキにしか通じない一方通行なのにな。気になるだろ?」
「パチドが?」
「うん。そのうちなんか連絡が来るだろうけど、待つの苦手だ。新生フェルニアのアピールもそろそろ始めたほうが良さそうだから、一発脅す。ちょうどいい時期だ」
「・・・ほんとに助けてくれる?ほんとうに新生フェルニアにもいい時期?」
そこで、ミケにうるっと見上げられたのが、タイキの方だったので、ルカはぶすくれた。
「なんで、タイキに聞くんだよ」
「ルカは、私に甘すぎだから!国の支柱のシスコン癖で、せっかく頑張っている新生フェルニアに、ご迷惑はかけられないでしょう?」
タイキが笑って答える。
「大丈夫です。自力で生きていくことはできるようになりました。この後、攻めるのか守るのか、もとのフェルニアを捨てるのか戻るのか。決めなければいけないのも本当で、ルカの気がのっているならそれが『時期』です」
うわー、大将のやる気がある時が『時期』か。いいなぁ、らぶらぶ。ルカは女の子にもモテているみたいだけど、タイキの方がいいんじゃないかしら。
「だいたい何考えているか分るぞ、ミケ。違うからな。えーと、じゃ、とりあえず王城に、一夜で壮麗な陣はってみるか?」
「陣?新生フェルニアの兵士をつれてくるの?」
「こないだミケに教えてもらった魔素収納使えば、訓練された兵なら一応タイキの指示で迷宮回廊の中でも動ける。まぁ、1日2日はヘロヘロになるから、戦闘は無理だけど」
「なんつー、ブラック思考!通る時教えてくれたら私が魔素しまうから、気の毒なことしないの。魔素酔いってつらいのよ?」
「「・・・え?」」
タイキとルカの声がかぶり、2人で顔を見合わせたあと、タイキがきいた。
「迷宮回廊の魔素も、しまえるのですか?あの量を?」
「綺麗にしまうのは大変だけど、兵が通る場所だけ避けるなら何とでもなるわよ。あ、魔素関係なく、迷宮回廊だけでパニックになって走っちゃうような人は無理よ?」
もともと迷宮回廊は、精神作用があるは、空間が歪んでいるはで、扱いが難しい。ティムマインなど、在位中に1度も近寄っていないのではなかろうか。
「それは大丈夫だ。魔素の谷を通す練習に、迷宮回廊使ったから。どうパニックになってもこれだけは離すなって言えば、げろげろ吐きながらだろうが紐つかんでついてくる」
「そんなスパルタな練兵して、よく陣をはれる程兵が残ったわね」
「言ったな?これでも、精鋭ぞろいだぞ。他国から入門希望もくるし、子どものなりたい職業No1になったぞ?」
国になってたった1年で、子どものなりたい職業をアンケートしようという余裕が偉い、と思う。
すっかり黙考状態に入っていたタイキが口を開く。
「ミケさま・・」
「ミケで」
この腹黒そうな綺麗顔に様付で呼ばれるのはしんどい。
「あー、ミケ。その、どうしてもパチドがいいですか?」
「は?」
ここで、恋愛相談をしてくれるとも思えず、しかも、その手の感情に疎そうなタイキの口から出たので、脳が情報を処理しきれなかったようだ。ハンバーグの外見したケーキ食べたような間抜けな声が出た。
「一般的には、パチドよりルカの方が女性に人気がありますし、ルカがダメでも、こんな顔とかスリーサイズの理想とか教えていただければ草の根分けても引きずってきますが」
「タイキ、タイキ、落ち着けや。気持ちは分かるが、多分、それ無理・・・」
ルカは彼の気持ちはわかるのか。私は分からんぞ。
「では、ご希望、とか見返りとか、これが欲しいっ!というものを、パチド以外で教えていただけませんか?」
「あ、それならある、魔の森の平穏!」
チャド・フロラインの魔の森だけは、二度と焼かせない。絶対に。
万一、シェドがパチドの、というかムーガル軍の立場を重んじて説得してきたとしても、折れられないものがあるとすれば、それだけだ。
「乗った!!!」
腹黒ムードも吹っ飛ぶがぶり寄りでタイキが叫び、ルカがぽん、と手をうち慣らす。
「魔の森了解です!ええ、ええ、新生フェルニア、全国力を上げて、魔の森を取り戻し、毎年肥料でも、鳥のエサでも付け届け、魔の森に危害を加えようとする奴は、冥界の魔素だろうが殲滅します!なのでぜひ、新生フェルニアサイドの人間に!!」
??
新生フェルニアサイドの人間?
「・・・いや、もちろん、ルカと敵対する気なんて全くないけど、魔の森は王都よりだいぶ南よ?新生フェルニアは、これから、もとのフェルニアを捨てるのか戻るのか決めるのよね?」
「今、決めました。戻って、さらに元のフェルニアよりも、もう少しだけ南進します。具体的にはレーブルとヘルクが魔の森に接している1km分。真南はパチドに仕切らせるか、あの断崖絶壁を結界にしてしまえばすみますから」
「南進・・って、ここ200年達成できていないやつでは?いくら副官でも、そんな大事を独断で・・」
「大丈夫です、ほら、ルカの顔を見てください、王都さっさと取り戻して、魔の森が保護下に入れられるようになるまで、南進、とかいてあるでしょう?」
嘘だ。・・と思うが、ルカまで、顔にかいてあるかの如く平然と話の流れを踏襲する。
「ということは、とりあえず、王都を中心に、フェルニア人に、昔に戻りたいなぁ的な郷愁を広めたほうがいいな。よし、王城で派手に任命式とかどうだ?ミケがドレス着て、『ルカを南進政策の大将に任命する!』とか言って、俺がミケから花束もらったりする!」
「・・・誰が、王様役?」
ただ、花束渡して頑張って、とか、せいぜい卒業式では?ぜんっぜん盛り上がらないと思う。
「ルカを王にする戴冠式にして、旧フェルニア王族代表のミケから、フェルニアの秘宝の使用を許可される、とかですかね」
と、タイキ。うん、ちゃんとストーリーが付いた。それなら熱狂する奴が出る気がする。
「秘宝、って何にするの?マー君?」
「魔素を仕舞う魔道具で充分・・・ですが、マー君?」
「うん。魔剣のマー君。仲良しなの。ティムマインとも近衛隊長のアドリスとも折り合いが悪くて欲求不満だから、多分喜んで来てくれる」
「魔剣・・本物のフェルニアの国宝、で、仲良し・・ミケ、本当にパチドやめて・・」
タイキが堂々めぐりそうになったところで、ルカがタイキの頭をはたく。
「じゃ、第一段階は、対外国レベルでは、一夜で陣をはれるほどのフェルニアの魔素扱いの別格さを見せつけて、フェルニア人には戴冠式で魔剣披露しながら『戻りてぇ』と思わせる、でいいか?」
「ですね。王城は警備薄いですから、乗っ取って、兵はあそこで寝泊まりですね。士気上げたいので入れるだけ連れて来ましょう。あと、予算は先日の試算で問題ありませんが、こちら側で、売り惜しみされずにどれくらい物資調達できるかの確認がいります」
「了解、了解。実際の南進は、パチドの出方みながらだな。うん、決まり。大した準備いらないし、よし、明晩決行で!」
き、決まりなんだ。
「そうですね。ムーガル王が、グリーンとパチドに帰国命令を出しました。明後日には彼らはムーガルで、チャンスです。私は、商会の手配と、王城の制圧準備をしてきま・・」
こ、こいつら展開が早い!あっという間においていかれそう!
私も、かるた大会根性でがんばる。名誉挽回のためには、とりあえず、手を出す!
「し、商会の手配は、多分、ソナに手伝ってもらうのがいいと思う。ソナと私も最近商売頑張っているから!」
他力本願だけどね!
部屋の隅っこで椅子に腰かけていたソナは、タイキに視線を向けられると、右手の指をパラパラさせた。
任せろ、だよね。相棒。
「あ、れ、知り合いだったっけ?」
「んにゃ、迷宮回廊通ったら、魔素がこの子に赤い糸飛ばしていてさ、運命感じて近づいたら、ミケの家に入れないっていうから連れて来た」
あ・・そう言えば昨日、ソナを見つけてもらう時に迷宮回廊の魔素で赤い糸を作ってそのままだった。
それにしても、ルカの人懐っこさは凄いと思う。若干男嫌いの気があるソナが、すっかり気を許した顔をしている。
「そっか。ソナ、体大丈夫?お医者さん行けた?」
「もちろんよ!じゃなきゃ、ちょっと心配、位で駆けつけてこないわ」
「よかったぁ」
多分、安心させに来てくれたのだ。内臓が傷ついていたら、翌日は、ぐったりと動けなくなってしまうから。
「で、何がどうしてこうなった。ミケが黒い魔素だぁ?ふざけやがって。現物見たこともないやつらが。ムーガル潰すか?」
言い方がなんとなく、見たことあるっぽくて、首をひねる。
「ルカって、黒の魔素、詳しいの?」
「黒すぎて、光が全部吸収されて、自分が立体で生きている自信もなくなる。触れると光が好きな動物は、正気を失って自ら命を絶ちたがるし、あふれ出ると風も波も止まって、ある程度以上溜まると鹿威しみたいに世界が傾いて冥界に呑まれる」
「それは一大事・・っていうか、そういう命がけ、世界がけ、の話ならもうちょっと気合い入れて私を警戒してもいいと思うのよ」
くす、と、タイキが笑った。
「言いがかりが分かり安すぎて、様子を見に来てしまいましたが、落ち着いていらっしゃいますね」
落ち着いてないよー、とばかりに首を横に振る。
「私は現在、パチドに五体投地して許してもらわなきゃいけない罪人状態なの。なのに、パチドが私を人質にされて軍に捕まっちゃって。罪人が足手まといとかゴミ箱直行だから挽回したいけど余計なことして更に怒らせたくないしで、二の足踏みまくり」
「なんだ、ケンカ中か。よし、俺がムーガル脅して『ミケはてめーらに手が出せる女じゃねーぞ』攻撃してやるから、ミケはパチドをポイして俺になびこう!」
「弟相手に耽美な遊びする余裕ないから!心配は嬉しいけど、ルカとタイキとそろって此処に来てくれて大丈夫なの?『黒の魔素容疑で手配=私の周囲100mは無差別攻撃対象』で危ないかも」
まぁ、ルカが巻き添えでムーガル軍にやられるとか想像つかないけれど。
「タイキまで来たのは、俺とタイキの直通通信具に、パチドが割込めるかチェックしてきたせい。前に俺がパチドの前で通信したのを見ただけだから、タイキにしか通じない一方通行なのにな。気になるだろ?」
「パチドが?」
「うん。そのうちなんか連絡が来るだろうけど、待つの苦手だ。新生フェルニアのアピールもそろそろ始めたほうが良さそうだから、一発脅す。ちょうどいい時期だ」
「・・・ほんとに助けてくれる?ほんとうに新生フェルニアにもいい時期?」
そこで、ミケにうるっと見上げられたのが、タイキの方だったので、ルカはぶすくれた。
「なんで、タイキに聞くんだよ」
「ルカは、私に甘すぎだから!国の支柱のシスコン癖で、せっかく頑張っている新生フェルニアに、ご迷惑はかけられないでしょう?」
タイキが笑って答える。
「大丈夫です。自力で生きていくことはできるようになりました。この後、攻めるのか守るのか、もとのフェルニアを捨てるのか戻るのか。決めなければいけないのも本当で、ルカの気がのっているならそれが『時期』です」
うわー、大将のやる気がある時が『時期』か。いいなぁ、らぶらぶ。ルカは女の子にもモテているみたいだけど、タイキの方がいいんじゃないかしら。
「だいたい何考えているか分るぞ、ミケ。違うからな。えーと、じゃ、とりあえず王城に、一夜で壮麗な陣はってみるか?」
「陣?新生フェルニアの兵士をつれてくるの?」
「こないだミケに教えてもらった魔素収納使えば、訓練された兵なら一応タイキの指示で迷宮回廊の中でも動ける。まぁ、1日2日はヘロヘロになるから、戦闘は無理だけど」
「なんつー、ブラック思考!通る時教えてくれたら私が魔素しまうから、気の毒なことしないの。魔素酔いってつらいのよ?」
「「・・・え?」」
タイキとルカの声がかぶり、2人で顔を見合わせたあと、タイキがきいた。
「迷宮回廊の魔素も、しまえるのですか?あの量を?」
「綺麗にしまうのは大変だけど、兵が通る場所だけ避けるなら何とでもなるわよ。あ、魔素関係なく、迷宮回廊だけでパニックになって走っちゃうような人は無理よ?」
もともと迷宮回廊は、精神作用があるは、空間が歪んでいるはで、扱いが難しい。ティムマインなど、在位中に1度も近寄っていないのではなかろうか。
「それは大丈夫だ。魔素の谷を通す練習に、迷宮回廊使ったから。どうパニックになってもこれだけは離すなって言えば、げろげろ吐きながらだろうが紐つかんでついてくる」
「そんなスパルタな練兵して、よく陣をはれる程兵が残ったわね」
「言ったな?これでも、精鋭ぞろいだぞ。他国から入門希望もくるし、子どものなりたい職業No1になったぞ?」
国になってたった1年で、子どものなりたい職業をアンケートしようという余裕が偉い、と思う。
すっかり黙考状態に入っていたタイキが口を開く。
「ミケさま・・」
「ミケで」
この腹黒そうな綺麗顔に様付で呼ばれるのはしんどい。
「あー、ミケ。その、どうしてもパチドがいいですか?」
「は?」
ここで、恋愛相談をしてくれるとも思えず、しかも、その手の感情に疎そうなタイキの口から出たので、脳が情報を処理しきれなかったようだ。ハンバーグの外見したケーキ食べたような間抜けな声が出た。
「一般的には、パチドよりルカの方が女性に人気がありますし、ルカがダメでも、こんな顔とかスリーサイズの理想とか教えていただければ草の根分けても引きずってきますが」
「タイキ、タイキ、落ち着けや。気持ちは分かるが、多分、それ無理・・・」
ルカは彼の気持ちはわかるのか。私は分からんぞ。
「では、ご希望、とか見返りとか、これが欲しいっ!というものを、パチド以外で教えていただけませんか?」
「あ、それならある、魔の森の平穏!」
チャド・フロラインの魔の森だけは、二度と焼かせない。絶対に。
万一、シェドがパチドの、というかムーガル軍の立場を重んじて説得してきたとしても、折れられないものがあるとすれば、それだけだ。
「乗った!!!」
腹黒ムードも吹っ飛ぶがぶり寄りでタイキが叫び、ルカがぽん、と手をうち慣らす。
「魔の森了解です!ええ、ええ、新生フェルニア、全国力を上げて、魔の森を取り戻し、毎年肥料でも、鳥のエサでも付け届け、魔の森に危害を加えようとする奴は、冥界の魔素だろうが殲滅します!なのでぜひ、新生フェルニアサイドの人間に!!」
??
新生フェルニアサイドの人間?
「・・・いや、もちろん、ルカと敵対する気なんて全くないけど、魔の森は王都よりだいぶ南よ?新生フェルニアは、これから、もとのフェルニアを捨てるのか戻るのか決めるのよね?」
「今、決めました。戻って、さらに元のフェルニアよりも、もう少しだけ南進します。具体的にはレーブルとヘルクが魔の森に接している1km分。真南はパチドに仕切らせるか、あの断崖絶壁を結界にしてしまえばすみますから」
「南進・・って、ここ200年達成できていないやつでは?いくら副官でも、そんな大事を独断で・・」
「大丈夫です、ほら、ルカの顔を見てください、王都さっさと取り戻して、魔の森が保護下に入れられるようになるまで、南進、とかいてあるでしょう?」
嘘だ。・・と思うが、ルカまで、顔にかいてあるかの如く平然と話の流れを踏襲する。
「ということは、とりあえず、王都を中心に、フェルニア人に、昔に戻りたいなぁ的な郷愁を広めたほうがいいな。よし、王城で派手に任命式とかどうだ?ミケがドレス着て、『ルカを南進政策の大将に任命する!』とか言って、俺がミケから花束もらったりする!」
「・・・誰が、王様役?」
ただ、花束渡して頑張って、とか、せいぜい卒業式では?ぜんっぜん盛り上がらないと思う。
「ルカを王にする戴冠式にして、旧フェルニア王族代表のミケから、フェルニアの秘宝の使用を許可される、とかですかね」
と、タイキ。うん、ちゃんとストーリーが付いた。それなら熱狂する奴が出る気がする。
「秘宝、って何にするの?マー君?」
「魔素を仕舞う魔道具で充分・・・ですが、マー君?」
「うん。魔剣のマー君。仲良しなの。ティムマインとも近衛隊長のアドリスとも折り合いが悪くて欲求不満だから、多分喜んで来てくれる」
「魔剣・・本物のフェルニアの国宝、で、仲良し・・ミケ、本当にパチドやめて・・」
タイキが堂々めぐりそうになったところで、ルカがタイキの頭をはたく。
「じゃ、第一段階は、対外国レベルでは、一夜で陣をはれるほどのフェルニアの魔素扱いの別格さを見せつけて、フェルニア人には戴冠式で魔剣披露しながら『戻りてぇ』と思わせる、でいいか?」
「ですね。王城は警備薄いですから、乗っ取って、兵はあそこで寝泊まりですね。士気上げたいので入れるだけ連れて来ましょう。あと、予算は先日の試算で問題ありませんが、こちら側で、売り惜しみされずにどれくらい物資調達できるかの確認がいります」
「了解、了解。実際の南進は、パチドの出方みながらだな。うん、決まり。大した準備いらないし、よし、明晩決行で!」
き、決まりなんだ。
「そうですね。ムーガル王が、グリーンとパチドに帰国命令を出しました。明後日には彼らはムーガルで、チャンスです。私は、商会の手配と、王城の制圧準備をしてきま・・」
こ、こいつら展開が早い!あっという間においていかれそう!
私も、かるた大会根性でがんばる。名誉挽回のためには、とりあえず、手を出す!
「し、商会の手配は、多分、ソナに手伝ってもらうのがいいと思う。ソナと私も最近商売頑張っているから!」
他力本願だけどね!
部屋の隅っこで椅子に腰かけていたソナは、タイキに視線を向けられると、右手の指をパラパラさせた。
任せろ、だよね。相棒。
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