68 / 141
68. あなたは綺麗だから
しおりを挟む
たぶん私は、もの凄く混乱、しているのだと思う。
部屋に入って来たパチドが、自分の中にそのまま入って来たような気がした。
どんな術を使われているのかすらわからないまま、自分の時間が定まらなくなって。
シェドに会い始めた3、4歳の頃とか、教育キャンプのときとか、魔の森の幸せなときとか、パチドに甘やかされているところとかが、ころころ切り替わりながら。
おしゃべりな幼少期ミケは、ずっと、パチドに向かって話しているようだ。
ちがうの。
シェドは、汚い私なんて、見たことがないの。
私が『初夜ーっ』って迫ったら、掛け声だと思ったくらい。
シェドは、魔素の好き嫌いが激しいから、わたしがぺぺってしてあげるの。
ピーマンを避けるみたいに上手に。
シェドは、私が、まもるの。
私の1番の夢は、シェドを守って、死ぬことだったけど、失敗して、
2番の夢の、シェドとの約束を守って死ぬことに変わったの。
だって、生きていると、大人になってしまうもの。
チャドさんやシェドと違う生き物になって、別種だと、知ってしまうもの。
私が大人になりたくない理由に、復讐は、関係ないの。
ただ、チャドさん達と、同種だと、思いしらされたくないだけ。
私が汚いのは、いろんな大人が私をゴミ箱にしたからじゃないの。
ただ、チャドさん達と、別種なだけ。
チャドさんは、毎日ご飯をつくってくれるの。三食も!
チャドさんは、熱が出るとおでこを冷やしてくれるの。何度も飲みものをくれるの。大変なのに、すぐに治らなくても、怒ったりしないのよ?
あんなふうに、なりたかった。
まったく。何を言っているかしらねこのミケは。
12才の頃のミケなんて、パチドは知らないのよ?
ま、だいぶシェドの記憶がこぼれているかもしれないけれど、その程度。
パチドが実際に知っているミケは、公妾くずれで、男がたくさん必要で?
あと何だっけ、まぁ、いいや、とにかく、薄汚いぼろくずだ。
それでも、シェドに引きずられて、私に優しくしてくれる。もう、甘々と言っていいくらいに。
うふふ。
私は、この生に、結構、満足、しましたよ。
ありがとう。
すぐ近くに見えるパチドに、ちょっと照れ臭かったけど、一生懸命大人ぶってつたえたのに。
パチドの顔は全然うれしそうじゃない。
それどころか、私の頭を抱えたパチドの唇が切れて、血がにじんでしまう。
俺は、いらないのかって聞いてくる。
まったく、そそっかしい人ね。
もー、涙まで出てるじゃない。
しょーがないなぁ。大サービスよ?
あのね、私、こんなふうに、死にたかった。
シェドの顔に、見送られてさ、好きだって言って、泣いてもらうの。
シェドの顔で、私のために泣いてくれて、ありがとう。
あ、そうだ、抱いてくれたのも、お礼言っとく。
そーゆーのは本物のシェドじゃ無理だからあなたとそうなって嬉しかった。ぐへへ。
私のことは、幸せな女認定で大丈夫だから、秒速で忘れていいわ。
あと、拗らせそうになったときはルカを見本にするのがいいと思うの。あの子はね、目がキラキラしていて、笑顔にパンチ力があるから、女の子がわちゃわちゃよってくる。
声としゃべり方はシェド似だしおすすめ!
だんだんどうでもよいことが気になってきてしゃべり続けているうちに。
パチドの体温が遠ざかっていった。
あー、やっと死ぬんだなって、思う。
もう、ぐちゃぐちゃの死体をどうしようとか、考える頭の隙間がない。
ばっちいして、ぺぺってすてて。
部屋に入って来たパチドが、自分の中にそのまま入って来たような気がした。
どんな術を使われているのかすらわからないまま、自分の時間が定まらなくなって。
シェドに会い始めた3、4歳の頃とか、教育キャンプのときとか、魔の森の幸せなときとか、パチドに甘やかされているところとかが、ころころ切り替わりながら。
おしゃべりな幼少期ミケは、ずっと、パチドに向かって話しているようだ。
ちがうの。
シェドは、汚い私なんて、見たことがないの。
私が『初夜ーっ』って迫ったら、掛け声だと思ったくらい。
シェドは、魔素の好き嫌いが激しいから、わたしがぺぺってしてあげるの。
ピーマンを避けるみたいに上手に。
シェドは、私が、まもるの。
私の1番の夢は、シェドを守って、死ぬことだったけど、失敗して、
2番の夢の、シェドとの約束を守って死ぬことに変わったの。
だって、生きていると、大人になってしまうもの。
チャドさんやシェドと違う生き物になって、別種だと、知ってしまうもの。
私が大人になりたくない理由に、復讐は、関係ないの。
ただ、チャドさん達と、同種だと、思いしらされたくないだけ。
私が汚いのは、いろんな大人が私をゴミ箱にしたからじゃないの。
ただ、チャドさん達と、別種なだけ。
チャドさんは、毎日ご飯をつくってくれるの。三食も!
チャドさんは、熱が出るとおでこを冷やしてくれるの。何度も飲みものをくれるの。大変なのに、すぐに治らなくても、怒ったりしないのよ?
あんなふうに、なりたかった。
まったく。何を言っているかしらねこのミケは。
12才の頃のミケなんて、パチドは知らないのよ?
ま、だいぶシェドの記憶がこぼれているかもしれないけれど、その程度。
パチドが実際に知っているミケは、公妾くずれで、男がたくさん必要で?
あと何だっけ、まぁ、いいや、とにかく、薄汚いぼろくずだ。
それでも、シェドに引きずられて、私に優しくしてくれる。もう、甘々と言っていいくらいに。
うふふ。
私は、この生に、結構、満足、しましたよ。
ありがとう。
すぐ近くに見えるパチドに、ちょっと照れ臭かったけど、一生懸命大人ぶってつたえたのに。
パチドの顔は全然うれしそうじゃない。
それどころか、私の頭を抱えたパチドの唇が切れて、血がにじんでしまう。
俺は、いらないのかって聞いてくる。
まったく、そそっかしい人ね。
もー、涙まで出てるじゃない。
しょーがないなぁ。大サービスよ?
あのね、私、こんなふうに、死にたかった。
シェドの顔に、見送られてさ、好きだって言って、泣いてもらうの。
シェドの顔で、私のために泣いてくれて、ありがとう。
あ、そうだ、抱いてくれたのも、お礼言っとく。
そーゆーのは本物のシェドじゃ無理だからあなたとそうなって嬉しかった。ぐへへ。
私のことは、幸せな女認定で大丈夫だから、秒速で忘れていいわ。
あと、拗らせそうになったときはルカを見本にするのがいいと思うの。あの子はね、目がキラキラしていて、笑顔にパンチ力があるから、女の子がわちゃわちゃよってくる。
声としゃべり方はシェド似だしおすすめ!
だんだんどうでもよいことが気になってきてしゃべり続けているうちに。
パチドの体温が遠ざかっていった。
あー、やっと死ぬんだなって、思う。
もう、ぐちゃぐちゃの死体をどうしようとか、考える頭の隙間がない。
ばっちいして、ぺぺってすてて。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる