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66. 邂逅

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どうやって、部屋に戻り、どうやって邂逅具を決めたのか記憶があやふやだ。
俺が、数分後に手にしていたのは、チャドを貫き12歳のミケの背中に突き立った槍。

チャド・フロラインに、ザリガニの抜け殻扱いされた墓もどきから、許可もえずにぶち抜いてきた。

ここから辿れば、ミケとシェドが離れてからの6年間が辿れる。

槍を自分の胸に当て、邂逅に入る。

邂逅した現実は、当初から、パチドの、いや、シェドの思惑から大きくずれていた。
ミケを安全な南のムーガルまで飛ばしたつもりでいたのに。
バラバラになるシェドを見て、強引に戻ろうと移動する空間内でめちゃくちゃに暴れたミケは、魔の森近くのフェルニアに落ちた。

ミケがシェドとチャドの絆を引き裂いたとまで思いつめた出来事、チャドを置いてミケを抱き上げて走ったのは、そんな深刻なものではなく、ただの分業だった。
フロラインが、家の結界をほっぽって出張ってきて、チャドは任せろというから、任せた。断腸の思いなどしていない、せいぜい盲腸だ、この残念頭。

そもそも、魔術師の軍団が魔の森殲滅をはかったのは、ロロ芋のせいじゃない。ハート型のロロ芋に至っては、フロラインが私も恋がしたいとか、子を産みたいとか、数百歳のくせに謎の回春厨にかかって暴走した副産物で、ミケのせいじゃない。

どっちにしろあんなことの影響は、嫌がらせに安い大砲の鉄の玉が飛んでくるのがせいぜいで。

国の総力を挙げて潰しに来たのは、王の無能がばれたせいで迂回路だった国に離反され、魔の森をぶち抜く以外海に出る道がなくなったからだ。

生きろと言ったのは、罰なんかじゃない。ミケが今にも敵陣につっこんで、自爆まがいの極端な攻撃に出そうだったから、止めたかっただけだ。

シェドが、魔術師なんかにバラバラにされたのも、ミケに煩悩する自分が怖くて、ミケの魔素を断ってヨレヨレだったせいだ。

シェドの魔力がまともで、追いかける事さえ出来ていれば、5分でとけたはずの誤解に、
あの壮大な残念頭は、スケールの違う罪悪感を重ねて、復讐を決意する。
魔の森に手を出した強者たちを根絶やしにして、その決断をした国ごと潰してやると。

寂しがりの、たった12のガキが!

それからは、もう。
ミケが加えられた暴虐は、人が、人に対して行ってよい事では、なかった。
それでも、ミケは、魔素を吐き出すのをやめない。
罰だと、思っているのだ。なんの罰だ、このばか!

心臓の後ろに、ミケが自分の罪の証と誤解している槍傷の横に、ホースを刺されたまま、体は蹂躙され、心は引き裂かれ、魂は焼け爛れた。

そんな、ぼろぼろのミケの背を、両手を鎖で吊られたまま首を垂れたミケの背を、俺が放たせた毒が、侵していく。
ミケは、毒に気づいても、ホースを抜こうとすらせず、祝福を受けたかのようにほほ笑んだ。生きるのが罰でも、殺されるのは罪ではないのだと。

機密書庫をあさったのも、魔素を流すのを拒んだのも、毒の種類を知りたかったから。魔素を辿って来たから、魔素に溶ける毒なのでないかと、彼女は疑った。
魔素を流すのを拒んだのは、毒の入った可能性のある魔素を、シェドが組みこまれた俺に流したくなかっただけだ。

俺は、彼女の気も知らず。
この壮絶な女が、痛みに耐えきれず、ゆるしてくれと泣き叫ぶまで、毒で痛めつけた背中を責め弄ったのか。

熱に浮かされながら、もう、死んでも許してくれるのかと、聞いた。
体が弱って、消えようとしたのは、ミケに惚れたパチドに、元気を装いたかったからだ。
邂逅を拒否したのすら、ミケの苦痛と死を、シェドのものかもしれない目に移すのが嫌だっただけだ。

全て、パチドのため。パチドのパーツがシェドだったいうだけの理由で!
そんなことが、俺のためだと、思ったのか?
泣いてないで、パチドを、殺してでもシェドのパーツを引っぺがして取り返せばよかっただろうが、残念頭・・・

何時間、ミケの過去を見ていたのだろう。
邂逅から覚めると、槍は、胸にめり込んで、血だまりが出来ていた。

槍を握る手に、力が入り過ぎたらしい。

自分のしたことが苦しくて、後悔が津波のようで、自傷して緊張度を下げる奴の気持ちがわかったけれど、そんなことをしている時間はなくて。

ミケは、どこだ。
その血、全部俺と入れ替えてでも、死なせない。
かわりに俺が死んでも、ミケに伝えなきゃいけないことがあるのだ。

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