ひどくされても好きでした

白い靴下の猫

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61. 背中のタイムリミット

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せっかく直して、もらったのに、な。ミケはしょんぼり気味だ。
ぶり返しながら酷くなっていく背中の痛みは、きっとタイムリミットを主張しているのだろう。
じくじく、じくじく。

毒が限界まで回ったせいだと思う。
抵抗力、というのだろうか、体の中の調整能力が急激に落ちた。

数日前にライヒを操るために、体に取り込まざるを得なかった奴の魔力が、私の魔素とケンカをしている。少し前なら、簡単にポイだった。

それなのに今はあいつの気持ちの悪い妄執にすら負けて、免疫疾患状態。質の悪い魔力に狂わされていく自分の魔素で、体が焼けただれていくようだ。

相性の悪い魔力が体に混ざるだけでこんなにも体を蝕むなんて。
昔のシェドは、どんなにつらかったろうと、考える。
アレルギー全開なのに、周りの大人の都合で嫌いな魔素をどくどくと注がれて。それでも11のミケを心配して一緒に居てくれた。

最近は、ご飯を食べるのも一苦労。
大好きなロロ芋のシチューが飲み込めないとか、いきものとしてアウトではないかと思う。

パチドが私の不調に気づいてしまったのは、顔を見ただけでわかった。
シェドがパチドで、パチドがシェド、な顔。

『おわり』は寂しいけれど、悲しみでも、不幸でも、ない。

チャドさんに会いたくて、チャド・フロラインに会えた。

フロラインに会いたくて、チャド・フロラインに会えた。

シェドに会いたくて、シェドみたいなパチドに会えた。

彼らにひどいことをした奴らと王国には、きっちり仕返ししてやった。

可愛い弟分と仲間と避難した人は、新しい生活を始めることが出来て、なんとその中には姉もいた。

それから、シェドみたいなパチドと、エッチした!てへへ。

これを不幸と呼ぶのは、例えお天道様が許しても私がゆるさない。

だから。悲しみでも、不幸でも、ない『おわり』に行こう。


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