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14. 5才のシェドの受難

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5才の時、シェドは大熱を出した。

母親がつきっきりで看病して、夜通し冷たくて気持ちがいい魔素を流してくれて。
俺はうとうとしていて、王と王妃が見舞いに来たなんて全然知らなかった。

そして、母の制止をただの遠慮だとでもおもったのか、振り切れた王妃が、俺に魔素を流したのだ。
治癒目的で悪意はなかったのかもしれない。

が、母だと思って、何の警戒もせずに体に合わない魔素を取り込んでしまった俺の魔力は大暴走に入り、振り払った俺の手で、王妃は壁までふっとんだ。
止めようとして俺に触れた王の側近も、手から煙をあげて、飛び退った。

近衛がなだれ込んでくる中、母は俺に覆いかぶさるようにして抱きしめ、俺の熱は、母の体を焼いた。母の半身が焼け落ちる程の熱だった。

公にするわけにはいかなかったのだと思う。
たかだか5才の子供の魔力暴走も止められない王と側近、庶子とはいえ王の子に受け入れられない魔素の王妃、どっちも世間受けが最悪だから。

私的に行われた見舞いで、なだれ込んだ近衛も数人。
父はかん口令を敷いて、この出来事を闇に葬った。
おかげで俺はおとがめなしだったが、母の治療も行われず、父は二度と現れなかった。

俺はそのあと何度も母に治癒魔法をかけた。
それでも母の体には、いまだに治癒しきれない引き攣れが遺っている。
あの場にいたのが今の俺だったなら、母を治せたと思う。だが、5才の俺の体も魔力も、俺の意志通りに動きはしなかった。

拙い技術で何度も下手な治癒をして、痛かったはずなのに、母は、「上手だ、嬉しい」と俺をほめちぎり、内緒だと言いながら「本当は、母さん、王様来ない方が楽でいいの」と片目をつぶってみせた。
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