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76☆耐えがたい秘密
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僕の師匠になったせいで、12のユオに焼孔があいた。
17才の僕が消化できない事実を、7才の僕に言えなかったなんて、当たり前だ。きっと知ったところで泣くばかりで、何もできなかった。乳母が殺された時のように。
僕の力が増え続けて、魔獣も兄弟も厄災すら怖くなくなった頃、18のユオに二つ目の焼孔。国境でトラップに使われたユオの悲鳴は、この時のものだ。焼孔でユオが暴発したら、第5皇子の力を分析する必要があるからという理由で、詳細に記録された。
僕がユオの制止を振り切って、がむしゃらな蘇生の実験を繰り返し、異様なほどに攻撃系の能力が伸びた頃だ。
今思えば、精神的にアンバランスだった気がする。
中央軍が、王族が、セズが、どれもゴミのように見えるようになったし、不定期に怒りや焦りの塊がせりあがって暴れそうになった。
ユオを見さえすれば、すぐに収まるから深く考えたことはなかったけれど。
あの頃の僕に、『中央に焼き孔をあけられた』『焼き孔を通じて力が漏れると厄災が酷くなるから、治癒は受けない』とユオが正直に告げたら?
ユオの意志を全力でへし折ってでも我を通しただろう。
王都も軍部も司法府も踏みつぶして、厄災をかたずけることもなく、人々に悪魔と呼ばれようがユオの治癒だけを目指したと思う。
そんな危険物に事実を言えなかったなんて、当たり前だ。
ユオの秘密にも、ユオが僕を信じないことにも、理由があり、根拠となる事実があった。
でもユオは、今でも僕にトレーニングをやめさせたがっている。
力が伸びるから?
すでに、厄災対応にも、中央に対するにも、死を操作するにも困らないから、これ以上伸びても、僕の自己満足以外、何も変わらない気がするのに。ユオにとっては違う。
何を見落としているのだろう。
僕は、見落としを見つけようと、僕が治癒したクローンの女の子を探し始め、しょっぱなから躓いた。
驚くほどに見つからず、僕の中の彼女の記憶が、薄められていることに気づく。ユオの、夢誘導の、跡。
それだけで、予測がついた。あの女の子は、きっと死んでいる。
僕の記憶からではなく、盗難記録と犯罪歴がある死んだクローンの女性体、という視点で探せば、すぐに見つかった。21才。他のクローン体と何も変わらない亡くなり方をしたそうだ。
能天気だった。
僕は、まだ、クローン体の寿命を延ばせない。
トレーニングをすればいつかは?そこまで考えて、ひどく冷たい答えがせりあがる。
・・・ユオは、僕がそう思うことを嫌がったのだ。
もう焼孔もないのに。僕に治癒されることを、僕と生きることを、嫌がった。
自分の中に、もぐる。もぐる、もぐる。ユオの夢誘導の跡を探して。
痕跡は、どれも本当に些細だった。
お腹がいっぱいになれば、食べ物のことを考えなくなります。
釣った魚が餌を食べなくても、気にしてはいけません。
思春期に家庭教師の先生に憧れるような感情を、はしかと呼びます。
はしかは治る病気です。
僕の思考や精神の土台には影響がないように、細心の注意が払われた、簡素で、平坦な誘導に、見える。
紐づけられた場面が、僕のユオへの執着でさえなければ。
ユオが、僕を愛して、欲を感じて、一緒に寝てくれている訳ではないと、知っていた。
でも、ここまでとは。
僕が、満足して眠るたびに、僕のユオへの執着が減るように夢誘導するほどの、ここまでひどい拒絶だったとは。
はは。僕の、ユオへの想いははしかで、ユオが僕に体を触れさせてくれるのは、はしかの治療で?僕が、まだクローンの寿命を延ばせない事実を隠して、能力を伸ばさないように?
これを、ユオが次の死を準備している以外にどう解釈しろと?
ユオが求めているのは、ユオの死を悲しまない僕?
ユオに去られるたびに、気が狂いそうだった。いや、多分狂っていた。
あれを、繰り返せと?
いっそ、ぼくをころして。
ユオの死を悲しまない僕を作りたいなら、そんな手間暇をかけなくたって、ころしてくれればよかった。
僕のせいで、痛くて、苦しくて、我慢できない生だったと。死んで詫びろと言われれば二つ返事で従ったのに。
僕を見切ってしまったのはいつ?
毎日のように大好きって言ってくれた師匠は、どこまでが本当で、どこからが嘘?
愛している、愛している、愛している。
それを拒絶されていたのに。
僕を全身全霊で守り、僕を心の底から大事にしてくれたユオを、こんなにも遠ざける程の痛みを与えた自分が、嫌でたまらない。
それでも愛しているとユオに縋りそうな自分が、ただの行き違いかもしれないと儚い希望を持つ自分が、嫌でたまらない。
愛している、狂っていく。
愛している、もう、狂っている。
ユオ、ユオ、ゆお・・・
17才の僕が消化できない事実を、7才の僕に言えなかったなんて、当たり前だ。きっと知ったところで泣くばかりで、何もできなかった。乳母が殺された時のように。
僕の力が増え続けて、魔獣も兄弟も厄災すら怖くなくなった頃、18のユオに二つ目の焼孔。国境でトラップに使われたユオの悲鳴は、この時のものだ。焼孔でユオが暴発したら、第5皇子の力を分析する必要があるからという理由で、詳細に記録された。
僕がユオの制止を振り切って、がむしゃらな蘇生の実験を繰り返し、異様なほどに攻撃系の能力が伸びた頃だ。
今思えば、精神的にアンバランスだった気がする。
中央軍が、王族が、セズが、どれもゴミのように見えるようになったし、不定期に怒りや焦りの塊がせりあがって暴れそうになった。
ユオを見さえすれば、すぐに収まるから深く考えたことはなかったけれど。
あの頃の僕に、『中央に焼き孔をあけられた』『焼き孔を通じて力が漏れると厄災が酷くなるから、治癒は受けない』とユオが正直に告げたら?
ユオの意志を全力でへし折ってでも我を通しただろう。
王都も軍部も司法府も踏みつぶして、厄災をかたずけることもなく、人々に悪魔と呼ばれようがユオの治癒だけを目指したと思う。
そんな危険物に事実を言えなかったなんて、当たり前だ。
ユオの秘密にも、ユオが僕を信じないことにも、理由があり、根拠となる事実があった。
でもユオは、今でも僕にトレーニングをやめさせたがっている。
力が伸びるから?
すでに、厄災対応にも、中央に対するにも、死を操作するにも困らないから、これ以上伸びても、僕の自己満足以外、何も変わらない気がするのに。ユオにとっては違う。
何を見落としているのだろう。
僕は、見落としを見つけようと、僕が治癒したクローンの女の子を探し始め、しょっぱなから躓いた。
驚くほどに見つからず、僕の中の彼女の記憶が、薄められていることに気づく。ユオの、夢誘導の、跡。
それだけで、予測がついた。あの女の子は、きっと死んでいる。
僕の記憶からではなく、盗難記録と犯罪歴がある死んだクローンの女性体、という視点で探せば、すぐに見つかった。21才。他のクローン体と何も変わらない亡くなり方をしたそうだ。
能天気だった。
僕は、まだ、クローン体の寿命を延ばせない。
トレーニングをすればいつかは?そこまで考えて、ひどく冷たい答えがせりあがる。
・・・ユオは、僕がそう思うことを嫌がったのだ。
もう焼孔もないのに。僕に治癒されることを、僕と生きることを、嫌がった。
自分の中に、もぐる。もぐる、もぐる。ユオの夢誘導の跡を探して。
痕跡は、どれも本当に些細だった。
お腹がいっぱいになれば、食べ物のことを考えなくなります。
釣った魚が餌を食べなくても、気にしてはいけません。
思春期に家庭教師の先生に憧れるような感情を、はしかと呼びます。
はしかは治る病気です。
僕の思考や精神の土台には影響がないように、細心の注意が払われた、簡素で、平坦な誘導に、見える。
紐づけられた場面が、僕のユオへの執着でさえなければ。
ユオが、僕を愛して、欲を感じて、一緒に寝てくれている訳ではないと、知っていた。
でも、ここまでとは。
僕が、満足して眠るたびに、僕のユオへの執着が減るように夢誘導するほどの、ここまでひどい拒絶だったとは。
はは。僕の、ユオへの想いははしかで、ユオが僕に体を触れさせてくれるのは、はしかの治療で?僕が、まだクローンの寿命を延ばせない事実を隠して、能力を伸ばさないように?
これを、ユオが次の死を準備している以外にどう解釈しろと?
ユオが求めているのは、ユオの死を悲しまない僕?
ユオに去られるたびに、気が狂いそうだった。いや、多分狂っていた。
あれを、繰り返せと?
いっそ、ぼくをころして。
ユオの死を悲しまない僕を作りたいなら、そんな手間暇をかけなくたって、ころしてくれればよかった。
僕のせいで、痛くて、苦しくて、我慢できない生だったと。死んで詫びろと言われれば二つ返事で従ったのに。
僕を見切ってしまったのはいつ?
毎日のように大好きって言ってくれた師匠は、どこまでが本当で、どこからが嘘?
愛している、愛している、愛している。
それを拒絶されていたのに。
僕を全身全霊で守り、僕を心の底から大事にしてくれたユオを、こんなにも遠ざける程の痛みを与えた自分が、嫌でたまらない。
それでも愛しているとユオに縋りそうな自分が、ただの行き違いかもしれないと儚い希望を持つ自分が、嫌でたまらない。
愛している、狂っていく。
愛している、もう、狂っている。
ユオ、ユオ、ゆお・・・
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