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75☆お昼休みのクレーム係さん
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クーラーがきいていて、湿気が少ない快適な部屋に、ごとん。妙に軽めの音をたてて、私が転がった。
「え・・ユオ、ですか?」
って、クレーム係さんの声がする。
あ、れ?
デジャビュ。
口も開けない肉片になって、クレーム係さんの前に落ちてた経験って、確か初めてじゃない。
すくい上げられて、視点が浮上。
「って、ユオの、左手さんだけ?本体どうしました?」
あー。ケバケバが、電磁強制で使うとは思えないような大容量流そうとするから、自分とこで電流遮断した。やべ、私、死んじゃった?
「ここにいるのがあなただけってことは、まだ本体はお亡くなりではないですけれど、無事でもないかと。お疲れでしょう?本体が来るまでゆっくりなさっていてください」
本体、は、まだ年単位で来ないと思いますケド。
ユオの本分は攻撃だし、キルヤ様も向かっていたし、きっと何とかしたハズだ。
「ここに来る、というだけで、あなたはとても酷い負荷を抜けてきているんですよ」
「??」
いえ、それほどでも?
バチンって一瞬でしたし。
「おかしいですね。死の経験は、とてつもなく人を消耗させるようにできているので・・って、ひょっとしてそこらへんの疲れ、本体のほうに置いてきました?!」
え。意識してないけど、そうかも?
頭使うのは本体のほうが得意だから、普段から思考丸投げだし・・・って、なにをそんなに慌てておられるので?
「のっ、のぞいてみましょう!最近は、労働環境の改善が叫ばれて、強制的にお昼休みがとらされるので、私はこれから1週間分の昼休みしますっ!」
そういって菓子パンを握ったままPC操作しようとするから、とりあえずパンを口のそばで持っていてあげながら、数秒。
画面にうつったのは、意識なくぐらぐらの油を吹き出しながらサフラに押さえつけられているど修羅場なユオだった。
げ。なにやってんのさ。
「なんてこと・・生身の人の子が、こんなに多くの死の負荷をうけて・・クローン体の転移紋がつかえるはずですから、これ以上負荷をかけずに今すぐ呼びましょう」
転移紋、って、サフラが研究していたあの転移紋?ってことは、呼ぶと、死んでしまいます?
そもそも、あれって負荷なしで死ぬためのものなの?
「転移紋は、二次生物・・あー、神様以外が生み出してしまった生命ですね・・を適切な時期に回収する装置です。苦痛も恐怖も介在させないので安心してください」
わーっ、ちょっと待ってください、お願い、まって!
ユオ、少なくとも数分前までは、死にたがっていなかったですからっ。むしろ1日でも長くって願っていて、その願いが強すぎるから、私が自分のところで電流遮断したんですーっ。
「ユオは、最初も2回目も今回も、システムがエラー判定するような死を通ってしまったんですよ?どんなに疲れていることか」
ユオが疲れてるのは、どちらかというとタイムリミットに対してでしてっ。
他は私がマッサージでもしてやれば治りますから、転移紋はなしでっ。
ってか、いっそ転移紋消せませんか⁉あれがあるからサフラが暴走するんで、消しちゃえばサフラもユオをマッサージできるようになって、あっという間に回復です‼
「そう、なのですか?転移紋がストレス?でもあれ、人には見えませんよ?」
サフラには見えちゃってるんです!
「あ・・・次元ごと崩す威力のサフラさん?災害対策費使わずにキャラメルのおまけレベルの金額ですませたから、サフラさんそのままですもんね。ありうるか」
しゅん。
その金額って、私たちのクローン費用でしょうか。せっかく用立てていただいたのに、早速半壊させちゃってすみません。でも、サフラが直しますから。
「サフラさんは、あんなにも疲れたユオを癒せるのです?」
ユオべったりの甘々星人ですから、大丈夫です!やればできる子!私が、責任もって、全身全霊かけて、何とかさせますからっ!
「・・・。そういうことなら。えーと、転移紋って消せたかなぁ。確か取説がここらへんに・・・
がさがさごそごそ
・・・だめだ、書庫までいかないと」
クレーム係さんは、残りのパンを口に押し込み、目録と鍵束を両手もち、私を脇に挟んだまま書庫へと踏み込んだ。
背表紙で地平線ができているのではないかと疑いたくなるほどの紙の道が、クレーム係さんの足元を高速で滑っていく。
目録を手にしたクレーム係さんは、ときたま「えい!」と掛け声をあげながら色とりどりの冊子を蹴り上げては、ぱらぱらぱらめくる。
図鑑、カタログ、説明書。どれも転移紋については1行記載。
転移紋は、疑似生命の印。
神に生み出された本物の生命が、好き勝手に都合の良い生命ばかりを作り始めたときの「折衷案」。
生まれる時に、本物の生命の2~3割の寿命に設定されて自動印刷。
うーん、無機質~。人情に訴えようにも気にしてくれる窓口がない感じ?
大概あきらめかけたところで、クレーム係さんが分厚い冊子を引っ張り出して顔を突っ込む。
文言解釈つき法令集?
神に生み出されていない生命を分類することを目的とし、主に人が生み出すクローンに付すものとする。
輪廻システムの混乱を防止するため、疑似生命の転移紋を消すことは認めない。
「よし、じゃぁ、消してもいいですね」
へ?どこが?
「今回のユオは私が作ったので、人間が作ったクローンじゃありません。だから、転移紋はミスプリ。放置してシステム障害が起きたらうちの会社の責任ですし、サラリーマンが上役のミスを隠ぺいするのは世の習い。ってことで、消しちゃいましょう」
く、クレーム係さん、思ったより困ったちゃん社員?!
「ふふ。デリートキーひとつ推すのに、こんなに慎重なのですから、良い社員ですとも。さぁ、おもどりなさい。ユオに・・幸せなユオに、よろしく」
幸せな、ユオ。
そうだ、もどらないと。あの頭でっかち、すぐに煮詰まるんだから。へへ、やっぱり私がいないとね。
「え・・ユオ、ですか?」
って、クレーム係さんの声がする。
あ、れ?
デジャビュ。
口も開けない肉片になって、クレーム係さんの前に落ちてた経験って、確か初めてじゃない。
すくい上げられて、視点が浮上。
「って、ユオの、左手さんだけ?本体どうしました?」
あー。ケバケバが、電磁強制で使うとは思えないような大容量流そうとするから、自分とこで電流遮断した。やべ、私、死んじゃった?
「ここにいるのがあなただけってことは、まだ本体はお亡くなりではないですけれど、無事でもないかと。お疲れでしょう?本体が来るまでゆっくりなさっていてください」
本体、は、まだ年単位で来ないと思いますケド。
ユオの本分は攻撃だし、キルヤ様も向かっていたし、きっと何とかしたハズだ。
「ここに来る、というだけで、あなたはとても酷い負荷を抜けてきているんですよ」
「??」
いえ、それほどでも?
バチンって一瞬でしたし。
「おかしいですね。死の経験は、とてつもなく人を消耗させるようにできているので・・って、ひょっとしてそこらへんの疲れ、本体のほうに置いてきました?!」
え。意識してないけど、そうかも?
頭使うのは本体のほうが得意だから、普段から思考丸投げだし・・・って、なにをそんなに慌てておられるので?
「のっ、のぞいてみましょう!最近は、労働環境の改善が叫ばれて、強制的にお昼休みがとらされるので、私はこれから1週間分の昼休みしますっ!」
そういって菓子パンを握ったままPC操作しようとするから、とりあえずパンを口のそばで持っていてあげながら、数秒。
画面にうつったのは、意識なくぐらぐらの油を吹き出しながらサフラに押さえつけられているど修羅場なユオだった。
げ。なにやってんのさ。
「なんてこと・・生身の人の子が、こんなに多くの死の負荷をうけて・・クローン体の転移紋がつかえるはずですから、これ以上負荷をかけずに今すぐ呼びましょう」
転移紋、って、サフラが研究していたあの転移紋?ってことは、呼ぶと、死んでしまいます?
そもそも、あれって負荷なしで死ぬためのものなの?
「転移紋は、二次生物・・あー、神様以外が生み出してしまった生命ですね・・を適切な時期に回収する装置です。苦痛も恐怖も介在させないので安心してください」
わーっ、ちょっと待ってください、お願い、まって!
ユオ、少なくとも数分前までは、死にたがっていなかったですからっ。むしろ1日でも長くって願っていて、その願いが強すぎるから、私が自分のところで電流遮断したんですーっ。
「ユオは、最初も2回目も今回も、システムがエラー判定するような死を通ってしまったんですよ?どんなに疲れていることか」
ユオが疲れてるのは、どちらかというとタイムリミットに対してでしてっ。
他は私がマッサージでもしてやれば治りますから、転移紋はなしでっ。
ってか、いっそ転移紋消せませんか⁉あれがあるからサフラが暴走するんで、消しちゃえばサフラもユオをマッサージできるようになって、あっという間に回復です‼
「そう、なのですか?転移紋がストレス?でもあれ、人には見えませんよ?」
サフラには見えちゃってるんです!
「あ・・・次元ごと崩す威力のサフラさん?災害対策費使わずにキャラメルのおまけレベルの金額ですませたから、サフラさんそのままですもんね。ありうるか」
しゅん。
その金額って、私たちのクローン費用でしょうか。せっかく用立てていただいたのに、早速半壊させちゃってすみません。でも、サフラが直しますから。
「サフラさんは、あんなにも疲れたユオを癒せるのです?」
ユオべったりの甘々星人ですから、大丈夫です!やればできる子!私が、責任もって、全身全霊かけて、何とかさせますからっ!
「・・・。そういうことなら。えーと、転移紋って消せたかなぁ。確か取説がここらへんに・・・
がさがさごそごそ
・・・だめだ、書庫までいかないと」
クレーム係さんは、残りのパンを口に押し込み、目録と鍵束を両手もち、私を脇に挟んだまま書庫へと踏み込んだ。
背表紙で地平線ができているのではないかと疑いたくなるほどの紙の道が、クレーム係さんの足元を高速で滑っていく。
目録を手にしたクレーム係さんは、ときたま「えい!」と掛け声をあげながら色とりどりの冊子を蹴り上げては、ぱらぱらぱらめくる。
図鑑、カタログ、説明書。どれも転移紋については1行記載。
転移紋は、疑似生命の印。
神に生み出された本物の生命が、好き勝手に都合の良い生命ばかりを作り始めたときの「折衷案」。
生まれる時に、本物の生命の2~3割の寿命に設定されて自動印刷。
うーん、無機質~。人情に訴えようにも気にしてくれる窓口がない感じ?
大概あきらめかけたところで、クレーム係さんが分厚い冊子を引っ張り出して顔を突っ込む。
文言解釈つき法令集?
神に生み出されていない生命を分類することを目的とし、主に人が生み出すクローンに付すものとする。
輪廻システムの混乱を防止するため、疑似生命の転移紋を消すことは認めない。
「よし、じゃぁ、消してもいいですね」
へ?どこが?
「今回のユオは私が作ったので、人間が作ったクローンじゃありません。だから、転移紋はミスプリ。放置してシステム障害が起きたらうちの会社の責任ですし、サラリーマンが上役のミスを隠ぺいするのは世の習い。ってことで、消しちゃいましょう」
く、クレーム係さん、思ったより困ったちゃん社員?!
「ふふ。デリートキーひとつ推すのに、こんなに慎重なのですから、良い社員ですとも。さぁ、おもどりなさい。ユオに・・幸せなユオに、よろしく」
幸せな、ユオ。
そうだ、もどらないと。あの頭でっかち、すぐに煮詰まるんだから。へへ、やっぱり私がいないとね。
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