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72☆自動清掃ロボ
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サフラにばれた・・・
一つ目の焼孔が開けられたのが、師匠になる叙任式の時だったこと。
7才の頃の記憶なんて、良くもまぁさかのぼれたものだ。
どこで、しくじったかなぁ。
前世からずっと死に近かったから。ブラック企業のシステムエラーとやらで、転生先が腰かけ扱いだったから。
老い先短い12歳が腎臓売って、食料と定住を買いました、なんて、ありがちな話だとのみこんで。
腎臓裏から通じた孔が、厄災の次元にツーツーなんて、想定外だった。
気付いたのは、火山に足が生えたような異質な厄災が襲ってきたとき。
私の体力やら攻撃力やらが、急激に落ちていく時期だった。
体調不良を疑われたくなくて、戦力外を承知で前線に出た私を、あの火山は攻撃しなかった。ガーディアン達は、私の力だと思ったようだ。でも私は、私を避けたマグマの中に、微かだけれど、サフラの金色を見た。
ゲロゲロ、って思ったよ。
サフラが私に力を注げば注ぐほど、私ではなく厄災が育つ。それだけでも大問題だけれど、そもそも、厄災が私を攻撃しなくなるとか、どんな力だ。
時を同じくして、サフラの治癒能力が、治癒能力の枠を超えはじめた。一般的な治癒は、回復の早回しだというのに、難無く欠損を再生し、重病者をグロス単位で蘇生させ、こと切れた魔獣に命すら吹き込もうとする。
その行きつくところは、もう、生命樹としか言いようのない孤高の力。
この世界の初めにしておわり。すべての源となる金色の泉の命脈。そんな風に言い方を飾ればお伽話位にはなれるのかもしれないけれど、その実態はクレーム係さんたちのパソコンで、中身が散らかりすぎる動くデフラグツールだ。
つまる目的は、とある世界の自己おかたづけ。
王やら神やら不死やらになりたきゃともかく、普通に考えたら、貧乏くじとしか表現しようがない。他者って言う概念すら消してひとつの世界を畳む、そんな命のお片付けツールになるなんて、誰得?
ちょっと想像してみればわかる。
生命樹として完成してしまえば、地質学的な年代スケールで死ねない間に、世界が自分になっていく。
それも、自分の子孫が増えていく、みたいなマイルドなヤツじゃなくて、手を差し伸べたあらゆる生き物から自由意志が消えていくパターン。
悪いとは、言いませんよ。
いくらブラック企業を作って神様社員を働かせたって、星の数ほどある世界を全部手作業で管理するなんてとっても非効率だと言うことは、私だって理解できる。
下界側にしたって、そこら辺の幼稚園で将来の夢を聞いたら、不老不死で世界の覇王になりたい!って叫ぶ奴位出る。中央じゃ真剣にそれ狙って殺し合いしているし。
だから、人間が神様就職する出世コースでギブアンドテイク、とか、次元をまたにかけた自動清掃ロボットの何が悪い、って思えば、需要も供給もあるのだろう。
でもね。うちのサフラは、とても寂しがり屋なのだ。
生命樹は、少なくとも、がんばって長生きした暁には、殺された乳母がご褒美抱っこをしてくれるのだといいながら、あきらかに美味しくない魔物を涙目で食べるお子様が、なりたがる職業じゃ、ない。
お気に入りの師匠の病気を治してあげたくて頑張って勉強していたら、いつの間にか独りぼっちのお掃除ロボになっていました、とか、ちょっとないわぁ。
それで、私は、サフラのトレーニングの邪魔ばっかりする、堕落名人な師匠になっていった。
あそぼー、さぼろー、ごはんしよー。
貢いで、甘やかして、一緒にいてー。
趣味と実益を取り混ぜて、そりゃぁもう幸せでしたとも。
サフラはもちろん天才だし、賢いのも、王子達より断然才豊かなのも、努力までできちゃうのも知っていたけれど、師匠がここまでぼろけりゃ差し引きゼロよねって。
甘かったけどさ。
私の体調は、どんどん下を向く。当たり前だ、寿命が近い。
サフラは、強引にでも治癒しようとする。仕方がない、師匠大好き弟子だ。
厄災はどんどん過激になる。当然だ、金色の極上燃料が過剰供給されている。
事ここに至って、さすがの私も弟子離れを決意せざるを得なくなった。
クレーム係さんの試作品な夢入場券、基本的な作用は、精神誘導の能力に似ているから。なりふりかまわずつかってみようともした。
最高レベルの精神誘導系の能力者になると、人格に関わるような、考え方や好悪の念まで操ったり、味覚とかの五感の感じ方をかえさせたりすらできるのだ。
成長にしたがって家族や師匠に目が向かなくなるレベルの自然な過程位、誘導できるだろうと。
でも夢入場券頼りの私は、精神誘導の能力者としては、いまいちだったらしく、あえなく全敗。
万策尽き、嫁に行ってやると物理的に家を飛び出して、事故にあった。
大概あきらめればいいものを、無駄に根性を発揮して帰還。
本当に八方ふさがっていたから。
使えるものは使ってなんぼ、カラダ使って風穴開けられるなら御の字、という左手の考え方は、それなりに新鮮な突破口ではあった。
どうせ遠からず土にかえるんだからうだうだすんな、って言ってくれるやつがいるのはなかなかいいものだ。
先の行き止まり感が半端なかろうが、すくなくとも寂しくはない。
一つ目の焼孔が開けられたのが、師匠になる叙任式の時だったこと。
7才の頃の記憶なんて、良くもまぁさかのぼれたものだ。
どこで、しくじったかなぁ。
前世からずっと死に近かったから。ブラック企業のシステムエラーとやらで、転生先が腰かけ扱いだったから。
老い先短い12歳が腎臓売って、食料と定住を買いました、なんて、ありがちな話だとのみこんで。
腎臓裏から通じた孔が、厄災の次元にツーツーなんて、想定外だった。
気付いたのは、火山に足が生えたような異質な厄災が襲ってきたとき。
私の体力やら攻撃力やらが、急激に落ちていく時期だった。
体調不良を疑われたくなくて、戦力外を承知で前線に出た私を、あの火山は攻撃しなかった。ガーディアン達は、私の力だと思ったようだ。でも私は、私を避けたマグマの中に、微かだけれど、サフラの金色を見た。
ゲロゲロ、って思ったよ。
サフラが私に力を注げば注ぐほど、私ではなく厄災が育つ。それだけでも大問題だけれど、そもそも、厄災が私を攻撃しなくなるとか、どんな力だ。
時を同じくして、サフラの治癒能力が、治癒能力の枠を超えはじめた。一般的な治癒は、回復の早回しだというのに、難無く欠損を再生し、重病者をグロス単位で蘇生させ、こと切れた魔獣に命すら吹き込もうとする。
その行きつくところは、もう、生命樹としか言いようのない孤高の力。
この世界の初めにしておわり。すべての源となる金色の泉の命脈。そんな風に言い方を飾ればお伽話位にはなれるのかもしれないけれど、その実態はクレーム係さんたちのパソコンで、中身が散らかりすぎる動くデフラグツールだ。
つまる目的は、とある世界の自己おかたづけ。
王やら神やら不死やらになりたきゃともかく、普通に考えたら、貧乏くじとしか表現しようがない。他者って言う概念すら消してひとつの世界を畳む、そんな命のお片付けツールになるなんて、誰得?
ちょっと想像してみればわかる。
生命樹として完成してしまえば、地質学的な年代スケールで死ねない間に、世界が自分になっていく。
それも、自分の子孫が増えていく、みたいなマイルドなヤツじゃなくて、手を差し伸べたあらゆる生き物から自由意志が消えていくパターン。
悪いとは、言いませんよ。
いくらブラック企業を作って神様社員を働かせたって、星の数ほどある世界を全部手作業で管理するなんてとっても非効率だと言うことは、私だって理解できる。
下界側にしたって、そこら辺の幼稚園で将来の夢を聞いたら、不老不死で世界の覇王になりたい!って叫ぶ奴位出る。中央じゃ真剣にそれ狙って殺し合いしているし。
だから、人間が神様就職する出世コースでギブアンドテイク、とか、次元をまたにかけた自動清掃ロボットの何が悪い、って思えば、需要も供給もあるのだろう。
でもね。うちのサフラは、とても寂しがり屋なのだ。
生命樹は、少なくとも、がんばって長生きした暁には、殺された乳母がご褒美抱っこをしてくれるのだといいながら、あきらかに美味しくない魔物を涙目で食べるお子様が、なりたがる職業じゃ、ない。
お気に入りの師匠の病気を治してあげたくて頑張って勉強していたら、いつの間にか独りぼっちのお掃除ロボになっていました、とか、ちょっとないわぁ。
それで、私は、サフラのトレーニングの邪魔ばっかりする、堕落名人な師匠になっていった。
あそぼー、さぼろー、ごはんしよー。
貢いで、甘やかして、一緒にいてー。
趣味と実益を取り混ぜて、そりゃぁもう幸せでしたとも。
サフラはもちろん天才だし、賢いのも、王子達より断然才豊かなのも、努力までできちゃうのも知っていたけれど、師匠がここまでぼろけりゃ差し引きゼロよねって。
甘かったけどさ。
私の体調は、どんどん下を向く。当たり前だ、寿命が近い。
サフラは、強引にでも治癒しようとする。仕方がない、師匠大好き弟子だ。
厄災はどんどん過激になる。当然だ、金色の極上燃料が過剰供給されている。
事ここに至って、さすがの私も弟子離れを決意せざるを得なくなった。
クレーム係さんの試作品な夢入場券、基本的な作用は、精神誘導の能力に似ているから。なりふりかまわずつかってみようともした。
最高レベルの精神誘導系の能力者になると、人格に関わるような、考え方や好悪の念まで操ったり、味覚とかの五感の感じ方をかえさせたりすらできるのだ。
成長にしたがって家族や師匠に目が向かなくなるレベルの自然な過程位、誘導できるだろうと。
でも夢入場券頼りの私は、精神誘導の能力者としては、いまいちだったらしく、あえなく全敗。
万策尽き、嫁に行ってやると物理的に家を飛び出して、事故にあった。
大概あきらめればいいものを、無駄に根性を発揮して帰還。
本当に八方ふさがっていたから。
使えるものは使ってなんぼ、カラダ使って風穴開けられるなら御の字、という左手の考え方は、それなりに新鮮な突破口ではあった。
どうせ遠からず土にかえるんだからうだうだすんな、って言ってくれるやつがいるのはなかなかいいものだ。
先の行き止まり感が半端なかろうが、すくなくとも寂しくはない。
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