偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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60☆ちょっとカラダかしな

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べこ。
凹むわぁ。

信頼関係が、壊れてる。

私からすると、うちの左手は、好き勝手動いてくれちゃう困ったヤツではあるけれど、頼りになる味方で、何より、私であることに間違いなく。今回も苦労かけたけど、これからは毎日マッサージしてあげよう、とか、お風呂で一番初めに洗ってあげよう、とか、お疲れ様~、これからもよろしく~的な労いで許される間柄です。

でも、サフラからしたら、うちの左手は、いわゆる、情を交わした相手、ってやつだもんなぁ。

思春期が来れば、師匠より恋人優先するとか普通の発達段階だし、むしろ歓迎。
だから、その恋人が原因で、私とサフラの信頼関係が壊れても納得できるし、フェードアウトもしやすい。

・・・自分の左手でさえなければなっ。

はったと自分の左手をにらみつけてみるのだけれど、奴から帰ってくるのは上機嫌な声で。

『よっ、何考えてんの?サフラの事?解決してあげるから、夢誘導やらせて?』

ときたもんだ。あんたが振り切れてるせいだっての。

夢誘導、ね。ユオは、世間的には希少性極まりない特殊系能力者だけれど、 内実はクレーム係さんのところの粗品能力なので、結構ポンコツだ。キルヤ様みたいな華麗で調節的な精神誘導とかは無理。せいぜい、夢の中で無意識化にすり込んだり、こんな夢見たな、って記憶を生じさせたりしてその人の気分を変えさせる程度の微弱能力だ。

「夢誘導なんかで、サフラの不信感はぬぐえないわよ」

『えー?簡単だとおもうなぁ。賭ける?』

「・・・何を?」

『成功したら、お好み焼きが食べたい!!』

「安っ。いいわよ、のった」

交渉が成立し、私の左手が、私の操縦席にどかっとすわるのを見ながら、私は眠りに落ちていくわけだけれど。

完全に落ちる前に、左手の、いたずらっ子な声が響いた。

『いいよねぇ。あの、泣きそうな顔で虐めてくるの、ぞくぞくしちゃう。煽っちゃおーっと』

っざけ、やがって、この左手~。
この声は、夢誘導だけじゃなくて、現実世界の物理的手段も駆使する気満々だ。
うちの弟子が変態に育ったらどうしてくれんのよ!マジにオムコに行けなくなるわよ!

『おムコって、いや、あんたのオムコになる気でしょうよ、あれは』

はしかは治る病気です!あんなしんどそうな顔して。折を見て、私以外のもっと楽な恋愛先に誘導するわよ。弟子の幸せは安全第一なのっ!

『うわぁ。そんなこと考えてるから、サフラがエスカレートすんのよ。むふふ。ま、寝てなって。起きるまでに視界真っピンクに変えたげるわ』

ええええ?!
眠りと反対方向にクロールしてみたけれど、時すでに遅く。私の意識はおだやかに閉じた。

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