偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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58☆かわいい

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ユオの拒絶が、罰だと思っていた。厭われながら、触れたいと思うことが後ろめたくて、臓腑が焼かれるような痛みがデフォルトになっていた。

自分勝手に彼女を弄り、自分の意志でユオを裏切り、自分の手で彼女を消す。そんなクズにしか育たなかったと、ユオに知られたのに。許してくれとユオに縋りつくほどの苦しさで。

まだ、唇が青いのに、雪山に散歩に出ると言うユオに、耳当てを突き返され半泣きになった。

いつも、どんなきっかけで体調が崩れるかとびくびくしていたから。耳の先でも指の先でも、不用意に冷やしたくないのに。

少し歩いただけで、頬の赤味が不自然にましたユオが、目を閉じて立ち止まってしまう。
気分が悪いのだろうか、それとも、僕を視界から追い出したいだけか。

嫌がられるとわかっていても、声をかけずにはいられなかった。

「ユオ?」

肩がびくりと上がったユオに、やはり声をかけてはいけなかったのだと悟って一歩下がる。
体調が悪いのかを聞きたかっただけなのだと、言い訳するように言葉をつなげて、近づいたことも謝る。
委縮。ユオに会う前、日常だったそれは、こんなにも痛みを伴うことができる。

ユオの目がすいと逸らされ、その残像が喉を焼いて立ちすくんだ。
でも。次の瞬間、僕の耳が拾ったのは、とても可愛らしい声で。愛弟子のサフラですら聞いたことのないような恥ずかし気な声で。

「そうじゃなくて。みみ、弱いのよ、昔から」

・・・・

「・・・は?」

顔の赤さは、みみが、弱いからですか。
それを、教えてくれるのは、僕のためですか。

ユオの言葉が、自分に都合の良い答えしか思い浮かばない文章に変換されてはねまわる。

『彼女』も。
耳のふちに触れると、綿菓子のような甘い声をあげてくれた。
とてもきれいな胸を突き出して、身をくねらせて、強請ってくれた。

今、僕の考えている内容をユオが知ったら、嫌悪で刃物を突き立てそうな連想だけれど。ユオと、手紙の『彼女』が重なって、途方もない渇きが襲ってくる。

『彼女』をもう欲せない。
ユオを欲してはいけない。

自縄自縛の鎖はトゲトゲで、それが彼女達の悲鳴になって、僕の心臓を締め上げる。
発火しそうな僕を、その時、とても懐かしい振動が、清涼な空気を吹き込んだ。

ピン、と左手の指先で弾くように、首元のボタンがはずされたのだ。
僕が『彼女』にすがりついた時と、まったく同じように。
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