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56☆耳あて
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「コレ、いらない」
雪山をあるきたくて、外に出ると、追いかけて来たサフラに耳当てをかぽっとはめられた。
実は前から苦手だったのだけれど、今は何と言うか、本当に無理。
高級品なのはわかるのよ?確かに布製なんかに比べると段違いにあたたかい。
でもさ、水鳥のスモールフェザーで耳あてつくろうという人の神経を疑う。
だって、絶対的に、擽ったい。
それでも。寒かったり雪が当ったりすると、すぐ耳が赤くなる私を気遣って、ちっこい頃のサフラが一生懸命お金をためて買ってくれたプレゼントですから!
よろこんだふり、しましたとも。
それに、寿命がカウントダウンになるころには、擽ったさにも、食べ物の味にも、痛みにも鈍くなって、寒さだけが鮮明だったから、サフラがつけてくれるのも拒まなかった。
でも今は。
クレーム係さんてば、予算申請をだいぶ盛って出したんではなかろうか。
それとも、左手時代にサフラがぶち込んだ治癒が別格だったのか。
この体、とっても高性能というか、新品感が半端ないのです。
前世、病気で筋組織壊滅していたし、こっちにはチープなクローン体として生まれたし、筋肉やら骨格が成長するころにはひとつ目の焼孔があいて、力抜け放題。
そんな生活が普通になっていた私に、この体は少々高級すぎる。
なかなか倒れないのは、いい。
食べ物がおいしいのも、いい。
反応速度がはやいのも、嬉しいよ。
でも、視角だの触覚だのの五感が高性能すぎるのは、充分に耳当てを拒否る理由になる。
ふんす。
とばかりに、耳当てを突き返した。
もうサフラは子供じゃないんだから、いやなものははっきりいやといっちゃおう、そう思ったのは一瞬。
だって、耳当てを返されたサフラが、真っ青で、悲壮な表情で耳当てを見ているのだ。
なに、なんなの?そんなこの世の終わりみたいな顔すること?!
どうしたのかと聞く前に、見上げる程に大きく育ったサフラの目に、膨れ上がっていく涙の粒・・・って何ごとだ?!
「ちょ、ちょっと、あ、え?まった、わかった、します、耳当て!」
あー、もうっ!
みなきゃよかった、弟子の濡れ場なんか!
クレーム係さんが、大急ぎで決済を通して私の投げた左手を補強してくれたあと、狭間を縫って結ばれた糸電話は、サフラのいる次元と、私がいる狭間の間に小窓を開けたから。
時間軸が違うとはいえ、時たま見えてしまった。自分の分身とサフラのあれやこれやのむにゃむにゃ現場。
赤面。
まぁ、私のエロ知識なんて、所詮入院先で読んでいたBL由来ですし?
お年頃の男の子が少々性衝動方面でバクハツしようが許容範囲ですよ?
だからって。
『うわ、サフラに耳舐められた時のぞくぞくがずっと続いてる感じ~』、とか解説かましてくるやつがいるのよっ。
やめんか、この、煩悩左手!
ああ、いい忘れました。
私の左手、大人しく体内の一部に溶けるようなタマではありません。
すっかりサフラに愛され、金色の力も注がれて強化されちゃって。自信が付いたのか、ずかずかと脳内に踏み込んで主張してきます。
『いいじゃん、右手が恋人、とかって言葉、無かった?』
って、意味がちげーよ!!
そんなやり取りをしている間にも、
もぞもぞ、こしょこしょ、ふぁさふぁさふぁさ。
しかも今や、目の前をちらつくのは、チラ見してしまった、抱きしめられて、後ろから耳をパクパクされてる外見自分のシーンとか・・・
も、ごまかしようもない程、頬が上気しているのがわかる。
くすぐったいくすぐったいくすぐったい!
じんじんするぞくぞくするじくじくする!
マジに痴女化する前に、サフラの視界から離脱して、この耳当てはずそう、うんそれしかない。そう思うのに。
私にひたりと貼りついたサフラの目はド真剣に心配そうなんですが?
振り切ろうなんてした日にゃ、この子本気で泣きそうなんですが?!
前世の頃から、耳とか弱くて、美容室にもいかず自分で髪切ってたのに!
それが今、柔らかなフェザータッチに両耳はさまれて、耳の裏も淵も耳たぶもひっきりなしにふぁさふぁさされて、一歩進むたびに耳の中までぱさぱさされてるのよ?!
しかも、それにエロ解説被せて来る左手つきよ?!
寂しがり屋の弟子が少々拗ねようが、これは離脱すべきよ!
落ち着こうと、いったん止まって目をつぶったのが悪かった。
「ユオ?」
びくぅ!
音どころではなくなっていた私の耳は、そうっと近づいていたサフラの声に飛び上がった。
雪山をあるきたくて、外に出ると、追いかけて来たサフラに耳当てをかぽっとはめられた。
実は前から苦手だったのだけれど、今は何と言うか、本当に無理。
高級品なのはわかるのよ?確かに布製なんかに比べると段違いにあたたかい。
でもさ、水鳥のスモールフェザーで耳あてつくろうという人の神経を疑う。
だって、絶対的に、擽ったい。
それでも。寒かったり雪が当ったりすると、すぐ耳が赤くなる私を気遣って、ちっこい頃のサフラが一生懸命お金をためて買ってくれたプレゼントですから!
よろこんだふり、しましたとも。
それに、寿命がカウントダウンになるころには、擽ったさにも、食べ物の味にも、痛みにも鈍くなって、寒さだけが鮮明だったから、サフラがつけてくれるのも拒まなかった。
でも今は。
クレーム係さんてば、予算申請をだいぶ盛って出したんではなかろうか。
それとも、左手時代にサフラがぶち込んだ治癒が別格だったのか。
この体、とっても高性能というか、新品感が半端ないのです。
前世、病気で筋組織壊滅していたし、こっちにはチープなクローン体として生まれたし、筋肉やら骨格が成長するころにはひとつ目の焼孔があいて、力抜け放題。
そんな生活が普通になっていた私に、この体は少々高級すぎる。
なかなか倒れないのは、いい。
食べ物がおいしいのも、いい。
反応速度がはやいのも、嬉しいよ。
でも、視角だの触覚だのの五感が高性能すぎるのは、充分に耳当てを拒否る理由になる。
ふんす。
とばかりに、耳当てを突き返した。
もうサフラは子供じゃないんだから、いやなものははっきりいやといっちゃおう、そう思ったのは一瞬。
だって、耳当てを返されたサフラが、真っ青で、悲壮な表情で耳当てを見ているのだ。
なに、なんなの?そんなこの世の終わりみたいな顔すること?!
どうしたのかと聞く前に、見上げる程に大きく育ったサフラの目に、膨れ上がっていく涙の粒・・・って何ごとだ?!
「ちょ、ちょっと、あ、え?まった、わかった、します、耳当て!」
あー、もうっ!
みなきゃよかった、弟子の濡れ場なんか!
クレーム係さんが、大急ぎで決済を通して私の投げた左手を補強してくれたあと、狭間を縫って結ばれた糸電話は、サフラのいる次元と、私がいる狭間の間に小窓を開けたから。
時間軸が違うとはいえ、時たま見えてしまった。自分の分身とサフラのあれやこれやのむにゃむにゃ現場。
赤面。
まぁ、私のエロ知識なんて、所詮入院先で読んでいたBL由来ですし?
お年頃の男の子が少々性衝動方面でバクハツしようが許容範囲ですよ?
だからって。
『うわ、サフラに耳舐められた時のぞくぞくがずっと続いてる感じ~』、とか解説かましてくるやつがいるのよっ。
やめんか、この、煩悩左手!
ああ、いい忘れました。
私の左手、大人しく体内の一部に溶けるようなタマではありません。
すっかりサフラに愛され、金色の力も注がれて強化されちゃって。自信が付いたのか、ずかずかと脳内に踏み込んで主張してきます。
『いいじゃん、右手が恋人、とかって言葉、無かった?』
って、意味がちげーよ!!
そんなやり取りをしている間にも、
もぞもぞ、こしょこしょ、ふぁさふぁさふぁさ。
しかも今や、目の前をちらつくのは、チラ見してしまった、抱きしめられて、後ろから耳をパクパクされてる外見自分のシーンとか・・・
も、ごまかしようもない程、頬が上気しているのがわかる。
くすぐったいくすぐったいくすぐったい!
じんじんするぞくぞくするじくじくする!
マジに痴女化する前に、サフラの視界から離脱して、この耳当てはずそう、うんそれしかない。そう思うのに。
私にひたりと貼りついたサフラの目はド真剣に心配そうなんですが?
振り切ろうなんてした日にゃ、この子本気で泣きそうなんですが?!
前世の頃から、耳とか弱くて、美容室にもいかず自分で髪切ってたのに!
それが今、柔らかなフェザータッチに両耳はさまれて、耳の裏も淵も耳たぶもひっきりなしにふぁさふぁさされて、一歩進むたびに耳の中までぱさぱさされてるのよ?!
しかも、それにエロ解説被せて来る左手つきよ?!
寂しがり屋の弟子が少々拗ねようが、これは離脱すべきよ!
落ち着こうと、いったん止まって目をつぶったのが悪かった。
「ユオ?」
びくぅ!
音どころではなくなっていた私の耳は、そうっと近づいていたサフラの声に飛び上がった。
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