偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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37☆想い人のクローン

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感情が煮え立って、なんども深呼吸した。自分のキャパシティが、とてつもなく狭くなっているのがわかる。

彼女が心配で、家の前まで送った。門を入って人の目が途切れると、彼女はキスしてくれなければ離れないとゴネた。
ユオの顔で、ユオの声で。うすすぎて、かすかすぎて、ユオはもういないと思い知らせるような気配で。

やっとの思いで突き放したと思ったところへ爆弾。

「ちぇ、嫉妬とか、別れとか、スパイスないと、つまらないのかなぁ」

それを聞いた途端周囲の音が消え、気が付いたら彼女を引きずりあげるようにして唇にかみついていた。

情けないほど、癇に障った。

ユオとの最後を思い出す。

焼き孔の開いたボロボロの体で、結婚相手を探しに行くだのと大嘘をついて。
王都に行けばどんな目に合うかわかっていただろうに、最後に会ったのは僕ではなくキルヤ様で。

結局彼女を、家の中にどつきいれるようにして扉を閉めた。彼女の足元は、ふらついていたのに。

なじみの店でサンドイッチを買い、家に戻る途中の公園でベンチに座る。
とてもそのまま家に帰れる精神状態ではない。

うなだれた僕の横に、至極当然のようにキルヤ様が腰かけた。
吹きこぼれる寸前だった情動が凪いで行く。

「・・・キルヤ様。想い人のクローンに、せまられたことありますか?」

現れるタイミングがあまりに完璧で、つい口が滑る。

「三つ子と修羅場になったことはあるな。・・・嫌なのか?」

忙しいはずなのに、一体どれだけの時間ついて歩いていたのか。彼女に手荒くあたってしまったのも知っているようだ。

「嫌だったら、良かったんですけどね」

「何が問題だ?合意の上ならありがたく慰められとけ?」

「慰めで、終わる気がしないので。ユオの気配に酩酊して、きっと滅茶苦茶する」

「なんだそれは。まぜこぜに煮詰まってユオまで恨んじまったってか?」

「・・恨まれていなかったことが、苦しいだけです。彼女も、自分も、破り捨てたいくらいに」

キルヤ様はあきれたような顔で僕を見た。

「あー、なにするにしても優しく、な。壊すなよ。じゃないとお前が壊れるぞ?」

彼女を壊したら、僕も壊れられるのだろうか。
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