偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

文字の大きさ
上 下
37 / 93

37☆想い人のクローン

しおりを挟む
感情が煮え立って、なんども深呼吸した。自分のキャパシティが、とてつもなく狭くなっているのがわかる。

彼女が心配で、家の前まで送った。門を入って人の目が途切れると、彼女はキスしてくれなければ離れないとゴネた。
ユオの顔で、ユオの声で。うすすぎて、かすかすぎて、ユオはもういないと思い知らせるような気配で。

やっとの思いで突き放したと思ったところへ爆弾。

「ちぇ、嫉妬とか、別れとか、スパイスないと、つまらないのかなぁ」

それを聞いた途端周囲の音が消え、気が付いたら彼女を引きずりあげるようにして唇にかみついていた。

情けないほど、癇に障った。

ユオとの最後を思い出す。

焼き孔の開いたボロボロの体で、結婚相手を探しに行くだのと大嘘をついて。
王都に行けばどんな目に合うかわかっていただろうに、最後に会ったのは僕ではなくキルヤ様で。

結局彼女を、家の中にどつきいれるようにして扉を閉めた。彼女の足元は、ふらついていたのに。

なじみの店でサンドイッチを買い、家に戻る途中の公園でベンチに座る。
とてもそのまま家に帰れる精神状態ではない。

うなだれた僕の横に、至極当然のようにキルヤ様が腰かけた。
吹きこぼれる寸前だった情動が凪いで行く。

「・・・キルヤ様。想い人のクローンに、せまられたことありますか?」

現れるタイミングがあまりに完璧で、つい口が滑る。

「三つ子と修羅場になったことはあるな。・・・嫌なのか?」

忙しいはずなのに、一体どれだけの時間ついて歩いていたのか。彼女に手荒くあたってしまったのも知っているようだ。

「嫌だったら、良かったんですけどね」

「何が問題だ?合意の上ならありがたく慰められとけ?」

「慰めで、終わる気がしないので。ユオの気配に酩酊して、きっと滅茶苦茶する」

「なんだそれは。まぜこぜに煮詰まってユオまで恨んじまったってか?」

「・・恨まれていなかったことが、苦しいだけです。彼女も、自分も、破り捨てたいくらいに」

キルヤ様はあきれたような顔で僕を見た。

「あー、なにするにしても優しく、な。壊すなよ。じゃないとお前が壊れるぞ?」

彼女を壊したら、僕も壊れられるのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...