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31☆明石焼き

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たこ焼きは、結局、明石焼き、に変更になった。

たこ焼き器は、一応あった。ユオが数年前に自作したのだそうだ。そういえばそんな場面もあったかな。
タコもありはした。ぱりぱりに乾いた胴体部分だけ。しかもお湯で戻すと、暴力的な勢いで膨らむ、なぞの干しお化けダコだったけど。

ただ、マヨネーズとかソースとか、調味料がなかったのだ。
鰹節もなかった。代わりに魚粉があったけど、出汁つくるのがせいぜい。

いくら本体が上手に焼けたって、調味料がないとねー。
仕方がないから、軟らかめに焼いて、だし汁に漬けてたべさせることにする。

くるくる、くるくるくる。

やってみると、左手はコツを覚えていたようだ。我ながら上手だわと感心しながら、ハイスピードで丸いたこ焼きができていく。

「ひだり手が、器用だね」

確かに、右手にくらべて古巣な左手はスムーズに動くけど。
おとなしくたこ焼きが回るのを見ていたと思えば、サフラが気になるのはそこか。

はいはい、あなたのユオは右利きですよね。

「気にさわります?」

しょーがないなぁ。
私所蔵の過去映像は、普通に時間比例なので、20年分近くある由生だったころの情報量のほうが多い。ユオは10年もないし。
とはいえ、サフラが食べる以前にユオの手料理とか思い出してるなら、料理している姿からなるべくユオに似せて、ムードを出すべきかもしれない。

たこ焼きの生地をやわらか目にしたから、難易度が上がって左手でしか回せないのであって、多分かたくすれば右手でも行ける。

そう思って、粉を足そうとすると、

「悪いとは言ってない」

って。

そ?
じゃ、生地の硬さはこのままで。個人的に明石焼きはやわらか目がいい。

水を吸って巨大化したタコパーツが大量に余るから、タコ飯もつくるか。生ダコのほうがおいしいだろうけど、これだけ量があればそこそこ期待できる。

「たこがたくさんなので、炊き込みご飯も、つくりますね」

材料を消費するから、一応言っといたほうがいいかな、ってくらいの軽い気持ちで口にしただけだったから、リクエストが入るとは思わなかった。

「・・・たこ粥がいい」

おかゆ!?
って、ほぼ汁物の明石焼きに?!

「どんだけジューシー?!」

老人か?それとも入れ歯なの?!
この体の操縦になれていたら、絶対手足使ってツッコミ入れたと思うけれど、今はあきれた目で眺めるくらいがせいぜいで。

それでも。

クス

サフラが、わらった。

こっ、こえーーーっ!!
そんな暗い顔で笑うんじゃねーわ!
宥めるという至上目的も忘れて、本気でそう思いました!
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