偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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29☆どうすればいいですか?

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「サフラをなだめてっ!とりあえずなだめるのよっっ!」

それが、ユオから与えられた至上命題だった。

「失敗しても、死体はサフラに見せないで。おねがいよ」

自我というには寝ぼけた意識しか持っていなかった私は、切羽詰まった声でたたき起こされ、なれ親しんだ主体から切り離された・・・のだと思う。

気が付いた時には、随分キレイな子に覆いかぶさられていた。

なんだろ。
彫刻展で『激情』とか、タイトルがついていそうな表情をした男の子に、壊れ物を抱えるように、不自然に力を抑えた抱え方をされている。

「ユオっ、ユオ・・・師匠っ」

縋りつくような声で、連呼されているのは、多分私の名前ですね。
で、この子は、サフラをなだめろ、の、サフラ、だと思う。

んー、だいぶ記憶が混乱している。
確か、サフラのそばに落っこちた時には、なぜか自分はかろうじて四肢がついているレベルの血まみれの塊だった。

さては本体が切り離しに失敗したのかな?死ぬか?とか考えたところで、サフラがこちらに向かってきたから、逃げた。
死体見せたらダメなのよね?って思ったから。

かろうじて四肢がついたレベルの塊なんて当然のようにもろく、引きずって逃げる途中でバラバラになった気がするのだけれど、意識を取り戻した私は、なぜだかちゃんとひとかたまりで、サフラの腕にすっぽりはまっていた。

しかもめちゃくちゃ大切そうに心配そうに見つめられているのですけど。
お姉さんの胸に飛び込んでおいで、ってやつでいいですか?

そもそも私、お姉さんなの?

あいまいな記憶の方が間違いで、儚くなりかけたペットの亀とかだったらちょっと格好がつかないので、ちらりと首をひねって自分を確認。

あー、人間の女性なのは間違いない。でも、体が細いっていうか、薄い。十四、五才ってとこかな。
サフラ君?のほうがちょっと年上にみえるけれど、それでも、恋人同士だとすると、最近の子は随分早熟ね、って感想になる。

サフラ君の頬を涙が伝うから、とりあえずほっぺに向かって指を伸ばそうとして撃沈。

うわ、なにこれ、体が重い上に、あちこち痛いんですけど?
おまけに、けふ、ってなって、口の中が血の味ぃ?!

私が、平常心を欠いたのが悪かったのかもしれない。
既に最下層を這っていたサフラ君の顔色が、岩盤をもぶち抜くレベルに悪化して、周りの景色が跳んだ。
気のせいじゃなければ、空間だけじゃなくて、次元も跨いだと思う。

移動先には、いかにも決死っ、て顔して剣をかかげた肌色の悪い人々がずらっと居て・・いや、ずらっと居たのは一瞬でした。
サフラ君が片手を振ると、まとめて吹っ飛んだからなっ。

「どけ」

って、吹っ飛ばした後に言うことですかね、サフラ君?
おまけに顔変わってますよ?
その顔、魔王って単語が、近所の文鳥の名前に聞こえるくらい、怖いんですけど?!

吹っ飛んだ人の半分は立ち上がれてないし、かろうじて剣を持ち上げようとした人の腕、今、靴裏ですり潰したでしょう、見たわよ?!

これをなだめろって?まじですか?
何人までなら殺っちゃっても、ヤンデレってくくりで許されますかね?!

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