22 / 93
22☆バウ
しおりを挟む
うっわ、ヤな感じの目つきー。
ユオはムカつく胃を宥めるようにため息をつく。
ユオの見かけがほぼ少女としか言えなくても、由生だったころの記憶があるので。性欲の対象として見られることにも詐欺のカモ対象と見られることにも、それなりの経験がある。食堂の会計で、私の前にならんだ時から、その男は胡散臭かった。
その男は、そこそこ変装とかの知識があるのかもしれない。
上っ面、って言うのかな、化粧塗るとかじゃないのだけれど、はしばしがサフラに似せてあるので。
カミソリ遣いがじょうずなのか、眉の形とか、額の形とかはかなりきれいにサフラ型。
二重も、ほとんど前世のアイプチ感覚だと思うのだけれど、調節されている。
で、そいつが、私の前で、財布を落としたと途方に暮れて。
「すみません、常連さんですよね。必ず返しますので、お金を貸してもらえませんか。これと交換で返しますから!」
そう言いながら、自分の指からダイヤの指輪を抜き取って私に預けて来たのだ。
にせもんだよなぁ、と思わなくはなかったけれど、会計にいるのはいかにもバイト慣れしていないお手伝いの子供で困っていたし、次の予定が押していて、さっさと支払いを済ませたかった私は、大した額でもないのだしとヤツのランチ代を払った。
難癖付けられても嫌だから、指輪は預からなかったんだけどね。
その後、バウと名乗ったその男は、お金をかえすだ、お礼をするだ、と何度も私に接触を試みてきて、そのお礼の内容が、いつの間にかサフラの秘めたる私生活を私にリークするっていうテーマになっている訳。
しかも、完全に私がサフラに熱を上げていると確信して、嫉妬とか庇護欲とか大義名分おり交ぜて煽ってくる。
1週間くらいたった頃、てぇへんだ、てぇへんだ、とバウがネタを携えて駆け込んできた。
ネタの中味は、簡単にまとめると、サフラにすっごく質の悪い美人局がついて、このままだと身ぐるみはがされるよ、元締めに話を通して引きはがしてやるから、金をだせって、ことかと。
この段階で、あー、単発の詐欺かぁ、って気づいて、むしろ安心してしまった。
なるほどなるほど、母さん助けて詐欺の亜流なのね。
私の前世では有名な手だけど、こっちで聞いたことなかったから。バウが自分で考えたのか・・と、ちょこっと感心したのと、姉弟じゃないのを大っぴらにされたくないのとで、適当に話を合わせ、で、サフラが元締めに呼び出された、とされる宿屋に誘導された。
・・・で。
うん、ごめん。
いきなり濡れ場でしたか。
「あーっと、失礼。お邪魔しまし・・た?」
ひらいたドアの奥のベッドで、肌色面積が多くなった美少女と、顔を赤くしたユオがくんずほずれつ?・・・とりあえず密着して動いているのをみて。
『あらま、バウに引っかけられたわ』と分かりはしたけれど。
そこは長年生きている師匠の余裕で、サクッと目をつぶり、一礼して踵を返す。
総合して考えると、この美少女はバウとグルと思われるけれど、彼女のニコリとする気もなくひきしめられた口元も、姿勢よく前を向いて目力を発揮しているところも、割と気に入ったので、サフラに任すことにした・・・んだけどな。
どたっ
背中に鈍い音を聞いて振り返ると、サフラがベッドから落っこちていて。
「ユオ、まった!」
私に指を伸ばしてくるサフラは、・・・なんだ、あんたは服着てるのか。
それでもまぁ、この数秒で、女性の上半身に、リネンかけてあげていたのは立派だとおもう。たとえ、自分がそれに足をとられてコケたとしても。
「へんな誤解、すんなよっ、治癒、してただけだからなっ」
裏返った声は、子どもっぽくて。
思わず笑みをこぼしてしまうと、サフラの目が、キッ、っとつりあがった。
あ、まずい、ご機嫌損ねた。
そう気づいた時にはおそくて、サフラはどすどすと部屋から出て行ってしまった。
悪かった、私が悪かったけどさ、だからって、私と面識のない女性をベッドにおいて行くなってば。
私をこの部屋に誘導して、様子をうかがっていただろうバウにとっても、サフラが出て行くのは想定外だったようだ。
隠れていた柱の影から、ポカンとしたバウの顔がのぞいてしまっている。
やれやれ。かけたヤマがはずれていたと悟って静かになってくれると良いけれど。
ユオはムカつく胃を宥めるようにため息をつく。
ユオの見かけがほぼ少女としか言えなくても、由生だったころの記憶があるので。性欲の対象として見られることにも詐欺のカモ対象と見られることにも、それなりの経験がある。食堂の会計で、私の前にならんだ時から、その男は胡散臭かった。
その男は、そこそこ変装とかの知識があるのかもしれない。
上っ面、って言うのかな、化粧塗るとかじゃないのだけれど、はしばしがサフラに似せてあるので。
カミソリ遣いがじょうずなのか、眉の形とか、額の形とかはかなりきれいにサフラ型。
二重も、ほとんど前世のアイプチ感覚だと思うのだけれど、調節されている。
で、そいつが、私の前で、財布を落としたと途方に暮れて。
「すみません、常連さんですよね。必ず返しますので、お金を貸してもらえませんか。これと交換で返しますから!」
そう言いながら、自分の指からダイヤの指輪を抜き取って私に預けて来たのだ。
にせもんだよなぁ、と思わなくはなかったけれど、会計にいるのはいかにもバイト慣れしていないお手伝いの子供で困っていたし、次の予定が押していて、さっさと支払いを済ませたかった私は、大した額でもないのだしとヤツのランチ代を払った。
難癖付けられても嫌だから、指輪は預からなかったんだけどね。
その後、バウと名乗ったその男は、お金をかえすだ、お礼をするだ、と何度も私に接触を試みてきて、そのお礼の内容が、いつの間にかサフラの秘めたる私生活を私にリークするっていうテーマになっている訳。
しかも、完全に私がサフラに熱を上げていると確信して、嫉妬とか庇護欲とか大義名分おり交ぜて煽ってくる。
1週間くらいたった頃、てぇへんだ、てぇへんだ、とバウがネタを携えて駆け込んできた。
ネタの中味は、簡単にまとめると、サフラにすっごく質の悪い美人局がついて、このままだと身ぐるみはがされるよ、元締めに話を通して引きはがしてやるから、金をだせって、ことかと。
この段階で、あー、単発の詐欺かぁ、って気づいて、むしろ安心してしまった。
なるほどなるほど、母さん助けて詐欺の亜流なのね。
私の前世では有名な手だけど、こっちで聞いたことなかったから。バウが自分で考えたのか・・と、ちょこっと感心したのと、姉弟じゃないのを大っぴらにされたくないのとで、適当に話を合わせ、で、サフラが元締めに呼び出された、とされる宿屋に誘導された。
・・・で。
うん、ごめん。
いきなり濡れ場でしたか。
「あーっと、失礼。お邪魔しまし・・た?」
ひらいたドアの奥のベッドで、肌色面積が多くなった美少女と、顔を赤くしたユオがくんずほずれつ?・・・とりあえず密着して動いているのをみて。
『あらま、バウに引っかけられたわ』と分かりはしたけれど。
そこは長年生きている師匠の余裕で、サクッと目をつぶり、一礼して踵を返す。
総合して考えると、この美少女はバウとグルと思われるけれど、彼女のニコリとする気もなくひきしめられた口元も、姿勢よく前を向いて目力を発揮しているところも、割と気に入ったので、サフラに任すことにした・・・んだけどな。
どたっ
背中に鈍い音を聞いて振り返ると、サフラがベッドから落っこちていて。
「ユオ、まった!」
私に指を伸ばしてくるサフラは、・・・なんだ、あんたは服着てるのか。
それでもまぁ、この数秒で、女性の上半身に、リネンかけてあげていたのは立派だとおもう。たとえ、自分がそれに足をとられてコケたとしても。
「へんな誤解、すんなよっ、治癒、してただけだからなっ」
裏返った声は、子どもっぽくて。
思わず笑みをこぼしてしまうと、サフラの目が、キッ、っとつりあがった。
あ、まずい、ご機嫌損ねた。
そう気づいた時にはおそくて、サフラはどすどすと部屋から出て行ってしまった。
悪かった、私が悪かったけどさ、だからって、私と面識のない女性をベッドにおいて行くなってば。
私をこの部屋に誘導して、様子をうかがっていただろうバウにとっても、サフラが出て行くのは想定外だったようだ。
隠れていた柱の影から、ポカンとしたバウの顔がのぞいてしまっている。
やれやれ。かけたヤマがはずれていたと悟って静かになってくれると良いけれど。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる