偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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20☆転移紋

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サフラは、研究室の明かりをつけ、それと同時に、のたのたと動き始めた銀色マイマイに餌をやる。クローンの寿命を研究するための実験対象だ。

最近養殖が始まった銀色マイマイは、当然のようにクローン体。食用奴隷でも銀色マイマイでも、クローン技術で生まれた生命体は、自然発生体の5分の1程度と寿命が短く、測ったように同時期に死ぬ。

そんな明白な現象の原因が、何十年にもわたって不明ときたものだ。

さすがに医療先進機関の沽券にかかわると思ったのか、経済性が不透明な研究の割にはまともな費用がまわされていた。

クローン体には、サフラが転移紋と名付けた印がついている。普通の人が目に見えるものではないけれど。
その印に、どこからか転移してくるオープナーが嵌まると、クローン体は生命力が抜けて死ぬ。生命力が漏れ出す様は焼き孔と似ているが、もっと静かで、平穏で、オートマチックだ。

「銀色マイマイのクローンは、自己消化プログラムの転移が予約されている。転移紋を切除しても死期はかわらない」

それが、サフラがこの研究室で得た結論。

人間のクローン体の寿命が短いのも、銀色マイマイと同じシステムだと思う。
病でも、事故でもなく、ほんとうに穏やかに生命力が流れ出して、いのちが尽きる。

医学者や科学者は、そんなバカなことがあるかと、言った。
宗教が大好きな奴らは、それが神の意志なのだと、言った。

神様企業が開発したシステムのバグがどうとか、ブラック企業のクレーム係さんがいい人で、とか、サフラはそんなユオの話を聞いて育ったから。

ユオのことしか念頭にない研究やら実験やらをやりつくした段階で、クローン体の寿命がいわゆる神様マターなのだろうという想像はついた。

この世は、というか、各次元は、より高次にいる種族に管理されている。

転移紋やクローン体の早めの寿命は、神の生産計画を大きく崩さないための、拡散防止措置なのだと思う。
人間に許されたある程度の自由と、次元を脅かさせないための神の安全措置、その調整として寿命を20年、と設定しただけなのだ。

その設定のせいで、ユオの生命力が消えていく。
あがくサフラの目の前で、流れ出して行く。
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