偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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17☆女神なユオと勤勉なサフラ

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ユオは、可愛くて、強くて、格好良くて、優しい。
それに、師匠として客観的に見ても、ユオはものすごく頭が良い上に芸達者。
そんなユオを師匠にできた僕は、有頂天だった。

僕が10才になるころには、偏微分とか、三角関数とか、王城の兵器の研究所に勤めるエリートですら知らないようなことまで教えてくれたし、剣もすごく強かったし、変装とか声色まで上手・・・って、も、女神でしょう?

ユオは、良い匂いがして、おいしいものをたくさん知っていて、そして、壮絶な親バカ・・じゃないな、姉バカで師匠バカ、だった。
隠そうともせず、毎日サフラ大好きだよ攻撃を、溺れるよ!という程僕にくれる。

当然、僕は、初めからユオが好きだった。
師匠としても、家族としても、人間としても。
そして、もちろん、女の子としても。
ユオに対する独占欲なんて、キルヤ様がユオの腰に手を回すのを見た瞬間、速攻で意識した。
生意気にも、嫉妬を意識したのは、7才だったことになる。

国境は、危険が一杯で、どさくさで、刹那的で、物々交換の経済が発達していて。魔物を仕留める腕さえあれば、未成年だろうが、身元が不確かだろうが、たっぷりご飯が食べられて、不自由なく暮らせる場所だった。要は、僕らが生きるのにとことん向いていた。

国境なんていうどさくさが極まった場所で、ユオは、手から塩やら砂糖やら油やら、さらには、解熱剤・・とうふ造り用の石膏だそうだ・・などという、換金性の高いものまで出せてしまうのだ。大抵のことはやり過ごせる。

おまけに、ユオは、夢を使った精神操作ができる。そのせいかユオの寝かしつけは驚くほど強力。僕が調子に乗って無理をしようとすると、12時間とか寝かされてしまう。おかげで病気知らず。

そんな訳で、僕たちは心にたっぷり余裕があったし、人型でない魔物食べ放題、の僕の魔力は好き放題に伸びた。当然体もすくすく。

一方、ユオの体は、どういうわけか、成長が遅くて筋肉もつきにくかった。僕らのサイズは、あっという間に逆転した。

既に、ふつうの魔物を怖く感じることはなく、魔物♡、と後ろに♡マークをつけたくなるほど馴染んだ存在。

でも、数年に1度は。
出ちゃうんだよね。次元と次元がぶつかって砕けた欠片そのもの、みたいな、♡のつけようもない馴染めない存在が。

中腹でばっきり折れた活火山にしか見えない三角錐が、マグマ吐き散らしながらスーパーボールのごとく跳ねまわって、国境の街がいくつも再起不能になったことがある。

死骸という死骸が真ん中で折れて繋がったポンポン玉が、ワープした挙句シャボン玉のように浮きながら精神攻撃をまき散らして、自殺他殺が4桁に上ったこともある。

僕もユオも街の人も、そのたびにボロボロになって戦ったり逃げたり凌いだり。そんな中で、クローンで体が弱いユオは、体調がすぐれないことがどんどん多くなった。それでもユオは無理をする。僕を守ろうとするし、倒れてもごまかす。

その時感じた恐怖・・ユオが害されるかもしれないという恐怖・・が、僕を勤勉にさせた。
勉強にも貪欲になったし、メンタルの安定のために、毎日のトレーニングはどんどん過激になった。

勉強は、正直苦労したことがない。ユオの教え方がうますぎて。
各国の国境街がお金を出し合って作っている医療研究機関にも学生として入った。
もちろん偽名。

目立ちたくないから、お金は稼ぎすぎたり使いすぎたりしないほうが良くて、僕らの普段はちょっと貧乏気味。だから、医学系の研究施設で学生やるなら、えらく倍率が高い試験をクリアして奨学金をとりつづけていないといけない。

なのに、ユオときたら、そこの過去問をちらりと見て、にへら、と笑った。
余裕ーって。実際その通りだった。

入学してみると、毎日は、授業というより実践一色。僕のミッションはユオの健康一色だから、クローンの寿命が短命な謎を解明する研究室にはいった。

まぁ、異常気象でめっきり取れなくなった銀色マイマイをクローン増殖させて実験する程度の微妙な近さだったけれど、ユオが、すげー、医学部じゃん!とか言ってちやほやするせいで、結構真面目な学生だったと思う。

そんなふうに過ごして。
相思相愛の女神にホイホイ導かれた弟子は、ご機嫌にメキメキと成長し、気づくと、客観的にみて可愛くない力量になっていた。

具体的には、王位争い中の王子たちを、まとめて片手でなぎ倒せるレベルに。
キルヤ様と政争中の派閥の財源とか、3日もあれば詐欺って潰せるくらいに。
『見える』だけで崇拝対象になる複数の次元の壁を、自由に通過できる程に。
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