偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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10☆一緒にお買い物

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「じゅうはち、じゅうく、にじゅう・・っと。すごい、20枚もある!ユオ何が欲しい?」

師匠になってもらってから、ユオも僕も、お互いをさん付けでなく呼ぶようになった。それが嬉しくて、1日に何度もユオと呼ぶ。

格付け試験の上位者としてもらった金一封の中身は、ぎっしりのお札。
乳母がいるころは財布を自分で持ったことがないし、寮に入ってからも節約生活をしていたから、こんな大金を持って街に出るのは初体験だ。

欲しいものを言いたまえ、頼れる僕が何でも買ってあげるよ!
そんなハイテンションで問いかけた私にも、ユオの返事は通常運転。

「フライパン」
「・・・うちにあるよ」

「タコ焼き機」
「・・・聞いたことないよ」

今更だけど、ユオは変わっている。
本人の言によると、転生者、らしい。
前世はサーブルの選手だったが筋肉が急激に壊れていく謎の難病になり、19才直前で死んだのだそうだ。

直接の死因は転倒。でも、あの世のシステムのバグであやまって自殺者に振り分けられ、それに気づいた過労状態のクレーム係が少々寝過ごして。記憶が消えずにあの世の粗品を手にしたままこっちに来てしまった、と、わかるような、わからないような経歴。

こっちでは、食用奴隷、という、なかなか過酷な個体として生まれている。
食用奴隷は、クローン培養で12才の食べごろになるまで、大型の試験管の中で成長する。しかも、格付け試験のフィールドになる魔の森の側の養殖場に放たれる食用奴隷に至っては、意識レベルを落とす薬が入った餌でドラッグ・ロックのおまけつき。普通に考えたら、どうやっても長くは生きられないハズの生い立ちなのだが。

それでも記憶ってすごいんだね。

ユオにとっては、培養された筋肉量の少ない12才の体でも、前世で死ぬ前の体にくらべるとすごく動きやすくて嬉しかったそうだ。探検したり、運動したり。狩りや釣りをしたり、料理をしたり。特に不満なく生活をエンジョイしていたというから立派。

食用奴隷のくくりにされてしまっているユオにとって、貴族種なんて危険物としか言いようがないのに、格付け試験に初めからつまずいていた僕を助けてくれた。
無茶苦茶優しい、僕の師匠だ。

何を隠そう、この僕は、人肉や人型魔物肉が食べられないという壮大な欠点がある。
何度か、克服してみようと努力はしたのだけどね、体が受け付けない。
乳母が死んでからは隠ぺい一筋。おかげで、親しい友人もできず、明晰な頭脳もあふれんばかりの魔力も使いどころがない。

そんな僕に頻繁に声をかけて来るキルヤ様は変り者。

キルヤ様がユオの腰を抱いた時は、本気でむっとしてしまった。
軽く緊張状態に入った僕を、上手に引っ張り出してくれたユオは男前、いや女前?だと思う。

ひとりっ子なので、弟、とか、憧れていたのです。とユオは言ってくれた。
僕のことが気に入って、一緒にいてもいいってことだよね。
うふふふふ。

ユオが嫌がらないのをいいことに、格付け試験の点数を使って、強引に師匠になってもらった。
で、格付け試験後、一緒に暮らし始めたのだ。
尽くしまくってユオをブラコンならぬ弟子コン?にするぞ、と、そんな野望をもった。

そんな僕が、はじめてあぶく銭な大金をもってユオと街に出たわけで。
ふたりで稼いだお金なわけだし、なんでもユオの好きなものを買いたい気分なのに。

ユオは逆に、7才らしくおもちゃを強請れとは言わないけれど、他人の事ばっかり考えないの、と僕を諭した。
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