偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

文字の大きさ
上 下
10 / 93

10☆一緒にお買い物

しおりを挟む
「じゅうはち、じゅうく、にじゅう・・っと。すごい、20枚もある!ユオ何が欲しい?」

師匠になってもらってから、ユオも僕も、お互いをさん付けでなく呼ぶようになった。それが嬉しくて、1日に何度もユオと呼ぶ。

格付け試験の上位者としてもらった金一封の中身は、ぎっしりのお札。
乳母がいるころは財布を自分で持ったことがないし、寮に入ってからも節約生活をしていたから、こんな大金を持って街に出るのは初体験だ。

欲しいものを言いたまえ、頼れる僕が何でも買ってあげるよ!
そんなハイテンションで問いかけた私にも、ユオの返事は通常運転。

「フライパン」
「・・・うちにあるよ」

「タコ焼き機」
「・・・聞いたことないよ」

今更だけど、ユオは変わっている。
本人の言によると、転生者、らしい。
前世はサーブルの選手だったが筋肉が急激に壊れていく謎の難病になり、19才直前で死んだのだそうだ。

直接の死因は転倒。でも、あの世のシステムのバグであやまって自殺者に振り分けられ、それに気づいた過労状態のクレーム係が少々寝過ごして。記憶が消えずにあの世の粗品を手にしたままこっちに来てしまった、と、わかるような、わからないような経歴。

こっちでは、食用奴隷、という、なかなか過酷な個体として生まれている。
食用奴隷は、クローン培養で12才の食べごろになるまで、大型の試験管の中で成長する。しかも、格付け試験のフィールドになる魔の森の側の養殖場に放たれる食用奴隷に至っては、意識レベルを落とす薬が入った餌でドラッグ・ロックのおまけつき。普通に考えたら、どうやっても長くは生きられないハズの生い立ちなのだが。

それでも記憶ってすごいんだね。

ユオにとっては、培養された筋肉量の少ない12才の体でも、前世で死ぬ前の体にくらべるとすごく動きやすくて嬉しかったそうだ。探検したり、運動したり。狩りや釣りをしたり、料理をしたり。特に不満なく生活をエンジョイしていたというから立派。

食用奴隷のくくりにされてしまっているユオにとって、貴族種なんて危険物としか言いようがないのに、格付け試験に初めからつまずいていた僕を助けてくれた。
無茶苦茶優しい、僕の師匠だ。

何を隠そう、この僕は、人肉や人型魔物肉が食べられないという壮大な欠点がある。
何度か、克服してみようと努力はしたのだけどね、体が受け付けない。
乳母が死んでからは隠ぺい一筋。おかげで、親しい友人もできず、明晰な頭脳もあふれんばかりの魔力も使いどころがない。

そんな僕に頻繁に声をかけて来るキルヤ様は変り者。

キルヤ様がユオの腰を抱いた時は、本気でむっとしてしまった。
軽く緊張状態に入った僕を、上手に引っ張り出してくれたユオは男前、いや女前?だと思う。

ひとりっ子なので、弟、とか、憧れていたのです。とユオは言ってくれた。
僕のことが気に入って、一緒にいてもいいってことだよね。
うふふふふ。

ユオが嫌がらないのをいいことに、格付け試験の点数を使って、強引に師匠になってもらった。
で、格付け試験後、一緒に暮らし始めたのだ。
尽くしまくってユオをブラコンならぬ弟子コン?にするぞ、と、そんな野望をもった。

そんな僕が、はじめてあぶく銭な大金をもってユオと街に出たわけで。
ふたりで稼いだお金なわけだし、なんでもユオの好きなものを買いたい気分なのに。

ユオは逆に、7才らしくおもちゃを強請れとは言わないけれど、他人の事ばっかり考えないの、と僕を諭した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...