1 / 93
1☆叙任式
しおりを挟む
いだだだだ。痛ったーーい。
私こと、ユオは、たった今腎臓の後ろに1つ目の焼き孔をあけるという、実にありがたくない処刑を受けてきたところ。
処刑ですよ、処刑!予防接種とかじゃなくっ。も、最悪。
人体には処刑可能な場所が3つある。各腎臓の後ろに2つ、心臓の後ろに1つ。3つともに焼き孔が開くと人は生命力が抜けて死ぬ。
1つでも、「気」が垂れ流しになるわけだから健康じゃないし、手から炎を出すような特殊能力とかは潰える。で、ここは、特殊能力がモノ言う世界だから、焼き孔=レッツゴートゥ最下層、二度と這い上がってくんなよ、って感じの処刑です。
もちろん私が何か悪いことをやらかしたわけじゃありません。ただ、この処刑法、権力者が気に入らない人間潰すのにはすごく都合いいんだよね。
でっち上げだろうが言いがかりだろうが、権力者からすれば、弱者に冤罪なんてかぶせ放題な世の中なので、合法に邪魔者を消す方法、って感じでつかわれている。
私は、設定上は12歳で、やたらと線の細い、というか、発育が悪い女性体のクローン人間。ぱっと見で最弱クラスだし、特殊能力も大したことない、というか、権力者たちには、特殊能力があること自体理解できいないと思う。
じゃぁ、なんでわざわざ処刑されたのかというと。うーん、一言でまとめると、利害の一致?
相手は、私が将来、万が一にも有能になると困る。
私のほうは、どうしても守りたいひとができて、その目的上、完全な無能者と思われたい。あとは、訳あって、私は短寿命が約束されているので、将来が減ったところで微差誤差かなって。
痛みの逃がし方が少しわかって、普通に近い歩き方ができるようになった頃。
「ユオーっっ」
無茶苦茶にかわいい笑顔の男の子が、そこそこ発達している人混みをすりぬけ、私に向かってすっ飛んでくる。
彼はサフラ。うふふ。どうしても守りたいひとってやつです。
サフラは、分類上は、貴族種という権力者層に属しているものの、父親がボロいせいで最低限の安全すら与えられていない王子様、という厄介なご身分。
でも、天才、なんじゃないかな、多分。
まだ7歳だから定かじゃないけど。
「おかえりーっ」
ぎゅむむむむ
飛びついてきたサフラを、思いっきりだっこ。
私の筋力は貧弱だから、力いっぱい抱きかえしても大丈夫。
「ただいま。おまたせしましたっ」
中央政府から渡されたおそろいのピンキーリングを、うずうず顔のサフラに見せる。
世間様的には、私は貴族種師範の叙任式なるものに出かけたのであって、別に処刑されに行ったわけではない。
金色のリングは、師匠と弟子でひとセット。私が師匠でサフラが弟子。
ぱぁぁ、とサフラのかおが明るく輝く。
かっわいいわぁ。これぞしあわせ。焼き孔なんてどーでもよくなっちゃう。
にっこにこが止まらない私の指に、サフラはそおっと指輪をはめてくれた。で、自分にもはめて、手をつないでくる。
「ユオがぼくの師匠だぁ!ずーっと師匠で、すーっと一緒だぁ!」
「はい、一緒に毎日おいしいものたべられるようにがんばりましょお」
私たちの相性は抜群で、主観的には、毎日がサバイバル・ゲームのようでもあり、美少年育成ゲームのようでもあり、ホームドラマのようでもあり、グルメ番組のようですらあった。
・・・客観的には、ただの逃亡劇でしかないのだろうけれど。
私こと、ユオは、たった今腎臓の後ろに1つ目の焼き孔をあけるという、実にありがたくない処刑を受けてきたところ。
処刑ですよ、処刑!予防接種とかじゃなくっ。も、最悪。
人体には処刑可能な場所が3つある。各腎臓の後ろに2つ、心臓の後ろに1つ。3つともに焼き孔が開くと人は生命力が抜けて死ぬ。
1つでも、「気」が垂れ流しになるわけだから健康じゃないし、手から炎を出すような特殊能力とかは潰える。で、ここは、特殊能力がモノ言う世界だから、焼き孔=レッツゴートゥ最下層、二度と這い上がってくんなよ、って感じの処刑です。
もちろん私が何か悪いことをやらかしたわけじゃありません。ただ、この処刑法、権力者が気に入らない人間潰すのにはすごく都合いいんだよね。
でっち上げだろうが言いがかりだろうが、権力者からすれば、弱者に冤罪なんてかぶせ放題な世の中なので、合法に邪魔者を消す方法、って感じでつかわれている。
私は、設定上は12歳で、やたらと線の細い、というか、発育が悪い女性体のクローン人間。ぱっと見で最弱クラスだし、特殊能力も大したことない、というか、権力者たちには、特殊能力があること自体理解できいないと思う。
じゃぁ、なんでわざわざ処刑されたのかというと。うーん、一言でまとめると、利害の一致?
相手は、私が将来、万が一にも有能になると困る。
私のほうは、どうしても守りたいひとができて、その目的上、完全な無能者と思われたい。あとは、訳あって、私は短寿命が約束されているので、将来が減ったところで微差誤差かなって。
痛みの逃がし方が少しわかって、普通に近い歩き方ができるようになった頃。
「ユオーっっ」
無茶苦茶にかわいい笑顔の男の子が、そこそこ発達している人混みをすりぬけ、私に向かってすっ飛んでくる。
彼はサフラ。うふふ。どうしても守りたいひとってやつです。
サフラは、分類上は、貴族種という権力者層に属しているものの、父親がボロいせいで最低限の安全すら与えられていない王子様、という厄介なご身分。
でも、天才、なんじゃないかな、多分。
まだ7歳だから定かじゃないけど。
「おかえりーっ」
ぎゅむむむむ
飛びついてきたサフラを、思いっきりだっこ。
私の筋力は貧弱だから、力いっぱい抱きかえしても大丈夫。
「ただいま。おまたせしましたっ」
中央政府から渡されたおそろいのピンキーリングを、うずうず顔のサフラに見せる。
世間様的には、私は貴族種師範の叙任式なるものに出かけたのであって、別に処刑されに行ったわけではない。
金色のリングは、師匠と弟子でひとセット。私が師匠でサフラが弟子。
ぱぁぁ、とサフラのかおが明るく輝く。
かっわいいわぁ。これぞしあわせ。焼き孔なんてどーでもよくなっちゃう。
にっこにこが止まらない私の指に、サフラはそおっと指輪をはめてくれた。で、自分にもはめて、手をつないでくる。
「ユオがぼくの師匠だぁ!ずーっと師匠で、すーっと一緒だぁ!」
「はい、一緒に毎日おいしいものたべられるようにがんばりましょお」
私たちの相性は抜群で、主観的には、毎日がサバイバル・ゲームのようでもあり、美少年育成ゲームのようでもあり、ホームドラマのようでもあり、グルメ番組のようですらあった。
・・・客観的には、ただの逃亡劇でしかないのだろうけれど。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、142話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(11/21更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる