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第6章 問題解決に向けて
14 ルイーズの日常
しおりを挟む長旅を経て、辺境から我が家へ到着したルイーズとリアム。玄関先では、ローラと手を繋いだミシェルが今か今かと二人の帰りを待っていた。
「ねえ…さま、にい…さま。おかえり…なしゃい」
「ミシェル、ただいま。ずっとここで待っていてくれたの? それに……、呼び方も頑張って練習したのね」
「うん」
二人は、ミシェルの健気さに感動したようだ。ミシェルを取り合うように抱きしめている。
「ローラ、ミシェルに何かあったの?」
「奥様とご一緒されたお茶会で、同じ年頃の子供に、言葉を揶揄われたそうなのです。それから、練習を頑張っているのですよ」
「……、そんなことが。まだ、四歳なのよ…私たちのいない数週間の間に、あんなにも頑張って」
「お嬢様、ミシェルお嬢様はお強いですよ。大丈夫です。気長に見守って差し上げましょう」
「……うん、そうよね。私も練習に付き合うわ」
その日の夜は、家族全員でいつもより長めの晩餐を楽しんだ。食後のお茶を楽しむころには、眠たそうなミシェルを抱えて、ルイーズとエイミーがその場を後にした。リアムも付いて行こうとしたが、ルーベルトにつかまり執務室に連れていかれたようだ。
晩餐前に入浴を済ませていたミシェルは、ベッドに横になると即寝したようだ。その姿を確認すると、ルイーズはエイミーにミシェルのことを質問し、自分のことを報告した。
「そう、そんなことがあったの。ルイーズは、それで良かったの?」
「婚約も、侍女の話も嬉しかった。リオンさんのことも、とても大切です。でも、今は集中して色々なことを身につけたい。それに……、気持ちが追いつかないの」
「辺境伯の御子息には、もう少しゆっくりと進めてほしかったわね……。ルイーズ、今は焦らなくても良いと思うわ」
無言で頷くルイーズの頭を撫でるエイミー。ルイーズの表情も和らいだようだ。エイミーに話すことで、気持ちが少し楽になったのだろう。
ルイーズは、それから長期休暇が明けるまでの間、リアムとミシェルとの時間を大切に過ごした。
♦
暑さも落ち着いてきた頃に、新学期が始まった。長期休暇前とは違う教室の雰囲気に、皆の本気度を感じたルイーズは、講義や実習に意欲を持って取り組んでいるようだ。朝から夕方まで勉学に励み、屋敷に戻るとリアムとミシェルと共に過ごし、毎晩遅い時間まで予習と復習を熟す。そんなルイーズを心配してか、エリーとクレア、ミアの三人が休日の誘いを持ちかけた。
「ねえルイーズ、今度の休みに私の家に遊びに来ない?」
「良いわね、その後は買い物に行っても良いし……、ルイーズ行こう」
「たまには、息抜きも必要よ」
ミアの呼びかけに、エリーとクレアも遊びの話に乗ってきたようだ。
「皆、ありがとう……。遊びに行きたい」
「よし!じゃあ、今度の休みにうちの商会に集合ね」
ルイーズが笑顔で頷くと、皆は少しだけホッとしたような表情を見せた。その後もこの集まりは、定期的に行われているようだ。四人の誰かが疲れた顔をしていると、遊びに誘い出し、心ゆくまで遊ぶ。その日はルイーズも、屋敷に戻ると爆睡している。そんな風にリフレッシュしながら、講義・実習・試験を繰り返して、気がつけば最終学年への進級が目前に迫っていた。
教室では、ルイーズとエリーが生徒会メンバーやパーティーの話をしているようだ。
「もう、皆さん卒業なのね……。何だか、寂しいわ」
「そうね。レアさんも、あれから数回しか登校していないし……成績はクリアしていたから、学院長先生が卒業を認めてくれたそうよ」
「それは、良かったわ」
「でも、忙しいわよね。卒業式の一週間後に、王宮主催のパーティーが開かれるらしいわ。私たちには関係ないけど、卒業生は出席が決まっているし、今回は問題の件でも王族から話があるそうよ」
「ようやく、終わるのね」
「そうね」
カルディニア王国の全貴族が待ち望んでいたことだろう。
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