【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
77 / 84
第6章 問題解決に向けて

14 ルイーズの日常

しおりを挟む

 長旅を経て、辺境から我が家へ到着したルイーズとリアム。玄関先では、ローラと手を繋いだミシェルが今か今かと二人の帰りを待っていた。

「ねえ…さま、にい…さま。おかえり…なしゃい」
「ミシェル、ただいま。ずっとここで待っていてくれたの? それに……、呼び方も頑張って練習したのね」
「うん」
 二人は、ミシェルの健気さに感動したようだ。ミシェルを取り合うように抱きしめている。

「ローラ、ミシェルに何かあったの?」
「奥様とご一緒されたお茶会で、同じ年頃の子供に、言葉を揶揄われたそうなのです。それから、練習を頑張っているのですよ」
「……、そんなことが。まだ、四歳なのよ…私たちのいない数週間の間に、あんなにも頑張って」
「お嬢様、ミシェルお嬢様はお強いですよ。大丈夫です。気長に見守って差し上げましょう」
「……うん、そうよね。私も練習に付き合うわ」

 その日の夜は、家族全員でいつもより長めの晩餐を楽しんだ。食後のお茶を楽しむころには、眠たそうなミシェルを抱えて、ルイーズとエイミーがその場を後にした。リアムも付いて行こうとしたが、ルーベルトにつかまり執務室に連れていかれたようだ。

 晩餐前に入浴を済ませていたミシェルは、ベッドに横になると即寝したようだ。その姿を確認すると、ルイーズはエイミーにミシェルのことを質問し、自分のことを報告した。

「そう、そんなことがあったの。ルイーズは、それで良かったの?」
「婚約も、侍女の話も嬉しかった。リオンさんのことも、とても大切です。でも、今は集中して色々なことを身につけたい。それに……、気持ちが追いつかないの」
「辺境伯の御子息には、もう少しゆっくりと進めてほしかったわね……。ルイーズ、今は焦らなくても良いと思うわ」

 無言で頷くルイーズの頭を撫でるエイミー。ルイーズの表情も和らいだようだ。エイミーに話すことで、気持ちが少し楽になったのだろう。

ルイーズは、それから長期休暇が明けるまでの間、リアムとミシェルとの時間を大切に過ごした。

 ♦

 暑さも落ち着いてきた頃に、新学期が始まった。長期休暇前とは違う教室の雰囲気に、皆の本気度を感じたルイーズは、講義や実習に意欲を持って取り組んでいるようだ。朝から夕方まで勉学に励み、屋敷に戻るとリアムとミシェルと共に過ごし、毎晩遅い時間まで予習と復習を熟す。そんなルイーズを心配してか、エリーとクレア、ミアの三人が休日の誘いを持ちかけた。

「ねえルイーズ、今度の休みに私の家に遊びに来ない?」
「良いわね、その後は買い物に行っても良いし……、ルイーズ行こう」
「たまには、息抜きも必要よ」

 ミアの呼びかけに、エリーとクレアも遊びの話に乗ってきたようだ。

「皆、ありがとう……。遊びに行きたい」
「よし!じゃあ、今度の休みにうちの商会に集合ね」

 ルイーズが笑顔で頷くと、皆は少しだけホッとしたような表情を見せた。その後もこの集まりは、定期的に行われているようだ。四人の誰かが疲れた顔をしていると、遊びに誘い出し、心ゆくまで遊ぶ。その日はルイーズも、屋敷に戻ると爆睡している。そんな風にリフレッシュしながら、講義・実習・試験を繰り返して、気がつけば最終学年への進級が目前に迫っていた。

 教室では、ルイーズとエリーが生徒会メンバーやパーティーの話をしているようだ。

「もう、皆さん卒業なのね……。何だか、寂しいわ」
「そうね。レアさんも、あれから数回しか登校していないし……成績はクリアしていたから、学院長先生が卒業を認めてくれたそうよ」
「それは、良かったわ」
「でも、忙しいわよね。卒業式の一週間後に、王宮主催のパーティーが開かれるらしいわ。私たちには関係ないけど、卒業生は出席が決まっているし、今回は問題の件でも王族から話があるそうよ」
「ようやく、終わるのね」
「そうね」

 カルディニア王国の全貴族が待ち望んでいたことだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

処理中です...