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第6章 問題解決に向けて
12 遠征帰還パーティー(当日)
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ルイーズは、深夜からずっとリリーに付き添っていた。
外の喧騒から、辺境伯が騎士団を引き連れて戻って来たことは予想がついたが、リリーから離れるつもりはないのだろう。
「……ルーちゃん?」
どうやらリリーが目を覚ましたようだ。
「リリーちゃん、気分はどうですか?」
「大丈夫……ルーちゃん、ずっといてくれたの?」
微笑みながら頷くルイーズ。
「ありがとう」
嬉しそうにはにかむリリーを見て、ルイーズは切なくなったのだろう。リリーの手をそっと撫でながら頷いている。
しばらくして、エリーとリアムが部屋を訪ねてきた。ルイーズもようやく仮眠をとることができたようだ。
リリーとリアムが楽しそうに話をしている傍らで、ルイーズがエリーにリオンの話をしているようだ。
「リオンさんから、卒業後にここへ来ないかって誘われたの」
「そう……、迷ってるの? 卒業まで、まだ考える時間はあるわ。私は、ルイーズが決めたことを応援する。でも、ここにいる間にリオンさんときちんと話した方が良いわ」
「うん……そうするわ」
つぶさに説明しなくても、エリーにはルイーズの迷いが分かったようだ。
その後、夕食を四人で摂っているところへ、レアが辺境伯を連れてやってきた。銀色の髪に立派な体格のその人は、リリーを見るなり泣きながら抱きついた。
「リリー! すまない!! 辛い思いをさせて本当にすまない!」
「お父様、大丈夫です。少し苦しいです」
「父上! リリーが苦しそうだ。少し緩めてやってくれ」
「すまない」
辺境伯は、名残惜しそうにリリーから離れた。
「皆、食事中にすまないな。まだ、パーティーは終わってはいないんだが、父上が、どうしてもリリーに会いたいと騒いでな」
「今夜の主役が、パーティーを抜けても大丈夫なのですか?」
リアムがレアに問いかけたが……。
「大丈夫だろう。もともとうちでは、あまりパーティーは開かないんだ。父上も数日前に知ったそうだ。今回のパーティーは、叔母上が勝手に仕込んだからな」
「そんなことってあるのですか?」
「……まあ、本来はそんなことないだろうが。父上は、周りから寛容だと言われてはいるが、大雑把なんだ。それに、興味が無いことには適当だ」
「……そうですか」
レアと話しているリアムを見るなり、辺境伯が声をかけた。
「もしかして、君はルーベルトの息子か!? そっくりだな。それに、君は……ルイーズちゃんか??」
「はい。初めまして。ルイーズ・ブランです。どうぞお見知りおきを」
ルイーズとリアム、そしてエリーが挨拶すると、辺境伯は感動したかのような表情になった。
「あんなことがあったから、ルーベルトは君たちに中々会わせてくれなかったんだ。俺はあいつのことを弟のよう思っているんだがな。でも、ようやく会うことができて嬉しいよ。それに、今回はリリーを助けてくれたそうだね。本当にありがとう。感謝してもしきれないよ。」
「とんでもないことです。リリーちゃんが無事で、本当に良かったです」
クレメント兄妹とそっくりな笑顔で頷く辺境伯は、リリーの無事な姿を見て安心したのか、後のことをレアに任せると部屋を出て行った。
「皆ありがとう。父上も安心したようだ。父上は、兄上から今回の件を聞いた時に、今にも叔母上を殺めそうなほど殺気立っていたんだ。キャサリンが兄上と婚約したがっていることには気づいていたそうだが、叔母上の気持ちには全く気づかなかったそうだ」
「そうでしたか。御父上はパーティーに戻られたのでしょうか?」
「これから地下に行くと言っていた。叔母上の取り調べは終わっているが、他にも聞くことがあるらしい。パーティーは、エリザベスが回しているから大丈夫だ。それも王妃様から頼まれていたらしいからな」
「それで、二日も前にこちらへいらしていたんですね」
「辺境伯家の者が、三人も家を空けていたんだ。兄上か私が屋敷にいれば、今回のことは未然に防げたかもしれない。兄上を引き止めていた王家は、責任を感じているのかもな」
ルイーズと話すレアの顔には、後悔がにじみ出ているようだ。
「それでも、これからはリリーちゃんと過ごしてあげられるのですよね」
「もちろんだ。もう一人にするつもりはない」
「それを聞けて、安心しました」
会話を聞いていたリリーが、何やら言いたげな様子で二人を見ている。
「ルーちゃんも、ずっとここにいられたらいいのに……」
「リリー、ルーちゃんはまだ学校があるんだ。兄上が頑張れば、卒業後はここに来てもらえるかもしれないが……それも断定できない」
レアに宥められても、諦められない様子のリリー。
「......ルーちゃん、また来てくれる?」
「もちろん。いつとは言えませんが、必ず会いに来ます」
「約束ね。絶対戻って来てね」
「ええ、約束です」
二人は約束を交わした。後にこの約束が、ルイーズの意思に影響を与えることになる。
外の喧騒から、辺境伯が騎士団を引き連れて戻って来たことは予想がついたが、リリーから離れるつもりはないのだろう。
「……ルーちゃん?」
どうやらリリーが目を覚ましたようだ。
「リリーちゃん、気分はどうですか?」
「大丈夫……ルーちゃん、ずっといてくれたの?」
微笑みながら頷くルイーズ。
「ありがとう」
嬉しそうにはにかむリリーを見て、ルイーズは切なくなったのだろう。リリーの手をそっと撫でながら頷いている。
しばらくして、エリーとリアムが部屋を訪ねてきた。ルイーズもようやく仮眠をとることができたようだ。
リリーとリアムが楽しそうに話をしている傍らで、ルイーズがエリーにリオンの話をしているようだ。
「リオンさんから、卒業後にここへ来ないかって誘われたの」
「そう……、迷ってるの? 卒業まで、まだ考える時間はあるわ。私は、ルイーズが決めたことを応援する。でも、ここにいる間にリオンさんときちんと話した方が良いわ」
「うん……そうするわ」
つぶさに説明しなくても、エリーにはルイーズの迷いが分かったようだ。
その後、夕食を四人で摂っているところへ、レアが辺境伯を連れてやってきた。銀色の髪に立派な体格のその人は、リリーを見るなり泣きながら抱きついた。
「リリー! すまない!! 辛い思いをさせて本当にすまない!」
「お父様、大丈夫です。少し苦しいです」
「父上! リリーが苦しそうだ。少し緩めてやってくれ」
「すまない」
辺境伯は、名残惜しそうにリリーから離れた。
「皆、食事中にすまないな。まだ、パーティーは終わってはいないんだが、父上が、どうしてもリリーに会いたいと騒いでな」
「今夜の主役が、パーティーを抜けても大丈夫なのですか?」
リアムがレアに問いかけたが……。
「大丈夫だろう。もともとうちでは、あまりパーティーは開かないんだ。父上も数日前に知ったそうだ。今回のパーティーは、叔母上が勝手に仕込んだからな」
「そんなことってあるのですか?」
「……まあ、本来はそんなことないだろうが。父上は、周りから寛容だと言われてはいるが、大雑把なんだ。それに、興味が無いことには適当だ」
「……そうですか」
レアと話しているリアムを見るなり、辺境伯が声をかけた。
「もしかして、君はルーベルトの息子か!? そっくりだな。それに、君は……ルイーズちゃんか??」
「はい。初めまして。ルイーズ・ブランです。どうぞお見知りおきを」
ルイーズとリアム、そしてエリーが挨拶すると、辺境伯は感動したかのような表情になった。
「あんなことがあったから、ルーベルトは君たちに中々会わせてくれなかったんだ。俺はあいつのことを弟のよう思っているんだがな。でも、ようやく会うことができて嬉しいよ。それに、今回はリリーを助けてくれたそうだね。本当にありがとう。感謝してもしきれないよ。」
「とんでもないことです。リリーちゃんが無事で、本当に良かったです」
クレメント兄妹とそっくりな笑顔で頷く辺境伯は、リリーの無事な姿を見て安心したのか、後のことをレアに任せると部屋を出て行った。
「皆ありがとう。父上も安心したようだ。父上は、兄上から今回の件を聞いた時に、今にも叔母上を殺めそうなほど殺気立っていたんだ。キャサリンが兄上と婚約したがっていることには気づいていたそうだが、叔母上の気持ちには全く気づかなかったそうだ」
「そうでしたか。御父上はパーティーに戻られたのでしょうか?」
「これから地下に行くと言っていた。叔母上の取り調べは終わっているが、他にも聞くことがあるらしい。パーティーは、エリザベスが回しているから大丈夫だ。それも王妃様から頼まれていたらしいからな」
「それで、二日も前にこちらへいらしていたんですね」
「辺境伯家の者が、三人も家を空けていたんだ。兄上か私が屋敷にいれば、今回のことは未然に防げたかもしれない。兄上を引き止めていた王家は、責任を感じているのかもな」
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「それでも、これからはリリーちゃんと過ごしてあげられるのですよね」
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「ルーちゃんも、ずっとここにいられたらいいのに……」
「リリー、ルーちゃんはまだ学校があるんだ。兄上が頑張れば、卒業後はここに来てもらえるかもしれないが……それも断定できない」
レアに宥められても、諦められない様子のリリー。
「......ルーちゃん、また来てくれる?」
「もちろん。いつとは言えませんが、必ず会いに来ます」
「約束ね。絶対戻って来てね」
「ええ、約束です」
二人は約束を交わした。後にこの約束が、ルイーズの意思に影響を与えることになる。
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