【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
72 / 84
第6章 問題解決に向けて

9 遠征帰還パーティー(前日)②

しおりを挟む

「姉上、僕も一緒に行きます!」

 ルイーズは、リアムの言葉に頷くと、手を差し出しリアムの手を握りしめ、速足で歩き始めた。

 ルイーズとリアムがレアの部屋に入ると、医者が意識のないリリーを診察しているところだった。その横では、心配そうに見つめるリオンとレア、そして痛々しそうにリリーを見つめるメアリーがいた。

 医者が診察を終えると、リオンに何やら告げているようだ。

「睡眠薬を飲まされておる……絶対安静じゃ。わしも今夜はここに泊まる。何かあったらすぐに呼びに来い」

 その言葉にリオンは頷き、レアは辛そうな顔で俯いたままだ。医者はメアリーに薬を渡して説明すると部屋を出て行った。

「すまない、リリー。私のせいだ……私が部屋を出なければ……」

 俯いたままのレアは、自分を責めるように何度もリリーに謝っている。

「レア、お前はずっとリリーの世話をしてくれていた。だから、自分を責めないでくれ。俺がもっと配慮するべきだった」

「兄上は悪くない。自分が面倒を見ると言ったんだ。それに、侍女たちを信用できなくて拒んでいたのは私だ……」

「メアリー、レアを休ませてやってくれ。その後は、リリーの世話も頼む」

「かしこまりました」

 レアを連れて部屋を後にするメアリー。

「私にも、リリーちゃんの御世話をさせてもらえませんか? お手伝いの人数は多いほうが良いと思います。お願いします」

 三人のやり取りを見ていたルイーズは、話しが終わるや否や、リオンに手伝いをさせてほしいと申し出た。

「いや、しかし……」

 リオンが返事に躊躇っていると、部屋にはシオンが入ってきた。

「良いじゃない、リオン。お願いすれば。ルーちゃんなら信用できるでしょう?」

「ああ、信用はしているが…………シオン、侍女の取り調べは終わったのか?」

「終わったよ。吐かないから、自白剤飲ませたら、聞いていないことまで話してくれたよ」

「そうか。叔母とキャサリンも客室に入ったようだ。明け方までには片付ける」

 頷き部屋を出ようとしたシオンは、振り向きざまに「もっと頼りなよ」と言い残し、その場を後にした。

「すまない。リリーの世話を任せても良いだろうか?」

ルイーズは、「任せてください」と返事を返すと、リオンに何かを尋ねているようだ。

「リアムが一人だと心配なので、夜はこの部屋に一緒にいることを許してもらえますか?」

「もちろんだ。しばらくの間は一人にならないように、是非そうしてほしい」

「ありがとうございます。では、分担などはメアリーさんに相談させていただきますね」

「わかった。でも、無理だけはしないでくれ」

 ルイーズは、頷き返すと急いでリリーの側に駆け寄った。部屋に戻ってからも気がかりだったのだろう。顔色の変化や髪が濡れてはいないか、着替えた寝間着は快適そうかなど、全てを確認するとリリーの手に自分の手を重ねて寄り添った。

 その様子を見ていたリオンに、リアムが近づき話し掛けた。

「リオンさん、忙しいんですよね。ここは姉と僕に任せて、シオンさんのところに行ってください」
「リアムありがとう。そうさせてもらうよ。この部屋にもすぐに護衛はつけるが……。二人を…よろしく頼む」
「はい」

 二人のことをリアムに任せ、リオンは急ぎシオンの所へ向かったようだ。


 ♦


 リオンの執務室、キースとクロード、そしてシオンの三名が今後の流れについて確認をしている。

「皆、待たせた。ブライスはまだ戻ってきていないな」
「ブライスは、まだ伯爵令嬢の護衛中。あの子は攻めが強いから、色々引き出してくれるんじゃないかな……。それで、リリーちゃんのお世話はルーちゃんに任せてきた?」
「ああ」
「真面目そうな子だし、母性が強そうだから、少しは甘えればいいんじゃないかな」
「確かに」

 部屋へ入ってきたリオンにシオンが声を掛けると、その後ろではクロードが相槌を打っている。

「ああ、そうだな。今でも自分が守りたいという気持ちは変わらないが、ルイーズがリリーを気にかける様子を見ていたら、何だかすごく安心したんだ」
「リオン……良かったね」
「ああ」

 リオンとシオンの会話を聞いていたキースが、リオンに発破をかけた

「婚約したかったら、早く解決しないとな」
「そうだな」

 頷きながらもクロードが声を掛けた

「皆さん、打ち合わせの続きをしますよ」
「クロードすまない。続きから頼む」

 クロードはリオンに頷くと、皆に向けて話し始めた。

「現時点では、計画通りです。今、シャロン伯爵令嬢がキャサリン嬢の部屋でお茶をしています。護衛としてブライスと王宮の騎士が一名ついていますので、何か起きたらその場で捕縛します。こちらは大丈夫だと思うのですが、心配なのはキャサリン嬢の母親ですね。侍女を使ってリリー嬢を亡き者にしようと企んだくらいです。まだなにか仕掛けてくるかもしれませんので、こちらには王宮の騎士を三名配置しています。そして我々は、合図があったらキャサリン嬢の部屋へ突入します」

「わかった。それでは、キャサリンがいる部屋の隣部屋に移動しよう」

 皆はその言葉で一斉に立ち上がった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。 ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。 程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが… 思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。 喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___  ※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)   異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》

【完結】平凡な令嬢、マリールイスの婚約の行方【短編】

青波鳩子
恋愛
平凡を自認する伯爵令嬢マリールイスは、格上の公爵家嫡男レイフ・オークランスから『一目惚れをした』と婚約を申し込まれる。 困惑するマリールイスと伯爵家の家族たちは、家族会議を経て『公爵家からの婚約の申し込みは断れない』と受けることを決めた。 そんな中、レイフの友人の婚約パーティに招かれたマリールイスは、レイフから贈られたドレスを身に着けレイフと共に参加する。 挨拶後、マリールイスをしばらく放置していたレイフに「マリールイスはご一緒ではありませんか?」と声を掛けたのは、マリールイスの兄だった。 *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他のサイトでも公開しています。

処理中です...