【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第6章 問題解決に向けて

9 遠征帰還パーティー(前日)②

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「姉上、僕も一緒に行きます!」

 ルイーズは、リアムの言葉に頷くと、手を差し出しリアムの手を握りしめ、速足で歩き始めた。

 ルイーズとリアムがレアの部屋に入ると、医者が意識のないリリーを診察しているところだった。その横では、心配そうに見つめるリオンとレア、そして痛々しそうにリリーを見つめるメアリーがいた。

 医者が診察を終えると、リオンに何やら告げているようだ。

「睡眠薬を飲まされておる……絶対安静じゃ。わしも今夜はここに泊まる。何かあったらすぐに呼びに来い」

 その言葉にリオンは頷き、レアは辛そうな顔で俯いたままだ。医者はメアリーに薬を渡して説明すると部屋を出て行った。

「すまない、リリー。私のせいだ……私が部屋を出なければ……」

 俯いたままのレアは、自分を責めるように何度もリリーに謝っている。

「レア、お前はずっとリリーの世話をしてくれていた。だから、自分を責めないでくれ。俺がもっと配慮するべきだった」

「兄上は悪くない。自分が面倒を見ると言ったんだ。それに、侍女たちを信用できなくて拒んでいたのは私だ……」

「メアリー、レアを休ませてやってくれ。その後は、リリーの世話も頼む」

「かしこまりました」

 レアを連れて部屋を後にするメアリー。

「私にも、リリーちゃんの御世話をさせてもらえませんか? お手伝いの人数は多いほうが良いと思います。お願いします」

 三人のやり取りを見ていたルイーズは、話しが終わるや否や、リオンに手伝いをさせてほしいと申し出た。

「いや、しかし……」

 リオンが返事に躊躇っていると、部屋にはシオンが入ってきた。

「良いじゃない、リオン。お願いすれば。ルーちゃんなら信用できるでしょう?」

「ああ、信用はしているが…………シオン、侍女の取り調べは終わったのか?」

「終わったよ。吐かないから、自白剤飲ませたら、聞いていないことまで話してくれたよ」

「そうか。叔母とキャサリンも客室に入ったようだ。明け方までには片付ける」

 頷き部屋を出ようとしたシオンは、振り向きざまに「もっと頼りなよ」と言い残し、その場を後にした。

「すまない。リリーの世話を任せても良いだろうか?」

ルイーズは、「任せてください」と返事を返すと、リオンに何かを尋ねているようだ。

「リアムが一人だと心配なので、夜はこの部屋に一緒にいることを許してもらえますか?」

「もちろんだ。しばらくの間は一人にならないように、是非そうしてほしい」

「ありがとうございます。では、分担などはメアリーさんに相談させていただきますね」

「わかった。でも、無理だけはしないでくれ」

 ルイーズは、頷き返すと急いでリリーの側に駆け寄った。部屋に戻ってからも気がかりだったのだろう。顔色の変化や髪が濡れてはいないか、着替えた寝間着は快適そうかなど、全てを確認するとリリーの手に自分の手を重ねて寄り添った。

 その様子を見ていたリオンに、リアムが近づき話し掛けた。

「リオンさん、忙しいんですよね。ここは姉と僕に任せて、シオンさんのところに行ってください」
「リアムありがとう。そうさせてもらうよ。この部屋にもすぐに護衛はつけるが……。二人を…よろしく頼む」
「はい」

 二人のことをリアムに任せ、リオンは急ぎシオンの所へ向かったようだ。


 ♦


 リオンの執務室、キースとクロード、そしてシオンの三名が今後の流れについて確認をしている。

「皆、待たせた。ブライスはまだ戻ってきていないな」
「ブライスは、まだ伯爵令嬢の護衛中。あの子は攻めが強いから、色々引き出してくれるんじゃないかな……。それで、リリーちゃんのお世話はルーちゃんに任せてきた?」
「ああ」
「真面目そうな子だし、母性が強そうだから、少しは甘えればいいんじゃないかな」
「確かに」

 部屋へ入ってきたリオンにシオンが声を掛けると、その後ろではクロードが相槌を打っている。

「ああ、そうだな。今でも自分が守りたいという気持ちは変わらないが、ルイーズがリリーを気にかける様子を見ていたら、何だかすごく安心したんだ」
「リオン……良かったね」
「ああ」

 リオンとシオンの会話を聞いていたキースが、リオンに発破をかけた

「婚約したかったら、早く解決しないとな」
「そうだな」

 頷きながらもクロードが声を掛けた

「皆さん、打ち合わせの続きをしますよ」
「クロードすまない。続きから頼む」

 クロードはリオンに頷くと、皆に向けて話し始めた。

「現時点では、計画通りです。今、シャロン伯爵令嬢がキャサリン嬢の部屋でお茶をしています。護衛としてブライスと王宮の騎士が一名ついていますので、何か起きたらその場で捕縛します。こちらは大丈夫だと思うのですが、心配なのはキャサリン嬢の母親ですね。侍女を使ってリリー嬢を亡き者にしようと企んだくらいです。まだなにか仕掛けてくるかもしれませんので、こちらには王宮の騎士を三名配置しています。そして我々は、合図があったらキャサリン嬢の部屋へ突入します」

「わかった。それでは、キャサリンがいる部屋の隣部屋に移動しよう」

 皆はその言葉で一斉に立ち上がった。


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