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第6章 問題解決に向けて
7 遠征帰還パーティー(二日前)
しおりを挟むブラン姉弟の部屋には、朝からエリーが訪ねていた。
「エマさんは、朝からパーティーの打ち合わせなのよね?」
「そうらしいわ」
「僕たちにも、手伝えることがあると良いですね」
ルイーズとエリー、そしてリアムの三人がソファーに座り話をしているそのとき、ドアをノックして、部屋へ入ってきた人物がいた。ここにいるはずのないエリザベスだ。
「入るわよ。エリー、ルーちゃんお久しぶりね。あら、貴方がリアム君かしら? 私は、エリザベス・ローレン。エマとエリーの従姉よ。どうぞよろしくね」
「ローレン…公爵家のご令嬢ですか? 初めまして、ブラン子爵家嫡男のリアム・ブランと申します。以後、お見知りおきを」
「リアム君、エマから聞いているわ。今回の作戦を考えたんですってね。とても良い案だわ。これからもよろしくね」
「はい……頑張ります」
「リザちゃん、来るなんて一言も聞いていないわ。王都から離れて大丈夫なの?」
エリーがエリザベスに問いかける。
「大丈夫、諸々のことは終わらせてきたわ。それに、ルーちゃんとリリーちゃんが大変な状況だと聞いて、急いで来たのよ。でも、二人とも元気そうで安心したわ」
エリザベスはルイーズの顔を見て安心した様な表情だ。
「エリザベス様、ご心配をおかけして申し訳ございません。私はもう大丈夫です」
「本当に良かったわ。でも、ここへ来てから色々なことがあって、ルーちゃんは目的が果たせていないのよね? それが残念ね」
「……練習はしていませんが、先日リオンさんに、馬に乗せていただきました」
「そう……二人でどこかへお出かけしたのかしら?」
「……お花畑へ…行きました」
「まあ、やるわね! それで?」
「リザちゃん! そこまでよ」
エリザベスの質問攻めにも、素直に答えるルイーズ。それを心配してか、エリーがエリザベスに釘を刺したようだ。
「エリー……良いところだったのに……まあ、でもそうね。二人のことだもの、根掘り葉掘り聞くのも失礼よね」
ふくれっ面のエリザベスは、軽く反省したようだ。それから気を取り直したのか、三人に向き合い真剣な顔で語りだした。
「……実は、今回こちらに来た理由なんだけど、王妃様からの依頼もあったの。辺境伯夫人が亡くなられてから、当主様は後妻を迎えず女主人が不在だったでしょう。王妃様は、そのことを心配されていたそうなの」
「やはり、そうなのですね……伯爵夫人は……」
「姉上は、ご存じだったのですか?」
「淑女教育を受けていた時に、貴族名鑑にも目を通したから」
「なるほど」
ルイーズとエリーは、目を合わせ頷き合っている。二人は、そのことについても話していたようだ。隣国に接している辺境伯爵家が、女主人不在というのは、周りから見れば心もとなく思えるのだろう。
「こちらの使用人たちの統制が取れていないことや、隣国の身内のことをエマから聞いた
わ。そのうえ、隣国絡みで厄介なことが起きていることも、王妃様にお伝えしたの。それで
今回、私の侍女と護衛という名目で、10名ほどが送り込まれたわ」
エリザベスの発言に対し、「お聞きしてもよろしいですか」とルイーズが問いかけると、その言葉に頷き返すエリザベス。
「名目ということは、それ以外のお役目があるのでしょうか?」
ルイーズの言葉に、またも頷き返すエリザベスは言葉を続けた。
「……隣国の人間を捕縛することを想定して、王宮の騎士団から護衛としてついて来たの。今回の問題には、隣国に住むクレメント家の身内が絡んでいるでしょう? 解決するには、彼女たちがこちらに来たタイミングで、決着をつけるしかないと思ったのでしょうけど……本来、国の要である辺境伯爵家が、遠征帰還パーティーのような場で、身内の恥をさらすわけにはいかないの。それに、隣国の人間が絡んでいるから、国に逐一報告もしないといけないわ。リオンさんもそれが分かっていて、陛下に報告していたみたいね。」
「恥をさらすわけにはいかない……ということは、パーティー前日までに、決着をつけるということですか? でも、隣国の方たちがいつ到着されるの分かりませんよね?」
「そうね。でも、通常であれば、遠方の者は前日までにパーティーが開催される貴族家へ入る方がほとんどなの。しかも、レアの叔母とその娘さんが参加されるのよ。クレメント家の当主と次期当主に、想いを寄せているそうじゃない。この機会を逃すはずないと思うのよね」
「この機会とは、何ですか?」
エリザベスに質問を投げ続けるリアム。
「王宮ではなく、貴族家でのパーティーよ。二人は、たいていの者は気が緩むとでも思っているのではないかしら。普段、クレメント家では、遠征帰還パーティーなんて、そんなに開催しないらしいわ。それを開催するように仕向けて、使用人も送り込んで……相手の本気度を感じるでしょう?」
ルイーズとエリーそしてリアムの三人は、俯いたまま考え込んでいるようだ。
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