70 / 84
第6章 問題解決に向けて
7 遠征帰還パーティー(二日前)
しおりを挟むブラン姉弟の部屋には、朝からエリーが訪ねていた。
「エマさんは、朝からパーティーの打ち合わせなのよね?」
「そうらしいわ」
「僕たちにも、手伝えることがあると良いですね」
ルイーズとエリー、そしてリアムの三人がソファーに座り話をしているそのとき、ドアをノックして、部屋へ入ってきた人物がいた。ここにいるはずのないエリザベスだ。
「入るわよ。エリー、ルーちゃんお久しぶりね。あら、貴方がリアム君かしら? 私は、エリザベス・ローレン。エマとエリーの従姉よ。どうぞよろしくね」
「ローレン…公爵家のご令嬢ですか? 初めまして、ブラン子爵家嫡男のリアム・ブランと申します。以後、お見知りおきを」
「リアム君、エマから聞いているわ。今回の作戦を考えたんですってね。とても良い案だわ。これからもよろしくね」
「はい……頑張ります」
「リザちゃん、来るなんて一言も聞いていないわ。王都から離れて大丈夫なの?」
エリーがエリザベスに問いかける。
「大丈夫、諸々のことは終わらせてきたわ。それに、ルーちゃんとリリーちゃんが大変な状況だと聞いて、急いで来たのよ。でも、二人とも元気そうで安心したわ」
エリザベスはルイーズの顔を見て安心した様な表情だ。
「エリザベス様、ご心配をおかけして申し訳ございません。私はもう大丈夫です」
「本当に良かったわ。でも、ここへ来てから色々なことがあって、ルーちゃんは目的が果たせていないのよね? それが残念ね」
「……練習はしていませんが、先日リオンさんに、馬に乗せていただきました」
「そう……二人でどこかへお出かけしたのかしら?」
「……お花畑へ…行きました」
「まあ、やるわね! それで?」
「リザちゃん! そこまでよ」
エリザベスの質問攻めにも、素直に答えるルイーズ。それを心配してか、エリーがエリザベスに釘を刺したようだ。
「エリー……良いところだったのに……まあ、でもそうね。二人のことだもの、根掘り葉掘り聞くのも失礼よね」
ふくれっ面のエリザベスは、軽く反省したようだ。それから気を取り直したのか、三人に向き合い真剣な顔で語りだした。
「……実は、今回こちらに来た理由なんだけど、王妃様からの依頼もあったの。辺境伯夫人が亡くなられてから、当主様は後妻を迎えず女主人が不在だったでしょう。王妃様は、そのことを心配されていたそうなの」
「やはり、そうなのですね……伯爵夫人は……」
「姉上は、ご存じだったのですか?」
「淑女教育を受けていた時に、貴族名鑑にも目を通したから」
「なるほど」
ルイーズとエリーは、目を合わせ頷き合っている。二人は、そのことについても話していたようだ。隣国に接している辺境伯爵家が、女主人不在というのは、周りから見れば心もとなく思えるのだろう。
「こちらの使用人たちの統制が取れていないことや、隣国の身内のことをエマから聞いた
わ。そのうえ、隣国絡みで厄介なことが起きていることも、王妃様にお伝えしたの。それで
今回、私の侍女と護衛という名目で、10名ほどが送り込まれたわ」
エリザベスの発言に対し、「お聞きしてもよろしいですか」とルイーズが問いかけると、その言葉に頷き返すエリザベス。
「名目ということは、それ以外のお役目があるのでしょうか?」
ルイーズの言葉に、またも頷き返すエリザベスは言葉を続けた。
「……隣国の人間を捕縛することを想定して、王宮の騎士団から護衛としてついて来たの。今回の問題には、隣国に住むクレメント家の身内が絡んでいるでしょう? 解決するには、彼女たちがこちらに来たタイミングで、決着をつけるしかないと思ったのでしょうけど……本来、国の要である辺境伯爵家が、遠征帰還パーティーのような場で、身内の恥をさらすわけにはいかないの。それに、隣国の人間が絡んでいるから、国に逐一報告もしないといけないわ。リオンさんもそれが分かっていて、陛下に報告していたみたいね。」
「恥をさらすわけにはいかない……ということは、パーティー前日までに、決着をつけるということですか? でも、隣国の方たちがいつ到着されるの分かりませんよね?」
「そうね。でも、通常であれば、遠方の者は前日までにパーティーが開催される貴族家へ入る方がほとんどなの。しかも、レアの叔母とその娘さんが参加されるのよ。クレメント家の当主と次期当主に、想いを寄せているそうじゃない。この機会を逃すはずないと思うのよね」
「この機会とは、何ですか?」
エリザベスに質問を投げ続けるリアム。
「王宮ではなく、貴族家でのパーティーよ。二人は、たいていの者は気が緩むとでも思っているのではないかしら。普段、クレメント家では、遠征帰還パーティーなんて、そんなに開催しないらしいわ。それを開催するように仕向けて、使用人も送り込んで……相手の本気度を感じるでしょう?」
ルイーズとエリーそしてリアムの三人は、俯いたまま考え込んでいるようだ。
3
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!
Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!!
男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。
そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢!
そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。
どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの?
ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます!
しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、
物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど……
2022.4.7
予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン)
《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます!
とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。
ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。
よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる