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第6章 問題解決に向けて
4 リアムの考え
しおりを挟む「そうだ。リオンには、従妹にハニートラップを仕掛けるために、練習をしてもらっていたんだ。聞くところによると、その従妹はリオンに惚れていて、かなり押しが強い人物だそだ。」
「練習…そういうことですか……それで、リオンさんもされるがままで、抵抗もしていなかったんですね」
「エマ…あまり、リオンを虐めないでくれるか。今日だって、無理やり連れていったんだ。いい加減、女性の扱いに慣れてもらわないと困るんだ」
「虐めてなんていないわ。ただ……良い感じだったのに、振り出しに戻ったから残念に思っただけよ。今が、二人にとって大事な時なのに……」
リオンは、眉間に皺を寄せて俯き加減だ。
「君も幼いが、後継者教育を受けてるだろうから分かるよな。色恋も大事だが、後継者になる者にとって、大事な時機がある。今はクレメント家にとっても、国にとってもその時なんだ」
キースは、ルイーズの身内に助けを求めたようだ。
「僕は、幼いという年齢ではありません。それに、教育は受けていますから、跡継ぎにとって大事なことはもちろん学んでいます。
僕は……(もうすぐ)10歳なので、色恋には疎いかもしれません。でも、僕にとって家族はとても大切です。姉や妹を傷つける人は、絶対に許しません。父も同じ考えだと思います」
「リアムの言う通りだ………俺は、色仕掛けはやらない」
「お前、それが一番確実な方法なんだぞ。相手が結婚を狙っているならなおさらだ。お前が誘惑すれば、簡単に口を割るかもしれない」
「公爵令息様は、リオンさんが色仕掛けをできると思っているんですか?僕は無理だと思います。それから、リオンさんもできないのな『やらない』ではなく、違う案を出してください」
それまで、黙って三人の会話を聞いていたクロードが、リアムに微笑んだ。
「その通りです。リアム、その考えも御父上から?」
「はい、〈やらない・できない〉は認めてもらえません。課題を提出したときも、今までのやり方に固執するな、違うものを出すようにと言われます」
「そうですか……では、因みにリアムだったら、どんな案を出しますか?」
「良いのよ、リアム君。遠慮せずに言ってやりなさい」
黙って考えていたリアムは、エマの顔を覗き見た。それに気づいたエマは、リアムが遠慮してるとでも思ったのか、後押しするような言葉を吐いた。そんなエマに頷き返すリアム。
「僕は、今回エマさんと一緒に行動して驚きました。エマさんの情報を集める能力の高さは、すごいと思います。常に疑問を持って、仮説を立てて、自ら動いて答えを見つける。それに、エマさんと話していると、ついつい本音を話してしまうんです。
その従妹さんが押の強い人なら、対抗できるのは、エマさんだけだと思います。だから、僕はリオンさんの色仕掛けではなく、エマさんの情報収集に賭けた方が良いと思います」
リアムの話を黙って聞いていたキースが、エマを見る。
「エマ、行けるか?」
「えっ? 行けるかって……ハァ~ もう、何でもやるわよ。リアム君にそこまで言われたらやるしかないわよ」
「エマ嬢、よろしく頼む」
リオンにも頭を下げられ、エマは承諾したようだ。
それからは全員で、パーティー当日の計画を話し合い、ルイーズとエリーそしてリアムの三人は、レアとリリーと共にこの部屋で待機することになったようだ。
「では、そういうことで……。当日は何が起こるかわからない。三人は絶対に部屋からは出ないように」
リオンに念押しされ、頷く三人。
話し合いも終わり、キースやクロードが部屋から退出しようとする中、リオンはその場を動けずにいるようだ。
「ルイーズ、少し良いだろうか?」
「はい、何でしょうか」
ルイーズの淡々とした話し方に戸惑うリオン。
「すまなかった」
「何について…でしょうか……?」
「…………」
黙り込むリオンに戸惑うルイーズだが、何か伝えたい言葉があったようだ。
「リオンさん、先日は看病をしていただいて、ありがとうございました」
「いや、良いんだ。自分がしたくてしただけだ。それに、回復して良かった」
「感謝しています……。でも、まだ呼び捨てで呼ばれる関係にはないと思います。できれば、エマさんやエリーに対する呼び方と、同じにしていただきたいです」
「いや……だったのだろうか? すまない、気をつける」
「はい、お願いします」
それからしばらくしても話し出さないリオンに、ルイーズはお辞儀をしてテーブルの上を片付け始めた。
その一部始終を近くで見ていたエマとキースは……
「リオンさんって、あそこまで不器用だったかしら……」
「いや、舞踏会やお茶会では笑わないが、それなりに接していると思う。言い寄られれば、上手く躱しているしな。まさか、本命を前にすると、あそこまで酷くなるなんて思わなかった。......なあ、ルイーズ嬢は怒っているのか?」
「うーーーん。わからないわ。ねえ、エリー。ルーちゃんは怒ってる??」
「怒っていないわ。でも、あんな感じのルイーズは初めて見るかもしれない……」
三人と一緒にいたリアムは、皆の会話を聞きながらリオンを見ていたが、すっと立ち上がるとリオンの側に歩み寄った。
「姉上は……料理も好きですが、花が大好きです」
「リアム……ありがとう」
弱々しく笑うリオンと、その背中をポンポンと叩くリアム。ルイーズのお世話係をした二人には、やはり絆が結ばれていたようだ。
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