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第6章 問題解決に向けて
2 エリーの怒り
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怒り心頭のエリーが、首を何度も同じ方向に動かし、リアムに何かを知らせているようだ。エリーの示す方向を見たリアムも、エリーと同じ顔つきになっている。
「…………許せません」
そんな二人のやり取りに気付いたエマが、二人と同じ場所を見てため息を吐いた。
「いつものことだと思うわ。彼は舞踏会に出ると、いつも囲まれているらしいから。もちろん、彼だけではないわよ。殿下やキースもね。姉さまが言っていたわ。」
当然と言わんばかりの様子で、エマは二人を見ている。
皆のやり取りに気付いたルイーズも、釣られてその光景を目にしたようだ。リオンに懐かしさと安心感、そして、ほのかな恋心を抱き始めていたのだろう。少し悲し気な表情を見せるルイーズ。
そんなルイーズを見た二人は、唇を噛み締め、練習場にいる人物を睨みつけた。こちらの二人が兄弟なのでは、と思うほどにそっくりな表情だ。
「ルイーズ行きましょう」「姉上行きますよ」
二人に連れられて歩き出すルイーズは、そんな二人に心配をかけまいと前を向いた。
♦
レアの部屋に着くと、エマが静かにノックをした。ドアを開けて笑顔で迎えるレアは、四人に中へ入るように手招きをする。部屋の中には、レアとリリーの他にメイドのメアリーがいるようだ。
「リリーは、話せるくらいに回復したんだ。だから、皆にも紹介したい。こっちに来てくれるか?」
頷く四人は、レアに連れられてベッドに行くと、リリーは横になったまま、目をキョロキョロとさせている。
「リリー、エマは分かっているな。こちらは、エマの妹のエリー嬢だ。そして、こちらがルイーズ嬢と、弟のリアン殿だ」
「皆さん、初めまして。リリーです。よろしくお願いします」
三人は、リリーに挨拶を返した。
「リリー、こちらがリリーを助けてくれたルイーズ嬢だ」
「姉に話を聞きました。助けてくれて、ありがとうございます」
ルイーズは、万全ではない体調で必死にお礼を言うリリーに、胸が締め付けられる思いがした。
「お役に立てて良かったです。早く回復するように、またお部屋にお邪魔しても良いですか?」
「はい、待ってます」
ルイーズは、手を伸ばして触れて良いか断りを入れると、リリーの手を優しく包んだ。お互いに見つめ合い、笑顔になる二人。このやり取りを見ていた四人も、ほっこりとした二人の空気感に癒されているようだ。
そんな時、エマが急に振り向きメアリーを見た。
「あ、そうだわ。メアリーさん、王妃様のお誕生日はいつだったかしら?」
突然、エマから声を掛けられたメアリーは、微動だにせずその場に立ったままエマを見ている。そんなメアリーの顔を見ていたエマは、にやりとした目つきで口角を上げた。
「…………エマ様、好奇心が旺盛なのは結構ですが、あちこちに首を突っ込むと、またお姉様に叱られますよ」
「姉様のことも知ってたか~……今のことは、内緒ね」
お互い笑顔で何事もなかったかのように振る舞う二人に、周りも何かに気づいたのだろうか。誰しも二人の会話に触れることはなかった。
♦
リリーの部屋を後にした四人は、ブラン家に用意された部屋で夕食を共にしていた。夕食は、できるだけ皆で摂ろうとエマに誘われ、ルイーズとリアムは快諾したようだ。
食後は、甘味を欲しがる二人のために、簡易キッチンでマドレーヌを作るルイーズとエリー。
「この簡易キッチンすごいわね。石窯まであるなんて」
「本当ね。こんなに大きなお屋敷だから、石窯も何部屋かにあるのかしら。それに、部屋にキッチンがあると、お仕えする方に直ぐにお料理をお出しできるから良いわね」
屋敷や内装を見ると、侍女目線になるルイーズと、確かにと言わんばかりに頷くエリー。ルイーズがマドレーヌの生地を混ぜ合わせていると、部屋のドアがノックされた。
顔を見合わせた二人は、生地と石窯を見る。
「私が行くわ。ルイーズ、石窯もお願いね」
「ありがとう。火は見ておくわ」
エリーは急いでそこへ向かうと、ドアを開いた。ドアの前には、リオンとキース、そしてクロードが立っていた。
何故この三人が部屋を訪れたのかはわからないが、対峙する敵を見るかのように、目の前に立つリオンを睨みつけるエリー。リオンはというと、訳が分からずに動揺しているようにも見える。
話し出さないエリーに、リオンが話を切り出した。
「四人に話があって来たんだ。他の三人はいるだろうか」
「はい、います。でも、ルイーズには会わせません!」
エリーの大きな声は、他の部屋にも届いたようだ。エマとリアムが急いで部屋から出てきたようだ。
ルイーズのいるキッチンにも、その声は届いていたが、石窯の火を消して向かおうとしたために、皆から出遅れたようだ。
火をそのままにしてエリーのところに向かおうとした途中で、エマの声が聞こえて安心したルイーズは、エマに任せることにしたようだ。
「…………許せません」
そんな二人のやり取りに気付いたエマが、二人と同じ場所を見てため息を吐いた。
「いつものことだと思うわ。彼は舞踏会に出ると、いつも囲まれているらしいから。もちろん、彼だけではないわよ。殿下やキースもね。姉さまが言っていたわ。」
当然と言わんばかりの様子で、エマは二人を見ている。
皆のやり取りに気付いたルイーズも、釣られてその光景を目にしたようだ。リオンに懐かしさと安心感、そして、ほのかな恋心を抱き始めていたのだろう。少し悲し気な表情を見せるルイーズ。
そんなルイーズを見た二人は、唇を噛み締め、練習場にいる人物を睨みつけた。こちらの二人が兄弟なのでは、と思うほどにそっくりな表情だ。
「ルイーズ行きましょう」「姉上行きますよ」
二人に連れられて歩き出すルイーズは、そんな二人に心配をかけまいと前を向いた。
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レアの部屋に着くと、エマが静かにノックをした。ドアを開けて笑顔で迎えるレアは、四人に中へ入るように手招きをする。部屋の中には、レアとリリーの他にメイドのメアリーがいるようだ。
「リリーは、話せるくらいに回復したんだ。だから、皆にも紹介したい。こっちに来てくれるか?」
頷く四人は、レアに連れられてベッドに行くと、リリーは横になったまま、目をキョロキョロとさせている。
「リリー、エマは分かっているな。こちらは、エマの妹のエリー嬢だ。そして、こちらがルイーズ嬢と、弟のリアン殿だ」
「皆さん、初めまして。リリーです。よろしくお願いします」
三人は、リリーに挨拶を返した。
「リリー、こちらがリリーを助けてくれたルイーズ嬢だ」
「姉に話を聞きました。助けてくれて、ありがとうございます」
ルイーズは、万全ではない体調で必死にお礼を言うリリーに、胸が締め付けられる思いがした。
「お役に立てて良かったです。早く回復するように、またお部屋にお邪魔しても良いですか?」
「はい、待ってます」
ルイーズは、手を伸ばして触れて良いか断りを入れると、リリーの手を優しく包んだ。お互いに見つめ合い、笑顔になる二人。このやり取りを見ていた四人も、ほっこりとした二人の空気感に癒されているようだ。
そんな時、エマが急に振り向きメアリーを見た。
「あ、そうだわ。メアリーさん、王妃様のお誕生日はいつだったかしら?」
突然、エマから声を掛けられたメアリーは、微動だにせずその場に立ったままエマを見ている。そんなメアリーの顔を見ていたエマは、にやりとした目つきで口角を上げた。
「…………エマ様、好奇心が旺盛なのは結構ですが、あちこちに首を突っ込むと、またお姉様に叱られますよ」
「姉様のことも知ってたか~……今のことは、内緒ね」
お互い笑顔で何事もなかったかのように振る舞う二人に、周りも何かに気づいたのだろうか。誰しも二人の会話に触れることはなかった。
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リリーの部屋を後にした四人は、ブラン家に用意された部屋で夕食を共にしていた。夕食は、できるだけ皆で摂ろうとエマに誘われ、ルイーズとリアムは快諾したようだ。
食後は、甘味を欲しがる二人のために、簡易キッチンでマドレーヌを作るルイーズとエリー。
「この簡易キッチンすごいわね。石窯まであるなんて」
「本当ね。こんなに大きなお屋敷だから、石窯も何部屋かにあるのかしら。それに、部屋にキッチンがあると、お仕えする方に直ぐにお料理をお出しできるから良いわね」
屋敷や内装を見ると、侍女目線になるルイーズと、確かにと言わんばかりに頷くエリー。ルイーズがマドレーヌの生地を混ぜ合わせていると、部屋のドアがノックされた。
顔を見合わせた二人は、生地と石窯を見る。
「私が行くわ。ルイーズ、石窯もお願いね」
「ありがとう。火は見ておくわ」
エリーは急いでそこへ向かうと、ドアを開いた。ドアの前には、リオンとキース、そしてクロードが立っていた。
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「四人に話があって来たんだ。他の三人はいるだろうか」
「はい、います。でも、ルイーズには会わせません!」
エリーの大きな声は、他の部屋にも届いたようだ。エマとリアムが急いで部屋から出てきたようだ。
ルイーズのいるキッチンにも、その声は届いていたが、石窯の火を消して向かおうとしたために、皆から出遅れたようだ。
火をそのままにしてエリーのところに向かおうとした途中で、エマの声が聞こえて安心したルイーズは、エマに任せることにしたようだ。
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