【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
65 / 84
第6章 問題解決に向けて

2 エリーの怒り

しおりを挟む
 怒り心頭のエリーが、首を何度も同じ方向に動かし、リアムに何かを知らせているようだ。エリーの示す方向を見たリアムも、エリーと同じ顔つきになっている。

「…………許せません」

 そんな二人のやり取りに気付いたエマが、二人と同じ場所を見てため息を吐いた。

「いつものことだと思うわ。彼は舞踏会に出ると、いつも囲まれているらしいから。もちろん、彼だけではないわよ。殿下やキースもね。姉さまが言っていたわ。」

 当然と言わんばかりの様子で、エマは二人を見ている。 

 皆のやり取りに気付いたルイーズも、釣られてその光景を目にしたようだ。リオンに懐かしさと安心感、そして、ほのかな恋心を抱き始めていたのだろう。少し悲し気な表情を見せるルイーズ。

 そんなルイーズを見た二人は、唇を噛み締め、練習場にいる人物を睨みつけた。こちらの二人が兄弟なのでは、と思うほどにそっくりな表情だ。

「ルイーズ行きましょう」「姉上行きますよ」

 二人に連れられて歩き出すルイーズは、そんな二人に心配をかけまいと前を向いた。





 レアの部屋に着くと、エマが静かにノックをした。ドアを開けて笑顔で迎えるレアは、四人に中へ入るように手招きをする。部屋の中には、レアとリリーの他にメイドのメアリーがいるようだ。

「リリーは、話せるくらいに回復したんだ。だから、皆にも紹介したい。こっちに来てくれるか?」

 頷く四人は、レアに連れられてベッドに行くと、リリーは横になったまま、目をキョロキョロとさせている。

「リリー、エマは分かっているな。こちらは、エマの妹のエリー嬢だ。そして、こちらがルイーズ嬢と、弟のリアン殿だ」

「皆さん、初めまして。リリーです。よろしくお願いします」

 三人は、リリーに挨拶を返した。

「リリー、こちらがリリーを助けてくれたルイーズ嬢だ」

「姉に話を聞きました。助けてくれて、ありがとうございます」

 ルイーズは、万全ではない体調で必死にお礼を言うリリーに、胸が締め付けられる思いがした。

「お役に立てて良かったです。早く回復するように、またお部屋にお邪魔しても良いですか?」

「はい、待ってます」

 ルイーズは、手を伸ばして触れて良いか断りを入れると、リリーの手を優しく包んだ。お互いに見つめ合い、笑顔になる二人。このやり取りを見ていた四人も、ほっこりとした二人の空気感に癒されているようだ。

 そんな時、エマが急に振り向きメアリーを見た。

「あ、そうだわ。メアリーさん、王妃様のお誕生日はいつだったかしら?」

 突然、エマから声を掛けられたメアリーは、微動だにせずその場に立ったままエマを見ている。そんなメアリーの顔を見ていたエマは、にやりとした目つきで口角を上げた。


「…………エマ様、好奇心が旺盛なのは結構ですが、あちこちに首を突っ込むと、またお姉様に叱られますよ」

「姉様のことも知ってたか~……今のことは、内緒ね」

 お互い笑顔で何事もなかったかのように振る舞う二人に、周りも何かに気づいたのだろうか。誰しも二人の会話に触れることはなかった。


 ♦ 


 リリーの部屋を後にした四人は、ブラン家に用意された部屋で夕食を共にしていた。夕食は、できるだけ皆で摂ろうとエマに誘われ、ルイーズとリアムは快諾したようだ。

 食後は、甘味を欲しがる二人のために、簡易キッチンでマドレーヌを作るルイーズとエリー。

「この簡易キッチンすごいわね。石窯まであるなんて」
「本当ね。こんなに大きなお屋敷だから、石窯も何部屋かにあるのかしら。それに、部屋にキッチンがあると、お仕えする方に直ぐにお料理をお出しできるから良いわね」

 屋敷や内装を見ると、侍女目線になるルイーズと、確かにと言わんばかりに頷くエリー。ルイーズがマドレーヌの生地を混ぜ合わせていると、部屋のドアがノックされた。

 顔を見合わせた二人は、生地と石窯を見る。

「私が行くわ。ルイーズ、石窯もお願いね」
「ありがとう。火は見ておくわ」

 エリーは急いでそこへ向かうと、ドアを開いた。ドアの前には、リオンとキース、そしてクロードが立っていた。

 何故この三人が部屋を訪れたのかはわからないが、対峙する敵を見るかのように、目の前に立つリオンを睨みつけるエリー。リオンはというと、訳が分からずに動揺しているようにも見える。

 話し出さないエリーに、リオンが話を切り出した。

「四人に話があって来たんだ。他の三人はいるだろうか」

「はい、います。でも、ルイーズには会わせません!」

 エリーの大きな声は、他の部屋にも届いたようだ。エマとリアムが急いで部屋から出てきたようだ。

 ルイーズのいるキッチンにも、その声は届いていたが、石窯の火を消して向かおうとしたために、皆から出遅れたようだ。

 火をそのままにしてエリーのところに向かおうとした途中で、エマの声が聞こえて安心したルイーズは、エマに任せることにしたようだ。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。 ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。 程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが… 思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。 喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___  ※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)   異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》

【完結】平凡な令嬢、マリールイスの婚約の行方【短編】

青波鳩子
恋愛
平凡を自認する伯爵令嬢マリールイスは、格上の公爵家嫡男レイフ・オークランスから『一目惚れをした』と婚約を申し込まれる。 困惑するマリールイスと伯爵家の家族たちは、家族会議を経て『公爵家からの婚約の申し込みは断れない』と受けることを決めた。 そんな中、レイフの友人の婚約パーティに招かれたマリールイスは、レイフから贈られたドレスを身に着けレイフと共に参加する。 挨拶後、マリールイスをしばらく放置していたレイフに「マリールイスはご一緒ではありませんか?」と声を掛けたのは、マリールイスの兄だった。 *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他のサイトでも公開しています。

処理中です...