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第6章 問題解決に向けて
1 メアリーの正体?
しおりを挟むルイーズは、目覚めた翌日にはリオンの部屋からブラン家に用意された客室へと戻っていた。エリーとリアムの付き添いで、部屋に入ったルイーズは、ほっと一息ついた様子でソファーに座っている。
「ルイーズ、何か飲む? ハーブティーが良いかしら」
「姉上、何か食べますか? 僕、メアリーさんにお願いして用意してもらってきます」
ルイーズは、甲斐甲斐しく世話をする二人を引き留めた。
「二人ともありがとう。私はもう大丈夫よ。できれば、三人でお茶を飲みたいかな」
「分かったわ。今、用意するわね」
何故だかずっと嬉しそうな様子のエリーが、簡易キッチンでハーブティーを淹れていると、新たな訪問者がやってきたようだ。
「皆いるかしら。ちょっとお邪魔するわね」
「エマちゃんどうしたの。レアさんと一緒に、妹さんのところに行ったのよね?」
エリーが慌ててドアを開けると、部屋にはエマが入ってきた。
「うん、そうよ。……良い香りだわ。エリー、私にもハーブティー淹れてくれる?」
「もう……、分かったわ。向こうの部屋に二人がいるから、大人しくしていてね」
「大丈夫よ、わかってるわ」
エマがルイーズとリアムの部屋に入ると、エリーも急いでお茶のセットを持って部屋に入ってきた。
「ルーちゃん、体調はどう?」
「もう大丈夫です、エマさんにもご心配をおかけしました」
「私は何もしてないのよ。身体の洗浄や着替えはエリーがしていたし、その他は全て、リアム君とリオンさんがしていたから、何もさせてもらえなかったわ」
「そうでしたか……」
ルイーズは、エマからリオンの様子を聞いて驚きながらも照れくさそうな表情だ。エリーとリアムにも微笑みながらお礼を伝えている。
「ところで、この部屋に侍女はついてる?」
エマはリアムに尋ねるが、首を傾げている。ルイーズが見かねて答えようとするも、倒れて寝込んでいたために思い出せないようだ。
「寝込んでいる間のことは分かりませんが、初日に部屋へ案内してくれた方しか、記憶にありません。その時も、あまり言葉は交わしませんでした。メイドのメアリーさんと制服が違うので、多分侍女だとは思いますが……」
「そう。私たちのところも、そんな感じよ。侍女の態度が余りにもよそよそしいから、レアに確認したの。そうしたら、以前からいた侍女が数名辞めて、新顔が増えていたらしいわ。おかしいわよね」
「エマちゃん、情報は大切だけど、他家のことを嗅ぎ回るのは良くないわ」
「エリー……何言ってるのよ。こんな隣国に接している危険なところに、『ルイーズとリアム君を二人で行かせられない』って言ってたのはエリーでしょう。それに、人聞きが悪いわ。嗅ぎ回ってるのではなく、情報収集よ。こういうことは、遅れをとると命取りなんだから。リアム君も将来はブラン家の当主になるのだから、覚えておいてね」
「…………はい」
エマの勢いに付いて行くのがやっとのリアム。ルイーズはエマの話を聞いて、何かを考えているようだ。
「エマさん、私も気になったことがあるんです。他の侍女より、近くにいることが多かったメアリーさんは、本当にメイドなのでしょうか。話す言葉や所作も、お手本にしたいと思えるくらい綺麗でした」
「…………盲点だったわ……ねえ、私たちの母親って、昔から仲が良いのは知ってるでしょう? 実は、二人とも王妃様と親交があるのよ。女学院時代の先輩・後輩だったらしいわ。
だから、話しが筒抜けなのよね。お母様もレアのことを気にかけていたし……一瞬、隣国のスパイかとも思ったけど……もしかして、王妃様がクレメント家に潜ませたのかもしれないわね」
「エマちゃん、後半の部分は憶測よね。誰が聞いているかわからないから、口にはしない方が良いわ」
「もう、エリーは心配性ね。でもまあ、確かにそうね。気をつけるわ。」
エリーに諭され反省した様子のエマだが、尚も言葉を続けた。
「そうだわ。四人でリリーちゃんの部屋に行ってみない?ルーちゃんもその後が気になるだろうし、紹介もまだよね」
「それはそうだけど、ルイーズと妹さんは、まだ人に会わずにゆっくりした方が良いんじゃないかしら」
「ルーちゃんとリアム君はどう?」
「確かに気になりますし、ご迷惑でなければご一緒させてください」
「僕は姉上が良ければ」
こうして四人は、リリーの部屋へ行くことになったようだ。部屋を出て、廊下をしばらく歩くと、何やら賑やかな声が聞こえてきた。四人は廊下の窓から外を見る。その声は、騎士団の練習場からする声のようだ。
「すごい人ね。たまに見かけたけど、こんなに沢山いたかしら」
エマは、騎士の人数に驚いているようだ。エマの後ろから見ていたエリーが、怖い顔つきになっている。隣で見ていたリアムがそんなエリーに目を見張った。
「エリーさん、どうしたんですか? 何かありましたか?」
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