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第5章 辺境の地へ
9 宝石
しおりを挟む「………隣国」
隣国と聞いて、一瞬だが顔を歪めるリオン。そんな兄の変化を見逃さないレア。
「兄上、何かあるのか?」
「いや、今は関係のない話だ」
「兄上、隠し事はやめてくれ」
「…………」
リオンは、苦い顔をしながらも、レアに問い詰められ沈黙を破った。
「……叔母上から、キャサリンとの縁談を持ちかけられているんだ」
「なんだって⁉」
レアの声が部屋中に響き渡ると、皆の視線が二人に集中した。
「皆、すまない……レア、その話は後だ」
「…………」
黙り込み、テーブルを叩くレアを隣の席で宥めるエマは、普段とは違う荒々しい姿に戸惑っているようだ。
「レア、今は落ち着きましょう。先ずは、リリーちゃんのことを解決しないと」
「……ああ、そうだな……」
レアを心配そうに見つめていたルイーズは、レアが落ち着くと話し始めた。
「手紙には、術の依頼をした者の詳細には触れられてはいませんでした。その代わり、見かけたら気をつけるようにとの一文と共に、宝石についての詳しい記述がありました。術を施した者が残した当時の記録では、二つから三つほどの宝飾品が作れる大きさの原石で、研磨する前の大まかに整えられた状態だったそうです。研磨後は、きっと夕焼けを思い起こさせるような赤色をしているのではないか、と書かれていたそうです。それから……、安全に留意するように、宝石を見つけた場合は、その場で浄化をかけずにこの木箱にしまうようにと、リアムが父から預かっていました」
「ルーちゃんの御祖父様と御父様……、すごいわね。宝石について、どうやって調べたのかしら?」
「曾祖母の生家が、神職を代々継承している家系なのです。祖父は、生家の代表者の役割についている従兄弟を頼りに、情報を集めて調べたそうです」
「東の国……神職、聞いたことがあるわ。こちらでいうところの聖職者のことよね」
「はい、そうです。この木箱も、その従兄弟から譲り受けたものだそうです」
「そう……それだけ扱いには気をつけないといけない、という事よね」
ルイーズは、興味が尽きない様子のエマに頷き返した。
エマがルイーズから木箱を受け取り、皆と見ている間にエリーがルイーズに歩み寄った。
「ルイーズ。朝から大変だったわね、お疲れさま。私も何かできる事があれば手伝うわ」
「エリー、ありがとう。それなら、妹さんのお世話を手伝ってくれるかしら?」
「もちろんよ!」
緊張に包まれていたルイーズの心も、エリーとの会話で気持ちが穏やかになったようだ。
目を合わせて微笑む二人を見ながら、リアムがルイーズを呼ぶ声が聞こえた。
「姉上」
「リアム、どうしたの?」
「妹さんの部屋を確認するお話はされなくてよろしいのですか?」
「……そうだったわ。リアム、ありがとう」
「いえ、良いのです。先ずは、話しを先に進めましょう」
ルイーズは、リアムに頷き返しながら、リオンと視線を合わせた。
「リオンさん、妹さんの部屋の中を確認させていただいても良いですか?」
「もちろんだが……、何かあったら大変だ。自分もついて行こう」
「……よろしくお願いします」
リオンは、自身の後ろに控える側近に何やら伝えると、ルイーズとリアムを伴い、リリーの部屋に向かった。
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