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第5章 辺境の地へ
8 ルイーズの能力
しおりを挟む「手紙には、ブラン家に生まれた者がまれに持つ〈特殊な能力〉について書かれていました。その能力は、ブラン家に代々伝わってきた〈浄化の力〉と、東の国出身の曾祖母からもたらされた〈邪気払いの力〉です。
祖父母、父母の代をまたいで、カルディニア王国に嫁いできた曾祖母の〈邪気払い〉の力が、私に最も引き継がれたのではないか。
その力によって、生来ブラン家にあった〈浄化の力〉が強化された状態で私に発現したのではないかと。
もし私の周りで妙なことが起きた際は、私が持つ能力に起因しているのかもしれない、というのが祖父と父の見解として書き添えられていました。
今朝、妹さんの手に触れたとき、手の平から重い澱みを感じました。その時、私の身体は拒絶反応を起こしたのです。それは明らかに、病気などではなく……体内に沈む澱(おり)が原因だと思います」
「…………」
沈黙する一同。
室内が静まり返る中、リオンがルイーズに尋ねた。
「やはり、リリーの状態が少し落ち着いたのは、ルイーズ嬢のおかげであったのだな。もしかして、それで世話をしたいと?」
「あの時は、自分の力については何も知りませんでした。ただお傍でお世話をさせてほしい。その思いだけでした」
「……ありがとう。その厚意に甘えて、リリーのことお願いしても良いだろうか」
「はい、もちろんです」
そんな会話のやり取りを近くで見ていたレアも安堵したようだ。
「ありがとう。それと、〈リリーの体内に沈む澱〉について教えてほしい。」
「私の考えですが、澱は妹さんの悲しみや否定的な感情が、宝石に反応してできたものかと思います」
「悲しみや否定的な感情……」
リオンとレアは、動揺しているようだ。その時、レアの隣にいるエマが疑問を投げかけた。
「ルーちゃん、良いかしら? 私は、50年前の宝石は〈曰く付き〉だと思っていたの。遠方の国では、年代物の宝石は『持ち主の思念がこもっている』と言われているわ。でも思念だけで、あんなにも大問題が起きるものなのか疑問だったの。ルーちゃんの浄化の力はその思念に反応したのかしら?」
「ある意味、思念ともいえますが……これは呪術だと思います。
でも、私は妹さんに触れた時点で、まだそこまでのことは判りませんでした。
手紙を読んで、あの澱は呪術の影響だと気づいたのです」
「そうなのね。御祖父様と御父様はご存じだったのね」
「祖父はあの問題が起きてから、ずっと宝石について調べていたそうです。その宝石を調べる流れで、この地を訪れた際に私が記憶をなくすという事件が起きました。そこで、祖父はそのことを調べるために、曾祖母の出身国である東の国へ行きました。その時に、呪術を使って宝石に呪いをかけた者がいたことを知ったそうです。
その術を依頼したのは、隣国の者で間違いないだろうと手紙には書いてありました」
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